商業街に重慶爆撃を伝える施設があった

施設に戴冠された悲劇を表現するレリーフ

施設に戴冠された悲劇を表現するレリーフ

日本軍は中華民国の首都・南京を攻略した。しかし中華民国政府は拠点を武漢へ、さらに重慶へと移した。重慶は中国の内陸にある地域で、かんたんに追いかけてはいけない、そのため日本軍は空爆によって、中国人の抗日意識を萎えさせ、厭戦気分を煽るため「戦略爆撃」を続けた。これが「重慶大爆撃」で、11938年から1943年にかけトータルで218回行われ、死傷者は6万人を超えると言われる。

結局のところ日本軍は中国を征服できなかった。占領したのは中国の点や線でしかなかった。重慶は占領されなかったが、爆撃で被災し市民は焼夷弾などで焼け出された。日本よりも長い期間、空爆におびえていた。その都市が重慶だ。2016年に重慶を訪れる機会があり、世界遺産の「大足石刻」などにも行ったのだが、ここでは重慶市で気になったところを紹介する。

長江と嘉陵江の2つの河に挟まれた山城。それが重慶だ。そして坂の町でもある。写真や映像などで紹介されていたのは、どんよりした空と高いビル群だ。実際に行ってみて高いビルがそびえ立っているのは違和感を感じなかった。もとより街が急勾配なためにむしろ自然の山が屹立しているかのように見えるからだ。どんよりした空はまったくそのとおりでスッキリと晴れる日は少なそうだ。

空港から中心街へ向かうのは地下鉄(正確にはモノレール)が便利だ。空港から直結はしていないが、すこし歩けば駅につく。モノレールなので基本は橋立の上を走り、市内でも空中を走るので街中を見物するにはもってこいだ。中にはビルの真ん中に駅がつくられているのもあり、乗っていて飽きない。

重慶市のシンボルとも言われている人民大礼堂は人民広場にあり、それを挟んだ向かいに重慶三峡博物館がある。長江の自然や歴史や近代では日本の侵略の記録・展示がある。メインは自然史、科学史、この地域の長江と山峡に関わるものだが、日本軍の弾薬や重慶大爆撃の惨劇を再現したような展示もある。

入り口脇に記念品や美術書などのショップとカフェが併設された休憩室がある。コーヒーを飲みくつろいだのだが。鉢植えなどをうまく取り入れて植物園にいるような雰囲気がおもしろかった。

重慶山峡博物館

重慶山峡博物館


爆撃の状況を伝える写真展示

爆撃の状況を伝える写真展示


空爆を描いた木版画が展示されていた

空爆を描いた木版画が展示されていた

重慶山峡博物館


6月5日の防空洞での窒息事故を再現した博物館の迫力あるコーナー(上・下とも)

2つの河が一つにつながる、ちょうどサイの角のようにも見える。その先端近くの丘の部分が重慶の中心だ(渝中区)。岸壁には「洪崖洞」(ホンヤドン)という商業施設があり、観光客で賑わっている。近くには解放碑があり、周囲はブランド・ショップなどが立ち並ぶ繁華街だが、その、きらびやかな商業街に重慶爆撃を追悼する「重慶大爆撃惨劇遺址」(遺跡)がある。

おしゃれなショップなどに囲まれた、商業街の一角に施設はある

おしゃれなショップなどのビルに囲まれた、商業街の一角に施設はある


建物は上部に男女、母、子供がもがき、倒れ込む姿のレリーフが戴冠されており、外壁は岩でつくられ荘厳な施設がその遺址だ。さほど大きなものではなく、中はギャラリーとなっていて、爆撃当時の写真が飾られている。

ここでは6月5日の惨劇(防空洞に避難していた市民が多数窒息して死亡した事件)を追悼して式が行われている。また、重慶市では毎年この「重慶大爆撃追悼記念日」に全市で防空警報を鳴らしている。

なお、解放碑の挟んだ向かい側には「重慶歴史名人館」という資料館には唯一の日本人として緑川英子(長谷川テル)が展示されてと聞くが、行けなかった。どなたか確認していただきたい。

大爆撃遺址の前て札

大爆撃遺址の背後の建物にもレリーフが掘られている

施設内は思ったよりも狭いスペースで、写真が展示されている

施設内は思ったよりも狭いスペースで、写真が展示されている

「大爆撃遺址」の前には「重慶大爆撃」を説明する立札

「大爆撃遺址」の前には「重慶大爆撃」を説明する立札

その近くに「十八梯」がある。地下鉄「較場口」駅を下車、周囲がロータリになって崖の広場の端にあるちいさな階段を下っていくと、そこが十八梯というストリートだ。

崖から見ると、そこだけ緑がのこり、不思議な空間だ

崖の下には廃墟が広がっている 崖から見ると、そこだけ緑がのこり、不思議な空間だ

十八梯の上にある広場の直下にも写真を展示するスペースがあり、爆撃の惨禍をつたえている


廃墟を修理しているが住人は?

廃墟を修理しているが住人は?


都会にこういう場所があるとなんとなくホッとする

都会にこういう場所があるとなんとなくホッとする


十八梯はいわゆる観光地ではない。一般的な観光ガイドには掲載されていないと思う。それはいわゆる取り残された地域というか、廃墟とバラック的な建物が続いている不思議な一角だ。重慶の昔の雰囲気が残っている、というふれこみで、取り壊し寸前のような場所。ところが中国の旅行ネットでは上位にランクされていて一部で人気なのである。

場所は解放碑のある繁華街近くでその落差に驚くが、上から見ると単なる廃墟にしか見えない。どうやら数年前から再開発の予定はあるようだが、建て直している建物もあり、住人がいるかどうか不明だ。崖の下に廃屋らしきところには鶏が放し飼いされている。

周囲の雰囲気とは隔絶されていて、寂れたどスラムの街角である。果たして再開発がおこなわれるのか? 庶民が住んでいた地域を再現するのは無理だろうが、つまらないショピング街だけにはしてほしくない。

階段を下っていくと街路にはタバコを売っている露店があったり。おばあさんが果物を売っていたりしていた。万人におすすめできる場所ではないし、楽しめるかどうか微妙だが、都市のもうひとつの顔がある場所だし、いずれ取り壊されるかもしれないので、ぜひ訪れてほしい場所ではある。
(本田一美)

そのものズバリ「貧民窟」という名前の写真サイトもあり、住人たちを写したちょっと不思議な佇まいの肖像写真が掲載されているが、ここの雰囲気をよく伝えていると思う。

https://img3.doubanio.com/view/photo/l/public/p1310885135.jpg
(「貧民窟」HPより)
https://www.douban.com/photos/album/60632784/

十八梯がある

地下鉄「較場口」駅から繁華街にある、解放碑の方へ向かうと爆撃遺跡があり、崖のある方へ向かって下ると、十八梯がある

河を挟んで行き来する有名なロープウェイ。老朽化しているので少し怖い

河を挟んで行き来する有名なロープウェイ。老朽化しているので少し怖い