非戦をつらぬく意志の美術展-「ノー・ウォー横浜展かわさき」

建物の吹き抜け中空に「ノー・ウォー横浜展」のバナーが飾られている

建物の吹き抜け中空に「ノー・ウォー横浜展かわさき」のバナーが飾られている

夏になると平和についての催しやイベントが増えてくる。それは敗戦にまつわる季節の風物詩としてみられる場合もあるだろうが、戦争について考える機会でもある。終戦記念日に為政者の談話や「二度と繰り返してはならない」と聞かされても、その内容や中身についてどれだけのものがあるのか、そう問いかけるのも虚しい。そういう時は何か表現されたものをみたり、読んだりして考えるのがいいと思う。8月1日(火)~6日(日)に川崎で「ノー・ウォー横浜展」が開かれた。

「ノー・ウォー展」は2003年のイラク戦争に反対する美術家(ノー・ウォー美術家の集い横浜)のアピールから始まり、そのネットワークから美術展を開催し、横浜で毎年開催していて、今年は会場の都合ではじめて川崎市で開催したという。

川崎の会場は「アートガーデンかわさき」という川崎駅に隣接した施設で、最近つくられた建物と思しき「川崎タワー・リバーク」という小奇麗な複合施設のなかにある。私的な感想で恐縮だが、青年の頃に鶴見の工場で働いていて、通勤で川崎に通っていたが、その時はパチンコ屋の街という印象しかないのだが、近年の川崎周辺の洗練化には驚かされる。製造業の海外移転による空洞化もあり、再開発として首都圏のハブ的立地の川崎が見直されているのだろう。

床に置かれた作品のある会場風景

床に置かれた作品のある会場風景

展示作品についてはまさに各国の政治家をパロディ化した直截的な表現の彫刻やインスタレーションの作品があったかと思うと詩の展示や写真の作品があり、抽象的表現の絵画もあり、戦争反対を主題にしていない作品もある。様々な表現活動の展示なのだと思う。というよりも、いわゆる普通の美術展だが社会的なテーマの作品が多いな、という印象かもしれない。後に確認すると作品主題については「戦争反対」は出展の条件にはなっていないらしい。ようは趣旨に賛同すれば誰でも参加できるのである。貴方もどうですか……。

会場の一角では「ゲルニカシアター」という映像視聴スペースもあり、「韓国のヒロシマ」「日本軍最後の兵器」などの自主ビデオも上映されていた。

会場の一画でビデオ上映がなされていた

会場の一画でビデオ上映がなされていた


事務局の加藤義郎さんに話を聞いた。
「2003年はイラク戦争に対してアメリカでデモがあり、世界的に大きな戦争反対のうねりがあり、日本でもイラク派兵反対と憲法を守ろうと、戦争反対の訴えをした。基本的に年1回に美術展を開いている。予算は基本として出展料だけでやっていて、ほかにカンパもあり、趣旨に賛同してもらえれば誰でも出展できる。出展料も他の美術展に比べても低額だと思う。

 いつもは横浜駅ちかく会場で開催していて今年ははじめて川崎で開催したが、全体で80名ちかくが出展している。8月1日(火)から6日間開催して、これまで約1000名が来場してくれた」

美術家や造形作家たちのネットワークで開催してきているが、誰でも参加・出展できる。「ノー・ウォー」というフレーズはイラク戦争のときにはじめて出てきたような気がする(「非戦」という言葉も…)。その意志を継続して開催しているのが貴重であり素晴らしいと思う。
(本田一美)

中国・重慶爆撃裁判の原告たちの写真

中国・重慶爆撃裁判の原告たちの写真


沖縄の基地の現状を説明するパネル展示もあった

沖縄の基地の現状を説明するパネル展示もあった


東京オリンピックをテーマにした絵画作品もあった

東京オリンピックをテーマにした絵画作品もあった


会場での様々な展示

会場での様々な展示


各国首脳をパロディ化したインスタレーション。力作

各国首脳をパロディ化したインスタレーション。力作


「ノー・ウォー横浜展かわさき」案内ハガキ

「ノー・ウォー横浜展かわさき」案内ハガキ

「東京新聞」でも紹介された(神奈川版・webより)

「東京新聞」でも紹介された(神奈川版・webより)


東京新聞↓
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201708/CK2017080302000131.html

ノー・ウォー美術家の集い横浜
http://www1.cts.ne.jp/~no-war-tsudoi/index.htm