日本国憲法から見た天皇制度とその改変―天皇による『生前退位』の違憲性

以前、天皇の「お言葉」から生前退位の実現へと進んだことは天皇元首化への道であることを説いたが、5月1日の天皇の交代に関してあらためて憲法違反であることを再説したい。

天皇の「生前退位の声明」は憲法違反である


日本国憲法から見た天皇制度とその改変―天皇による『生前退位』の違憲性

「代替わり」とは、天皇が代われば国のすべてのものが変わるという天皇主権(統治権者天皇)の発想であり、国民主権のもとでは、天皇が代わってもすべてのものが変わるわけではないので、交代が正当である。民主的な人や団体が「代替わり」を使っているのは残念。現在の天皇は憲法に記された機関のひとつである。それ故、国民には、日本国憲法から見て、天皇の行為に憲法違反がないかを判定する課題がある。

歴代の内閣は、天皇の「公的行為」を「国事に関する行為」と「象徴としての公的行為」の2つであるとの見解をとっているが、憲法は「国事に関する行為のみ」(第六条と第七条に定める12の行為)を「公的行為」としているので(第四条第一項)、これまで公的行為とされてきたもののうちのほとんどが憲法違反となる。

天皇自身も「象徴としての公的行為」を「大切な公的行為」と語っているが、これも憲法違反である。

憲法上では、天皇の行為は、「国事に関する行為:公的行為」と「私的行為:旅行や神道儀式など」しかない。

日本国憲法は、天皇の「公的行為」を「国事に関する行為のみ」に限定し、天皇の代理をする「摂政」(第五条)を置くことにより、「生前退位」を否定している(皇室典範第四条)。

天皇は、「国政に関する権能」を有していないので(第四条第一項)、天皇が「国事に関する行為」を改めることに関する声明、憲法や法律や条約等を改めることに関する声明、天皇の地位を改めることに関する声明などを発することは、許されない。政治的権能を有しない天皇の政治的行為となるからである。

従って、天皇の地位の変更を求める天皇の「生前退位に関する声明」(2016年8月8日発表)は憲法違反となる行為である。

天皇が「生前退位に関する声明」の公表を行ったのは、国民を味方につけて、「生前退位」を認めない勢力を牽制し、「生前退位」を認めない日本国憲法・皇室典範破り(憲法クーデター)を遂行するためである。「国事に関する行為」ができないのであれば憲法・皇室典範(第十六条)の定める「摂政」を置いて代行すれば、「生前退位」をしなくていいが、天皇はそれを拒否した。

宮内庁と安倍内閣が、「生前退位についての声明」の公表を許容したのは、天皇の政治的行為を解禁して、天皇を政治的行為を行う「元首」(対外的には、国家の代表、対内的には行政権の実質的・名目的な長)として活動させる端緒を開くためである。

明仁天皇の願いは、「生前退位」という政治的行為を行うことを〝てこ〟にして、日本の君主として、「国事に関する行為」と「象徴としての公的行為」の両方を行う「元首」としての天皇を復活させ、さらに、父の裕仁天皇(死後、昭和天皇)が「第二次世界大戦」(1937年7月7日開始の「日中戦争」及び1941年12月8日開始の「太平洋戦争」)で遂行した侵略戦争の責任を負う戦犯(戦争犯罪者)天皇の汚名をそそぐことである。

歴史の修正を勧める政府のもとで、明仁上皇が今後も活動してゆく可能性を危惧する。

(2019年5月3日 修正)

天皇退位の「儀式」を伝える新聞

天皇退位の「儀式」を伝える新聞(日本経済新聞 WEB版より 2019/4/30 )

1.「国事行為に関する行為」の12項は、次の通りです。
(1)国会の指名に基づいて,内閣総理大臣を任命すること。(憲法第六条一項)
(2)内閣の指名に基づいて,最高裁判所の長たる裁判官を任命すること。(憲法第六条二項)
(3)憲法改正,法律,政令及び条約を公布すること。(憲法第七条第一号)
(4)国会を召集すること。(憲法第七条第二号)
(5)衆議院を解散すること。(憲法第七条第三号)
(6)国会議員の総選挙の施行を公示すること。(憲法第七条第四号)
(7)国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。(憲法第七条第五号)
(8)大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権を認証すること。(憲法第七条第六号)
(9)栄典を授与すること。(憲法第七条第七号)
(10)批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。(憲法第七条第八号)
(11)外国の大使及び公使を接受すること。(憲法第七条第九号)
(12)儀式を行うこと。(憲法第七条第十号)

2.「象徴としての公的行為」とされているものの例は、次の通りです。
外国要人との会見、外国公式訪問、国会開会式への出席とその時の言葉、全国植樹祭・国民体育大会・全国豊かな海つくり大会への出席、全国戦没者追悼式への出席、新年一般参賀への出席、被災地見舞い、福祉施設慰問、講書始、歌会始など。

■参考

http://sengonet.jp/archives/1575
http://sengonet.jp/archives/1575