沖縄戦の知られざる側面…映画『沖縄スパイ戦史』

映画『沖縄スパイ戦史』チラシ

映画『沖縄スパイ戦史』チラシ(公式サイトより)
http://www.spy-senshi.com/

第二次世界大戦末期、米軍が上陸し、民間人を含む20万人余りが死亡した沖縄戦。第32軍・牛島満司令官が降伏する1945年6月23日までが「表の戦争」なら、北部ではゲリラ戦やスパイ戦など「裏の戦争」が続いた。作戦に動員され、故郷の山に籠って米兵たちを翻弄したのは、まだ10代半ばの少年たち。彼らを「護郷隊」として組織し、「秘密戦」のスキルを仕込んだのが日本軍の特務機関、あの「陸軍中野学校」出身のエリート青年将校たちだった。

1944年の晩夏、42名の「陸軍中野学校」出身者が沖縄に渡った。ある者は偽名を使い、学校の教員として離島に配置された。身分を隠し、沖縄の各地に潜伏していた彼らの真の狙いとは。そして彼らがもたらした惨劇とは……。(映画『沖縄スパイ戦史』公式サイトより http://www.spy-senshi.com/about/

1945年の沖縄戦の知られざる側面を描いたドキュメンタリー映画「沖縄スパイ戦史」が、7月21日(土)より沖縄・桜坂劇場 、7月28日(土)より東京・ポレポレ東中野で公開。ほか全国順次ロードショーで上映される。

監督は、沖縄の反基地運動を追った映画を撮り続ける三上智恵さんと、監督デビューとなる大矢英代(はなよ)さん。

三上智恵さんは沖縄に関心を持ちながら成城大学で民俗学を学び、毎日放送にアナウンサーとして入社し、仕事としても沖縄に関わったという。大矢さんは大学院時代に1年間、波照間島に住み込んで戦争マラリアについて取材した経験を持つ。

■沖縄戦、スパイ活動と強制移住

沖縄では少年兵が戦争に参加していた。それには大田・元沖縄知事が参加していた「鉄血勤皇隊」などがあり、陸軍中野学校出身の将校たちが組織した「護郷隊」があった。「鉄血勤皇隊」は補給など後方支援などが主だが、「護郷隊」は前線でのスパイ活動や狙撃など、ゲリラ活動をおこなった。

いっぽう地上戦のなかった島でも日本軍に殺されたも同然の話がある。ある日突然波照間島に男がやってきた。山下太郎(偽名)というその男は、今でも島の住民から「殺せばよかった」と憎まれている。

その男は先生として赴任してきた。波照間島は米軍が上陸してこない島として平和だった。その男は突然軍服に着替えて軍刀を抜き、この島にいてはいけないと、住民に移住を迫った。

住民たちは陸軍の命令として、向かいの西表島・南風見田(はえみだ)に移住を強制させられた。なぜなのか、日本軍としては食料を確保したかったのと、米軍が来ると情報が筒抜けになる危険があり、秘密を守るために移住をさせたのだという。その結果はマラリアに感染してしまい(当然、軍としては把握していた)1500人の住民のうち500人しか残らなかった。

沖縄では軍として住民を監視し、また役人や住民同士もスパイとして育て、相互に監視させた。その風潮は変わっていない。今も辺野古や基地に反対するものを「敵のスパイ」などと罵声を浴びせている。

過去の日本軍が住民たちを守らない・守れないのは、軍隊が国体を守るためのもので、最初から明白だった。今現在は日本軍から自衛隊に変わった、果たして自衛隊は国民・住民を守ってくれるのか? そういった体質とは、きっぱりと縁を切ったのかどうか、検証されなくては…。軍隊の本質を嫌というほど知ったのは沖縄の住民だった。

国の防衛ということを考える人、軍によって守ってもらいたいという人が今は一番多いのかもしれないが、映画を見て、沖縄で何があったかを知って考えてもらいたい、と監督は語る。(文責・編集部)

■参考

毎日新聞記事

毎日新聞記事(毎日新聞2018年7月25日 東京夕刊)https://mainichi.jp/articles/20180725/dde/007/040/035000c

【音声配信】「沖縄戦の知られざる側面とは?」(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)
https://www.tbsradio.jp/276917