重慶爆撃を描いた映画『エア・ストライク』

『エア・ストライク』ポスター


『エア・ストライク』ポスター (映画.comより)
https://eiga.com/news/20190222/17/

2015年にクランクインが伝えられた中国映画「大爆撃」は、重慶爆撃を取り上げた映画として、そしてハリウッド・スターが出演し、予算も巨額なものとして大きな話題を呼んでいた。それは2018年に完成し、その年10月に公開が予定されていた。ところが映画のヒロインで、出演していた女優のファン・ビンビンさんが巨額の脱税で摘発され、その余波で公開が中止となっていた。

中止の経緯はやや不可解ではあるが、実はその映画が2019年3月に日本で公開されていた。それが『エア・ストライク』(原題:大爆撃)だ。

公開といっても日本では『エア・ストライク』は、3月2日から、シネマート新宿、シネマート心斎橋で1週間のレイトショーの限定公開で、どうやら中国では公開は未定だ。

劇場公開は短かったが、現在はアマゾンプライムなどのネット配信やDVDは発売されているのでいつでも視聴は可能だ。

内容は、日中戦争を背景に、街を守ろうと奮闘する中国の航空兵たちと、彼らを率いた米軍大佐の戦いを描いた。日中戦争下の1941年、中国軍は日本軍の猛攻撃によって劣勢に立たされ、最後の砦である重慶も度重なる爆撃で壊滅の危機にあった。そんな中、アメリカ軍のジャック・ジョンソン大佐が、日本軍と戦う中国人の空戦部隊を指揮することになる。

米軍大佐を演じたブルース・ウィリスのほか、オスカー俳優エイドリアン・ブロディが医師役で出演。中国の航空兵には、韓国のソン・スンホン、香港のニコラス・ツェーとアジアの人気俳優が顔をそろえる。

元になった話は日中戦争時に米国が中国国民党軍を支援したフライング・タイガース(アメリカ合衆国義勇軍の愛称)という
100名位の飛行部隊のことで、基本は米軍の志願者たちであった。期間は1941年から約1年間と短い間だった。映画では軍事顧問の大佐役にブルース・ウィリスが演じている。部隊内には中国人の飛行兵となっている。その意味ではフィクションなのだが、重慶爆撃について正面から描いているのが貴重だ。

映画の見せ場としては日本と義勇軍の空中戦なのだが、コンピュータで作成した画面が、つくりものっぽいのでリアリティが感じられないのが残念であった。もっとも今のゲーム感覚で考えればそれなりの迫力はある。

それよりも見ておくべきなのが、重慶爆撃のシーンである。日本軍の戦闘機や爆撃機が飛んでくるところを下から見上げているカットなど迫力がある。重慶の磁器口らしき河口そばの階段のある古い町並みが爆撃されるシーンなどもリアルに再現されている。

さらに重慶爆撃の悲劇として、市内の防空壕の中に避難していた大勢の中国人が死亡した有名な事件があるが、そのシーンもきちんと描かれている。

表向きは空中での戦闘機のシーンが売り物のようで、娯楽映画として割り切って見るのもいいのだが、重慶に住む子どもたちや、茶館の人々など、市井の人間の描写もあり、そこに着目したい。なりより重慶爆撃が描かれた映画ということで貴重だ。いわゆる抗日映画で重慶爆撃のものはどの程度あるのか分からないが、今後はもうすこし正面から取り上げた映画も見てみたい。

(本田一美)

重慶に飛来する日本の爆撃機(映画『エア・ストライク』より)


日本の爆撃機 (映画『エア・ストライク』より)


フライング・タイガースと日本の戦闘機との戦闘シーン(映画『エア・ストライク』より)