朝鮮民主主義人民共和国の核実験をどうみるか

ノーベル平和賞受賞が決まった国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のHPより

ノーベル平和賞受賞が決まった国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のHPより

朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)は、2017年9月3日に地元プンゲリの核実験場で「大陸間弾道ロケット装着用水爆の実験に断行」したと発表しました。これを受けて、アメリカ・トランプ政権が「軍事的選択肢」という言葉で、軍事力行使を示唆したため、これまでになく、北朝鮮と米国との間の緊張が高まっています。この事態を考えてみたいと思います。

第二次世界大戦後の国際社会では、圧倒的な経済力と軍事力を持つアメリカの意志が優先されてきました。そのアメリカは、北朝鮮を正式な国と認めておらず、「朝鮮戦争」(1950年6月25日-1953年7月27日・休戦協定調印)のときから、北朝鮮を核攻撃すると脅してきました。日本も、アメリカに配慮して、北朝鮮との間で国交樹立を行わず、北朝鮮に対して対等な国の取り扱いをしてきませんでした。

北朝鮮の強硬姿勢の理由は、アメリカの軍事攻撃から金王朝とその政権を防衛するためには、アメリカ本土を攻撃できる軍事力を持つ必要がある。そのためには、核兵器が必要であると考えて、核開発を続けているというところにあります。その背景には、イラクのフセイン政権やリビアのカダフィ政権がアメリカに滅ぼされたのは、それらの政権が核兵器を持っていなかったからであるとの北朝鮮の認識があります。アメリカと大韓民国(韓国)との大規模な軍事演習も、アメリカが北朝鮮を滅ぼそうとしていることの現れであると北朝鮮は見ています。

北朝鮮の政権は、自国が他国を攻撃したら、自国がこの世から抹殺されるということを認識していますから、北朝鮮は、アメリカ・日本・韓国が攻撃を仕掛けなければ、脅威ではありません。アメリカが北朝鮮に話し合いに応じるよう、北朝鮮は核開発を続けていると見るべきです。

日本の安全が口癖の安倍内閣総理大臣は、北朝鮮の脅威をあおりながら、北朝鮮には、行こうとしません。北朝鮮が脅威でないと知っているからです。或いは、自分では脅威と思っているが、怖いところには行く気はないからです。しかし、アメリカに追随して、北朝鮮に敵対的な態度を取っております。

日本のマス・メディアも、北朝鮮が核開発を続けている理由を報道せず、北朝鮮に問題があるという観点から出発して、北朝鮮に核の放棄を迫っております。

北朝鮮の核問題の真の解決のためには、(1)アメリカが北朝鮮を国として承認し、国交樹立を行うこと、(2)アメリカが北朝鮮を先制攻撃しないと宣言して、北朝鮮の存在を保証すること、(3)「朝鮮戦争」の休戦協定を「終戦協定」に改めて、「朝鮮戦争」を終了させること、(4)米韓軍事演習を凍結すること、(5)「日米安全保障条約」によってアメリカと同じ立場に立つ日本が、北朝鮮との国交樹立を行って、北朝鮮を対等な国として位置付けること、が前提条件となります。この前提条件が実現して、初めて、「話し合い」による解決の道が拓かれます。この前提条件を放置したままで、北朝鮮に譲歩を求めても、空振りに終わるだけです。

北朝鮮の核開発問題の解決に関わって、避けることのできないもう一つの大きな課題があります。それは、北朝鮮以外の国の今後の核開発・核実験の禁止の課題です。北朝鮮以外の核保有国の核を容認して、北朝鮮の核のみ否定するのは、また、北朝鮮以外の国の核開発・核実験を容認して、北朝鮮の核開発・核実験のみ否定するのは、北朝鮮を苛立たせるだけであり、有効性は、皆無です。

北朝鮮に核の廃棄と核開発・核実験を求めるならば、北朝鮮以外の核保有国が、自国の核の廃棄を宣言しなければなりません。北朝鮮以外のすべての国が、今後、核開発・核実験をしないことを宣言しなければなりません。

人類は、北朝鮮の核開発問題を好機として、核廃絶に向かうべきです。その第一歩として、世界中のすべての国が、「核兵器禁止条約」を発効させるために署名すべきです。

唯一の戦争被爆国の日本は、「核兵器禁止条約」に署名するだけでなく、「非核三原則」(作らず・持たず・持ち込ませず)の実行の徹底化を踏まえて、アメリカの「核の傘」から脱却し、日本国憲法第9条(非武装・非戦・対話平和主義の立場)に基づく平和主義外交政策によって、東アジアの平和のために、「東アジア非核兵器地帯」の実現に尽力すべきですし、また、世界平和のために、あらゆる紛争を平和的(対話的)手段で解決する世界への体質改善に邁進すべきです。
(M)

世界各国の核実験回数1945年から2014年(ウィキペディアより)

世界各国の核実験回数1945年から2014年(ウィキペディアより)

参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/核実験
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B8%E5%AE%9F%E9%A8%93