米軍基地に反対する元米兵たち

2017年12月、退役した米軍人や支援者らでつくるベテランズ・フォー・ピース（以下、ＶＦＰ）のメンバーらが沖縄で基地への抗議行動や集会に参加した。彼らのなかに元米海兵隊員マイク・ヘインズさん（４１）がいた。11月に来日し、各地で北朝鮮情勢の平和的解決や憲法９条を護ることの大切さ、沖縄の基地負担軽減を訴えてきた。

元米海兵隊員「戦争で平和はつくれない」　イラクでの経験踏まえ【神奈川】
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201711/CK2017112802000137.html

マイク・ヘインズさんは一昨年（2016年）も沖縄の基地反対の行動に参加して警察に排除されている。マイクさんとＶＦＰのことを取材したドキュメンタリー番組が放送されたのでそれを紹介したい。

テレメンタリ―２０１６「テロリストは僕だった～基地建設反対に立ち上がる元米兵～」（2016年　制作：琉球朝日放送　テレビ朝日系列で放送）がそれだ。今でもネット上に動画が点在しているので検索すれば視聴できるだろう。

マイクさんは米国・サンディエゴに住んでいる。有数の観光地であると同時に米軍基地があり、空母ミッドウェーが博物館となっている。高校を卒業し米軍に志願し、イラクの戦場にも参加した。イラクでは狙撃兵として活躍し数々の勲章も授与された。

ここから米軍と兵隊、そして退役軍人の実態を取材してゆく。米軍は常に兵士を募集しており、ニューヨークの繁華街であるタイムズスクエアの目立つ場所に米軍採用所があり、面接や相談を受け付けている。また、米軍採用のため地域の学校へ定期的に関係者が訪れている。街の街路には地域出身の兵士たちの肖像が飾られている。

しかし兵士は軍隊に入ったら、殺人を可能にするものとして改造される。命令ひとつで殺人できるマシーンとなるのだ。いっぽう米軍に志願する人たちは愛国心からというようりも、経済格差や貧困状況から脱却するため入隊しようとしている。

軍隊加入により社会的な福利・厚生を期待しているのだ。入隊を呼びかけるパンフレットにもそのような文言が踊る。しかし現実には保障が受けられないことがある。ある調査では、米軍退役後の約4割にホームレス経験があるという。

カメラはバークレーでのＶＦＰ（平和を求める元軍人の会）の大会の様子を映し出す。2016年の大会では沖縄の新基地建設の問題が大きなテーマとなった。マイクさんは沖縄の現地報告を行い。この会の代表者であるバーリーさんは「沖縄だけでなく世界中から米軍基地をなくしたい」と語る。大会では沖縄の高江ヘリパッド建設・辺野古新基地建設への反対決議を採択した。

マイクさんはイラクの戦場での体験を語る。そこでは危険だという通報により、ある民家に入り、そこにいたおばあさんを掴んで叩きつけたり、子どもが泣き叫んだ声が記憶が残っているという。さらに帰国してからは車を運転していても　道端に爆弾が仕掛けれていないか気になって、落ち着かなかったという。

あらためて軍隊が人間性を消滅させ戦争の装置として造りあげることの恐ろしさを感じた。またそれに付随するのだろう。米軍内部では年間2万人以上がレイプ被害に合っているという。基地周囲の被害や民間人の数字はそれ以上だろうと、性被害救済のNGO代表は語る。

ＶＦＰはベトナム戦争の体験者が主で、彼のような9．11以降の「テロとの戦い」の戦争経験者はまだ少ないそうだ。それは、まだ彼らがヒーローとして見做されているからで、時間がかかるということだ。

彼が軍隊をやめたり、ＶＦＰに入って活動を始めた契機は明確ではないし、「まだ語ることができないことがある」と明かしている。しかし、そのイラクでの体験が「テロリスト」が自分だった、と感じたのだろう。人を殺すことを厭わない機械のようだった兵士が反省し、平和のために動いている、人は変われるのだ…、そこに希望と可能性を見ることができる。
（本田一美）

軍海兵隊員「トランプ言いなりダメ」来日講演、戦争を知らない政治家による改憲を懸念
https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20171125-00078544/

元米兵「ずっと謝りたかった」　沖縄訪問、奪われた土地の歴史知る（沖縄タイム-2017/12/24）
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/187273

べテランズ・フォー・ピース・ジャパン、不戦兵士・市民の会
https://www.facebook.com/VFP2016/