侵略戦争国家づくりと憲法違反の皇室典範改正

2026年7月17日、皇室典範が改正された。世論に根強い「愛子天皇」(女性・女系天皇)待望論や女性宮家の創設議論を回避し、男系継承の枠組みを守る狙いがあった。かねてより高市早苗首相や保守派が重視してきた「男系男子」による皇位継承の伝統を確実なものとして維持・固定化するものだが、それだけではない、国家情報局制定や武器輸出三原則の見直し、国旗損壊罪などの一連の流れが、日本国憲法が理念とする国民主権・平和主義・基本的人権の尊重、立憲主義を壊そうとしていることは明白だ。背後に何があるのか憲法学者(とある憲法探偵)に話を伺った。(編集部)
国民と社会組織をアメリカの侵略戦争に総動員する――新軍国主義を確立させるために必要な「天皇の国」体制
――――――今の日本で、国のすべての分野を軍事化する「軍国主義」づくりがおこなわれていて(武器輸出の全面化、日本学術会議の解体、改組化、国家情報会議の設置、2026年7月21日の「骨太の方針」など)、それが皇室典範改正とも関係しているということですが…。
「天皇の国」をつくるためにテレビ、新聞で毎日、天皇・皇族の報道がおこなわれています。今回の「皇室典範改正策動」については、日本国憲法のもとで可能性のある女性天皇・女系天皇の出現を断つこと、皇室体制を強化すること、日本国の「象徴」となる所に「家父長制」を置くことで、日本人民の革命の要因となるジェンダー平等の思想と運動を抑圧することを狙ったものです。
ジェンダー平等を貫くと、男女不平等だけでなく、男女不平等から生まれる人間につきまとうあらゆる差別を廃棄することが可能となり、男女差別を基礎とする社会構造を男女平等を基礎とする社会構造に変革することが可能となる。さらに、戦争で1番犠牲となるのは女と子どもなので、戦争を破棄することも可能となる。それは人民の「革命」といえる。
――――――女性天皇・女系天皇を断つための策動とはなんですか。
皇室典範改正により皇族女子は、結婚し皇族の身分を離れることができるが(附則・第二条)、望めば、結婚後も皇族の身分を保持できる(現行皇室典範改正・第十二条の削除により)。その場合は当該の皇族女子の夫と子に皇族の身分を与えない。当該皇族女子も、戸籍上は、国民の取り扱い(住民基本台帳に記載)となる。
結婚して皇族の身分を持つ皇族女子は、正皇族でない凖皇族(戸籍上は国民扱い)の取り扱いで、いわば「劣等皇族」という、公務要員として、皇族の仕事をする位置づけがなされている。
注)
皇族(皇嗣とその妻を除く)は当代天皇の直系の後継者が絶えた場合などに後継者を出すことができるとされていた旧い宮家(1947年10月13日決定で、皇籍離脱)の男系男子(15歳以上・独身)を養子とすることが可能となり、その場合、養子皇族男子は皇位継承件を持たない(皇位継承順位を乱さない)としている。その養子皇族男子の子ども(男系子孫)は皇位継承権を持つとされた。
皇位継承権を持たない国民の集団・旧宮家の人々を皇族にする集団として位置づけるのは、「貴族」としての創設になる。これは「華族その他の貴族制度は、これを認めない」とする日本国憲法(第十四条第二項)に違反している。無効になると言わなければならない。
国民のなかから旧宮家の人々を皇族にするのは「門地」による差別的取り扱いにもなる(第十四条第一項)。
宮家の皇族男子と結婚して皇族女子となった女性には、心身を壊すほどの重圧に耐えて男子を生む機械となることが強制されるのだ。
宮家の役割は、男系皇位継承を堅持するための「血の伴走者」という人がいる(竹田恒泰氏。「産経新聞」2026年6月23日付)。
次は「天皇の国」作りの仕上げとなる天皇を「元首」にする改憲が狙われている。国民を包摂する天皇、戦死した兵士を祀る靖国神社への参拝や戦場へ行く兵士を観閲する天皇を作るためである。
日本国憲法には「国家元首」についての規定はありません。日本国憲法では、内閣が「元首」の仕事も担っています(第七十三条参照)。君主のいる国では、君主が、君主のいない国では、行政権を担う機関の頭首(大統領)が、「元首」(国家の頭首)となっています。日本国では、君主である天皇を「象徴」から国家元首にするとりくみが内閣によって行われています(国家の代表として外国を訪問させる、外国の元首と会談・会食させる、外国の大使、公使の持参する信任状を天皇に受け取らせている、など)。すべて憲法違反です。
21世紀の君主制のあり方を追究すれば、法の下の平等・ジェンダー平等の観点からは、皇位継承は性別を問わず、最初の子(長子)を第一順位とすることが採用されるべきである。欧州の君主国では、それを実行している(スウェーデン王国[1979年]、オランダ王国[1983年]、 ノルウエー王国[1990年]、 ベルギー王国[1991年]、 デンマーク王国[2009年]、 ルクセンブルク大公国[2011年]、 イギリス王国[2013年]、 リヒテンシュタイン公国[2026年])。
国民主権の観点からは、天皇を廃止し(天皇家は残る)、純然な国民主権の共和制国家とすべきだろう。「天皇の国」は法の下の平等、ジェンダー平等を否定する封建的家父長制の国だということ。これが明白となった。
日本国憲法は、第九条によって、天皇と戦争を切り離したのに、「ポスト戦後」策動は、天皇と戦争を再び結びつけようとしている。
今日の天皇と皇族の活動は、天皇の国事行為(憲法六条・七条12項目)を除いて、すべて憲法違反である。
この状態を作ってきたのは政権や政党・政治家、マス・メディアの責任だが、国民は天皇に包摂されないよう批判的視点を持たないといけない。
――――――批判的な主体形成が求められるということですね。リベラルといわれる人が、前と今の天皇の憲法違反行為に目をつむり、両者の発言を安易に称揚したり、民主主義の擁護者だと勘違いしている現状についても厳しく見ていかなかればならないと思います。
――――――難しい課題ですが、常に意識されなければなりませんね。ありがとうございました。
注)皇嗣(こうし)とは、皇室典範において皇位継承順位第1位の皇族
皇室典範改正案の全文(日本経済新聞 2026年6月30日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA306LJ0Q6A630C2000000/
