外国人敵視で利を得る愚劣政治 定住する「移民」を直視せよ!

反対デモ(週刊金曜日 2026年6月10日 より)

茨城県の「不法就労通報報奨金制度」反対デモ(週刊金曜日 2026年6月10日 より)

日本政府(法務省・出入国在留管理庁)は2025年5月に「違法外国人ゼロプラン(以下、ゼロプラン)」(国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン)を公表し、2026年5月には対策を強化した。

これに対して弁護士会(日本弁護士連合会など)や人権団体・支援団体から、ゼロプランは人権侵害や国際条約などに違反していると強い抗議や反対声明が出されている。

入管庁は、「ルールを守らない外国人により国民の安全・安心が脅かされている社会情勢に鑑み、不法滞在者ゼロを目指し、外国人と安心して暮らせる共生社会を実現する」ためであると説明している。

これについては、「ルールを守らない外国人」「国民の安全・安心が脅かされている社会情勢」という安易で曖昧な表現は、根拠がなく外国人に対する不安や偏見、差別につながりやすく、排外主義と差別意識が増大し、むしろ日本社会の分断を招く懸念があり、ゼロプランにより、正当に保護されるべき難民が人権侵害に晒されると指摘されている。

「日本の極めて不透明な難民認定制度と極めて低い難民認定率の下においては、迫害の危険のある出身国に難民申請者の送還が強行されるリスクが大きいといわざるを得ず、難民条約や拷問等禁止条約に定めるノン・ルフールマン(不送還)原則に違反する事態の発生が危惧される。

また、難民申請者以外でも、様々な事情により出身国への帰国ができず、あるいは日本での在留継続を必要とする当事者が様々な類型で存在するが、ゼロプランによってこれら人権・人道上の配慮を要する当事者の収容や送還が強行されるおそれも増大している。」
(東京弁護士会 2025年09月17日)
https://www.toben.or.jp/message/seimei/post-765.html

結局のところ、ゼロプランは、国民の安全・安心とはまったく別の問題で、そもそも保護されるべき外国人の人権を侵害するおそれが高く、国際人権法にも反するものだ。

移住連は、非正規滞在者に対して<非正規滞在者を縮減するには、以前のように、人道的な観点から「在留資格」を付与すればよいのです。>とこれまでの移民政策の「不在」の責任を非正規滞在者に押し付けて追い返すことで、政府の失策を覆い隠そうとするものと批判している。

そのうえで、まずは国際人権水準に基づいた難民認定審査の整備が急務だとしている。

【声明】入管庁「新ゼロプラン」に断固反対し、その撤回を求めます
https://migrants.jp/news/voice/20260602.html

そもそも「国民の安全・安心が脅かされている社会情勢」という紋切型の文言も根拠がない。近年、外国からの旅行者の増加に伴い「来日外国人」による犯罪は増えているとの報道もあるが、95年~2024年のデータで見ると「来日外国人」による犯罪は大幅に減っている。<少なくとも、「外国人の犯罪率が日本人に比べて飛び抜けて高い」と一般化することは相当でない>だろう。

図表 来日外国人(特別永住者・永住者等・在日米軍関係者・在留資格不明者を除いた者)による刑法犯の検挙件数と検挙人員の推移

図表 来日外国人(特別永住者・永住者等・在日米軍関係者・在留資格不明者を除いた者)による刑法犯の検挙件数と検挙人員の推移(弁護士ニュースJPより)

「外国人の犯罪率が高い」は誤解? “偏見”生むメディア報道の「取捨選択」(弁護士ニュースJP 2026年06月28日)https://www.ben54.jp/news/3658

また、日本政府に移民政策はなく実態として外国人労働力を受け入れてきた。そもそも今は少子高齢化と人口減少で労働力は足りない。特に地方の生産労働力は圧倒的に不足している。
専門の研究者は語る。「地方は、外国人との共生に向けた支援の重点化のほうに期待を寄せています。事実として確認が取れない問題に対処するために、国が受け入れの抑制につながるような政策を推し進めるというのは、地方にとって災害でしかありません。」

治安悪化はウソ!? 専門家が斬る、高市政権「現実無視」の外国人規制が地方を潰す日(フライデーデジタル 2026年03月04日)
https://friday.kodansha.co.jp/article/459544

■茨城県「不法就労通報報奨金制度」を導入

茨城県は首都圏に近く「製造業・農業・建設業」に最適ともいえる地域だが、近年は若年層の県外(特に東京圏)への流出と高齢化が加速しており、地元で働く働き手の絶対数が不足しており、特に農業の担い手不足を背景とした労働需要があり、その影響で不法就労と認定される外国人が多く、全国最多という記録し続けている。

今回は不法就労を取り締まるという美名のもとに 2026年5月11日より「不法就労通報報奨金制度」を導入した。

これは政府の外国人労働者の受け入れと治安管理・抑制の矛盾が表れた事案だと思うが、「外国人人権法連絡会」や「茨城県弁護士会」などから撤回を求める声明が出されている。やや長くなるが茨城県弁護士会の声明を転載しておく。

不法就労外国人に関する通報報奨金制度に反対する会長声明
1 茨城県は、新年度の早い時期から「通報報奨金制度」を始めると明らかにした。この制度は「不法就労」の外国人に関する情報を市民から募り、摘発につながった場合に報奨金を支払うとのことである。

大井川和彦茨城県知事は、不法就労対策のためであると述べているが、当該制度は不法就労問題の本質的解決にならないことはもちろん、外国ルーツ、外国籍者、無国籍者といった外国につながる人びとに対する差別と偏見を助長するものであることから、当会は、当該制度創設に反対する。

2 「不法就労」には、在留資格のない外国人が就労している場合のほか、在留資格がある外国人がその在留資格で認められた範囲を超えて就労している場合や、在留資格がある外国人が入管から許可を得ずに資格外の就労する場合が含まれる。いずれにせよ、就労しているという外形的な事実だけでは、それが「不法就労」かどうかは明らかではないし、そもそも、見た目だけでその人物が外国籍であるかもわからない。

それにもかかわらず、報奨金付きの「不法就労」の外国人に関する情報提供制度を創設すれば、一般市民に対し、外国につながる人びとが就労しているだけで、不法就労ではないかという疑いの目を持たせることになり、外国につながる人びとに対する不当な偏見を生み、社会に差別と分断を生じさせることになる。

現時点で、茨城県としては、通報対象は不法就労者を雇用している事業者にするとのことであるが、通報の対象を事業者にしても、外国につながる人びとが就労しているという状況を一般市民に監視させ、意識化させることで、不当な偏見と差別と分断を生じさせることには変わりはないものである。

3 不法就労対策を講じる必要があるというのであれば、なぜ不法就労が生じているのか原因を分析し、原因を解決するための合理的な方策が取られるべきである。茨城県における不法就労者は農業分野が多くを占めており、これは農業分野の深刻な人手不足からくるものである。

また「不法就労」となる外国人の中には、技能実習生等がパワハラや性的搾取、劣悪な労働条件、労働環境などを理由に逃げ出した者も少なくない。

したがって、茨城県における不法就労の改善のためには、「農業」に従事できるより柔軟な在留資格を創設等、深刻な人手不足産業における人材確保制度のほか、転職や転籍がより円滑にできるための制度改正、相談体制のより一層の整備など、窮地に立たされる外国人を生み出さないような制度を確立することが必要である。

当会としても、既に行っている外国人のための各種相談業務に加えて、かかる制度の確立に向けた国に対する働きかけに関しても、県と協力体制を構築していきたいと考えるところである。

4 以上より、当会は、外国籍者など外国につながる人びとに対する過剰な偏見、差別を生み、社会の分断を招く通報報奨金制度に強く反対し、直ちにこれを撤回するよう求める。

2026年(令和8年)3月11日
茨城県弁護士会 会長 遠 藤 俊 弘

https://www.ibaben.or.jp/wp-content/uploads/2026/03/8c24218558b0b17d305544342fb73f1a.pdf

4.1 不法就労通報報奨金制度に反対するデモ

冷たい雨が降り出した4月1日(水)の午後、《不法就労通報報奨金制度に反対するデモ 外国人差別をやめろ!相互監視や密告をさせるな! 4・1茨城県庁一周デモ》に参加する人たちと取材者が集まった。

茨城県庁近くの六番池児童公園には4人のデモ参加者と4人のマスコミ関係者(TV2社・茨城新聞記者・フリーランス記者)。戦時下の現在を考える講座が呼びかけ、茨城不安定労組が共催した。

年度初めの平日の昼間で、雨模様ということもあり、主催者の予想を大幅に下回る結集状況だったが、茨城県(大井川知事)が6月県議会にかけようとしている「不法滞在外国人」を密告・排斥するための「不法就労通報報奨金制度」に反対の声を挙げようと集まった人たちだ。マスコミは大きな関心を寄せ、この小さなデモにテレビ局も含め4人の記者が取材に来ていた。(別な局からの問い合わせや、終了後駆けつけた記者もいた。)

茨城県が先行しようとしている外国人排斥・密告制度は、参政党や高市戦争排外主義政権が進めようとしている「外国人」排外主義(差別管理)政策のお先棒を担ぐ差別政策だ。茨城県自体、6万7千人の外国人労働者に支えられて農業作業・介護現場・工事現場・コンビニや飲食店が運営されている実態がある。外国人労働者の待遇改善や働き安い環境整備こそが問われているのに、差別・排除を推し進める政策を推進する大井川県政に異議を申立てる行動が求められている。4人ではあったが、雨にも負けず県庁を一周するデモを貫徹した。(吉田晃)

反対デモ(週刊金曜日 2026年6月10日 より)

反対デモ(週刊金曜日 2026年6月10日 より)

茨城県が外国人「不法就労」防止条例案を議会に提出 「排外主義助長」と批判高まる(週刊金曜日 2026年6月10日)
https://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2026/06/10/antena-1753/

中小企業ではたらく外国人労働者(メ〜テレニュースより )

https://www.youtube.com/watch?v=Mqp2ASyW7DU&t=2s

中小企業ではたらく外国人労働者と外国人労働者を受け入れている事業所(メ〜テレニュースより )


日本は自民党の政策で1990年代から外国人労働者を受け入れてきた。そこから外国籍住民は約400万(法務省による https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00057.html)増えて、永住者(永住権)は94万を数える(旧植民地出身者は約30万)が、移民という存在にきちんと向き合うことはなかった。

第2次安倍政権(2012年〜2020年)は、深刻な人手不足を背景に、1993年に「国際貢献・技術移転」を名目に創設された外国人技能実習制度の対象職種を順次拡大し、事実上の労働力として活用。さらに2019年には新たな在留資格「特定技能」を創設し、外国人労働者の大幅な受け入れを進めた。実態は移民に近いのだが、建前は「移民ではない(安倍)」というもので、これは制度をつくりながら無視するという無責任政治である。

現在、右派ポピュリズムの排外主義「日本人ファースト」を謳う政党の影響もあり、「反移民」という声が俗耳に入りやすい。移民政策は「不在」のまま、都合の良い労働力だけを欲していたし、人手不足という大問題から外国人労働力を導入をしていた。当然ながら労働力は生身の人間であり、労働者である。その労働者と家族たちは日本各地に確実に根付いて日本の経済、生産力の担い手となった。日本には多くの「外国人」が居住している。そのことを直視して、これからの「共生社会」を構想していくことが不可欠だ。かつて植民地出身者を過酷な現場の労働力として使い、蔑ろにした戦前の足跡(徴用工問題など)を繰り返してはならない。
(編集部)

外国人労働者を導入しないと問題は解決しないと話す

外国人労働者を導入しないと問題は解決しないと話す(メ〜テレニュースより )