平和のため南京の追悼を国家の式典に―南京大虐殺79カ年 東京証言集会

南京紀念館の公式HPより

「南京紀念館」の公式HPより

12月15日(木)韓国YMCA9階にて「南京大虐殺79カ年 東京証言集会」が開かれた。今年はビデオ取材による上映となった。南京での安全区の敗残兵狩りの実相を語るものであり、南京の街中を当時の場所を探して歩くところを交えて御二人(侯占清さん、石秀英さん)の証言を放映した。その後は昨年まで南京大虐殺紀念館館長であった朱成山さんから、これまでの歩みと「祈念館」のとりくみについて、パワーポイントを投映しつつていねいな説明をされた。参加者は150名で主催はノーモア南京の会を中心とした実行委員会。


「南京大虐殺紀念館館長として務めた23年間をふり返って」 朱成山さんの話

昨年に定年退職しました。2009年に来日したときは自民党・公明党と対話をしましたその時は麻生首相だったと記憶しています。たくさんの団体と交流し、右翼とも対話をしました。

私の子どもの頃に昔の話を聞いてました。祖父は南京の繁華街、銀座のようなところですか…。銀行に勤めていましたが、揚子江には人間の死体があったとか、虐殺を感じさたり、そのような痕跡があったと。その後は若い頃ですが軍隊に入ったことがあり、その時の友人に徐さんという人がいました。作家として知られていますが、南京のあちこちを取材して本を書きました。これは「南京大虐殺」の本としてはかなり早いものです。

台湾にお坊さんで星雲大師という宗教家がいます。彼は揚州から南京へ出稼ぎに出て南京で日本軍にお父さんを殺されたのです。1949年に蒋介石と一緒に台湾へ渡りましたが、南京のことは気にかけています。

前南京大虐殺紀念館館長の朱成山さん

前南京大虐殺紀念館館長の朱成山さん

現在、「紀念館」では民衆虐殺の展示をしています。今はあちこちで展示会なども開いていますが、以前はそういったことに抵抗がありました。民族的・文化的な壁とでも言いましょうか。要するに被害を受けたことを「恥」であり、不名誉なことは忘れたい。他に知られたくないという気持ちがあるのです。ところが日本の8月6日の原爆の日の追悼行事に参加してみて驚きました。毎年、国民と政府首脳が参加しているという歴史を知りました。もちろんこのような行事・セレモニーは日本だけでなく欧米でもやっているということを知りました。帰国してから周りにはたらきかけて94年に初めて南京虐殺の式典ができました。その時は600名しか集まりませんでした。目的は平和のためです。恨みを捨てるために行いました。2000年から2013年の間に地方の催しを全国的なものにしようという動きがあり、2014年「全人代」で毎年の国家行事として追悼式典を行うようになりました。

1997年に専門家の審査によって生存する被害者は1200名と認定されました。中国以外の外国にも生存者を確認しました。証言してくれる生存者については感謝と同時に申し訳ないという気持ちがあります。これまでに60名くらいの生存者の方が日本に証言しに来ています。これからは年齢を考えると証言者として来日させることは難しいでしょう。そこでビデオで証言をさせること、二代目の方を来日させることを提案したいと思います。

「紀念館」にある足跡ロードはハリウッドにある足跡からひらめきました。これはカンパによって制作されました。「紀念館」は16万点(そのうち貴重なものは3万5千点です)の資料を収集しました。これらが事実を証明してくれるのです。アメリカのマギー牧師、彼は16ミリフィルムで当時の状況を撮影し記録しました。彼の息子さんを訪ねました。南京の女子大学の教授だったヴォートリンさんの関係者、そしてジョン・ラーベの日記のコピーを作成しました。それに関連した写真が127枚あったのは収穫でした。

1998年から2000年にかけて発掘した犠牲者の骨を展示しました。しかし後でそれは間違いかもしれないと思いました。それは別なところにあったものを持ってきたので手が加えられていると判断されてしまう、ということです。それからはできるだけ発掘されたその場所にそのままの状態で保存しようとしています。それで手付かずの地域を考古学と死体研究のチームで発掘しました。そのなかに8ヶ月から3歳の子どもの死体が32体ありました。

「南京大虐殺」はユネスコ世界記憶遺産に申請し登録されました。これは最初はフィリピンの文化大臣が勧めてくれたのです。大事なのは真実です。ともに平和を創るために力を合わせましょう。

(以上当日発言)



なお、ビデオ証言の侯占清さん、石秀英さんと前館長・朱成山さんの話が資料として当日のプログラムに採録・掲載されているが、かなり詳細で充実している。講演内容と重なるがより理解が深められるものとなっているので、機会があればご一読いただきたい。
(本田一美)
今回の証言はビデオでの上映

今回の証言はビデオでの上映