米国の海兵隊員だったネルソンさんについてのふたつの映画

(『9条を抱きしめて 元米海兵隊員が語る戦争の真実』)youtubeより

『9条を抱きしめて 元米海兵隊員が語る戦争の真実』というドキュメンタリーを見た。米国の海兵隊員だったアレン・ネルソンさんは1947年、米国に生まれて18歳で海兵隊入り、沖縄のキャンプハンセンの訓練を経てベトナム戦争に参加した。そのせいで心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患い、米国に帰国後も苦しむことになる。95年に沖縄で起きた暴行事件に心を痛め、再び来日して日本各地で講演活動をおこない2009年に61歳で亡くなった。その生涯を紹介したものだ。

ネルソンさんについては『「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」 ベトナム帰還兵が語る「ほんとうの戦争」 』(アレン・ネルソン 講談社 2003年)が出版されている。ベトナム戦争の苛烈さ、残酷さが描写されている。また、米兵が沖縄やベトナムをどうみていたかも記されている。やや長いが引用しておく。

 わたしたちは東洋人の一人一人を見分けることができませんでした。みんな、同じ顔に見えましたし、それでもまったく問題はなかったのです。なぜなら、わたしたちは東洋人を、そして沖縄の人々を人間として見てはいなかったからです。(略)
 たとえば、街にくり出して飲んだくれたときなど、キャンプ・ハンセンにもどるにはタクシーを使いましたが、料金をふみたおすのはしょっちゅうでした。タクシーの運転手をしつこく請求すれば、わたしたちは運転手を車の外に引きずり出し、気絶するまでめちゃくちゃになぐるのです。

 それは女性と遊ぶときも同様です。女性がお金を要求しても、はらう気がなければ無視しましたし、それでもしつこく要求してくれば女性でもようしゃなくなぐりつけました。

 街を歩いていても、わけもなく沖縄の人々をバカにしたり、おどしたりしました。
 そんな悪行のかぎりをつくしても、アメリカ兵は逮捕されることはありませんでした。
(略)
 そこには、沖縄の人々を、大事な家族もいるひとりの人間として見る視点が欠けていました。わたしたちわかい兵士は沖縄の人々に対して残忍で冷酷でした。荒くれ者とよばれ、獣とおそられる海兵隊はとくにそうでした。

(前掲書 51頁~53頁)

この本では、ベトナム戦争についての記述がその後続く、以下の箇所などは今のイスラエルによるガザ侵攻・殺戮を思い起こさせる。

それは、村に残っている女性や子ども、老人を殺すことでした。(略)女だろうが、子どもだろうが、年寄りだろうが、みんなグーグスなのだ。みんな野蛮人なのだ。わたしたちを殺しにくる獣なのだ。

 そう思っていました。

(前掲書 91頁~92頁)

わたしはネルソンさんの講演を聴いたことはないが、おそらく、この本のなかで描かれていることが話されているのだと想像できる。このドキュメンタリーの映像には、日本での講演の一部がおさめられているが、それは戦場における兵士のふるまい、基本的なあり方を示している。銃撃訓練で人間のどこを狙うかと語るシーンがある。それは下腹部であり、何発も銃弾を打ち込むのだという。残酷な話だが、それは戦闘能力を奪うと同時に相手を苦しませるものなのだ。

たぶん講演では、それらの話がつづけられたのだろう。いかに米兵が非人間的な殺人モンスターとして仕立てられてきたのかに慄然とする。

キューブリックの映画にベトナム戦争を描いた『フルメタル・ジャケット』がある。そこではベトナムの戦場よりも、海兵隊の訓練キャンプがまさに壮絶で地獄のような有様だった。兵隊たちが人間性を奪われて、まさに頭がおかしくなるまでの状況が描かれていたが、ネルソンさんの体験はそれを裏書きするものだろうと思う。

ネルソンさんの先述の本をもとにした劇映画もつくられて公開予定だ。大岡昇平原作の『野火』(2014年)を撮った塚本晋也監督の演出で、公開されているスチール写真をみると、ほぼ彼の語った話をなぞったものだろう。公開が楽しみだ。

(本田一美)

ドキュメンタリー映画「A l l e n N e l s o n アレン・ネルソン 9条を抱きしめて ~元米海兵隊員が語る戦争の真実~」(
https://jcj.gr.jp/recentactivity/17775/

『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』公開日・予告編・メインビジュアル・場面写真 一挙解禁
https://www.cinema-factory.jp/2026/06/16/107732/

「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」アレン・ネルソン  ‎ 講談社 2003年

「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」アレン・ネルソン  ‎ 講談社 2003年