中野晃一さん講演 9条の成立は人類が権力者に対して押し付けた

講演する中野晃一さん
5月31日に北千住の千住介護福祉専門学校5階講堂にて、中野晃一さんトークライブ<極右高市政権の憲法九条破壊と「戦争国家づくり」に市民運動はどう立ち向かうのか?>が開かれた。主催は千住九条の会。
中野晃一さん(上智大学国際教養学部教授)
はじめに「レペタ事件」(法廷メモ訴訟)について話させてください。これは、法廷でメモを取っていいかどうか、不許可となったため、ローレンス・レペタ氏が、知る権利(憲法21条)の侵害だとして国家賠償法の損害賠償を求めた裁判です。今、傍聴人は自由にメモを採れますが、それがあったからです。戦うことの大切さを教えてくれます。
法律は支配の道具ですが、抵抗の道具でもあります。それが国際政治システムに国内政治がおおきく規定されています。連合国・米国のもとで1条(天皇条項)と9条(平和主義)の抱き合わせですが、冷戦のはじまりで自衛隊+日米安保がセットにされました。
日本の敗戦時、この時は民主党政権でマッカーサーも大統領を狙っていた時期です。パリ不戦条約が影響していますが、9条の成立は人類が権力者に対して押し付けたものではないかと。
連合国の立場からすれば、日本を徹底的に武装解除してしまいたかったのしょう。ドイツの戦後を比較するとわかりますがビルリンにはナチスにより犯罪のメモリアルだらけです。いっぽう東ドイツがあるので反共政策がありました。戦争犯罪はコンセンサスになっています。
日本は戦争責任は軍部に負わせて、天皇制を救いました。朝鮮・中国・ベトナムが分断されました。憲法は明治憲法の改正なので1条~8条が天皇なので主語が天皇となり、これで2章の戦争放棄のところが変えられると軍国主義となります。これまでの世界大戦は欧州の戦争に日本が参戦したことで世界大戦となってきました。その戦後の展開は欧州では冷戦でありましたが、朝鮮戦争、べトナム戦争などアジアでは熱戦でした。
台湾の政権については、自民党・保守派への抱きつき、かつての大日本帝国を評価したりする向きもあるので注意が必要です。実は「台湾有事」はかつて佐藤・ニクソン会談で発議されたのです(日米首脳会談 1969年11月)。60―70年代には米国・CIAの世論形成が強く出て、日本の軍事力強化や自衛隊を外へ出させようとしていたのです。
憲法の変更により主権者としての自己決定権が損なわれ、米国主導の戦争に巻き込まれるような政治が容認されてしまう危険があります。だからこそ立憲主義と平和主義を守ることが、主権と民主主義を守ることにつながるのです。その点を直感的に理解している若者や女性たちが多く行動に出ているのは希望でもあり、同時に社会的な危機でもあります。
安保法制の2015年当時は「立憲主義」を前面に出して運動が行われましたが、状況が進む中で「平和」や「反戦」をストレートに掲げることが再び響くようになってきました。政党政治が頼りにならない局面でも、社会の底流にある平和教育や平和主義の蓄積が示す力は無視できません。元教員たちの闘いも、その地下水脈の一例です。
私たちは東アジアが再び戦場にならないよう努めなければなりません。地域の緊張が高まれば日本がどう動くかが問われ、その結果として不必要な軍事的関与を招く恐れもあります。世界の構造変化や、西側中心の力関係が揺らぐ中で、日本社会の中に根強い劣等感や白人中心主義に近い価値観が残っていることにも目を向ける必要があります。
こうした精神的・文化的課題も直視しつつ乗り越えていくことが大切です。そのためには、ためらっている政治家を後押しし、社会の内側から変化を促す人々を増やしていかなければなりません。実際に国会前などの行動には初めて参加する人や女性が多く、雰囲気作りや参加しやすさを工夫する運動体も増えています。
ウィメンズアクションや若い世代のムーブメントは、男性中心の従来の政治参加の様式とは異なるエネルギーを社会に与えており、私たち中高年世代には影や後方支援という役割があると考えています。例えばペンライトのような小さな工夫でも雰囲気を作り参加を促す効果があり、主役を引き立てつつ支える存在として力を発揮できるのです。
最後に、こうした市民運動や教育現場の闘い、憲法と平和をめぐる議論は互いに関連しており、情報の自由や記録の重要性、そして草の根の連帯が民主主義と平和を守る基盤になります。声を上げ続け仲間を増やし、政治的無関心や萎縮に負けずに行動を継続することが不可欠です。皆さん一人ひとりの参加と支援が、立憲主義や平和主義を守る力になります。本日はありがとうございました。
(文責編集部)
ローレンス・レペタ 公式サイト
https://www.lawrencerepeta.com/


