明治150年は侵略と植民地支配!歴史を直視しアジアとの連帯を

会場の衆議院会館会議室はいっぱいになった

会場の衆議院会館会議室はいっぱいになった

安倍政権の歴史かい改ざん主義、戦争法の制定、止めどなき軍事予算の膨張・拡大と憲法改悪(平和主義廃棄)の動きは日本の民衆だけでなく、日本の侵略戦争で甚大な被害を受けたアジアの民衆も危機感を持っているだろう。

<軍備拡大と改憲・戦争への道を許すな!「明治150年」徹底批判!侵略と植民地支配の歴史を直視し、アジアに平和をつくる国際シンポジウム>が11月29日~30日の2日間に渡って衆議院会館大会議室で開かれた。

主催者によれば、日本政府主導の「明治150年記念行事は、日本が明治以来の富国強兵の軍国主義と侵略政策の結果、アジア諸国民に数千万人という膨大な数の犠牲者を出し、日本側でも300万人以上の犠牲者をもたらした歴史の真実を全面的に消し去ろうとする攻撃であり、日本が犯した侵略戦争を決して認めない安倍首相の歴史認識こそが、止めどなき軍備拡大路線を生み、アジアの平和と共生に極めて危険な動きとなっている」と批判する。

11月29日(木)14時から基調講演として山田朗さん(明治大学教授)の<「明治150年」史観批判―近現代日本の戦争・植民地支配と国民統制―>があり、11月30日(金)は10時から韓国・中国の侵略被害者の証言を聞く集いがあり、14時からは基調講演として、内海愛子さん(恵泉女学園大学名誉教授)の<サンフランシスコ講和体制を考える―戦争裁判・賠償そして日米安保条約―>と田中宏さん(一橋大学名誉教授)の<継続する植民地主義と朝鮮学校差別>があった。その後も韓国・中国からの発言が続いた。主催は主催はアジアと日本の連帯実行委員会。

ここでは、基調講演の要旨を紹介する。なお集会では、中国細菌戦や重慶大爆撃被害者の証言。韓国から強制労働の裁判についての発言。中国大連の衛生研究所と731部隊の関係を研究した報告など、発言が相次いだ。

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山田朗さん

山田朗さん


山田朗さん

現在改憲問題が焦点になっていますが、私の立場からすれば、歴史認識だと思います。歴史から何をくみとって未来に活かすのか。今、明治礼賛論が主流です。その150年から何を学ぶのか、礼賛論を克服するには植民地支配の問題を見るべき。

明治礼賛論は日露戦争に勝利したサクセスストーリーとして捉えられているが、現実には中国との戦争を繰り返してきた歴史。

アジアとの連帯を考える場合は中国との戦争、占領地・植民地支配(差別・被害)の記憶が継承されないといけない。風化しているなら発掘し確認するものでなければならない。

憲法9条は近代日本の反省からなっている。記憶の継承からできている。幣原は天皇制を護持したかったので戦争放棄を掲げなければ受け入れられないという判断だったろう。かつての60年安保闘争でも岸内閣の戦前回帰の方向に反対する側面もあった。国民のなかで9条の考え方が継承されていたからだろう。

明治の成功事例を取り戻そうというのが問題だろう。繰り返そうという欲望については、成功だったかも問われる。満州事変・満州国は破滅のターニングポイントだが、当時は分からなかった。失敗から学ぶべきという護憲論があるだろう。

安倍首相は脱亜入欧を繰り返そうとしているように見える。実態は戦前、戦後とも欧米との軍事同盟路線です。アジアを低く差別的に見ている。こういう発想が知らず知らずのうちに浸透している。

天皇の生前退位・女性天皇を認めないというのは戦前も戦後も同じ、安倍談話は明治礼賛論の価値観がよく表れている。日露戦争を評価するが、歴史としては日露戦争を経て朝鮮半島の支配を始めた。

日本は主として中国を戦場として戦争していた。そのことを意識しなければならない。安倍談話にもそれが欠けている。

日本は江戸時代までは中国から文明を学んだ意識があった。明治以後、脱亜論から中国への侮蔑が出てきた。日清戦争以後その傾向が定着した。日本人のアジア観が歪んだ。これが継続している。

大国との軍事同盟路線というのは安心だという意識もあるが、外交で虎の衣を借りる側面がある。結果として現実が伝わらない。日英同盟では日露戦争の姿が伝えらなかった。三国同盟もしかり。

日英同盟がなければ日露戦争が完遂できなかった。当時は英露対立があった。地政学でいう要所であるバルカン、アフガン、朝鮮が関係していた。

当時英国が情報網(海底ケーブル)を作成し、反露情報を流していた。日本が追い込まれた側面もある。戦費の4割を欧米で国債により調達しています。欧米資本にも権益を確保する思惑があった。

日本の国内で大逆事件があり、関東大震災の朝鮮人・中国人、社会主義者などの虐殺があった。当時は朝鮮での3.1独立報道があり、それをみていた。

日本の膨張主義は明治維新に組み込まれたとみなければならない。吉田松陰などの思想は他国を侵略することを主張していた。

満州国成立を成功事例とみて河北事変があり、蒋介石政権を倒すことに向かった。結果、英米が中国を支援し英米との対決へと進行した。

日中戦争が膠着すると毒ガス、細菌戦、略奪、強奪をしてゆく。これらは戦中・戦後ともに語られない戦争となった。

さらに大東亜新秩序から三国同盟を結び、南進し無謀な戦争に突入してゆく。

日露戦争をどうみるか、中国との戦争をどうみるか、そして脱亜入欧の視点を克服できているか。現在の立場から植民地支配や強制連行・強制労働の歴史を発掘する必要がある。未解決の被害の問題がある。

私達が学ぶべきは脱亜入欧や軍事同盟ではない。単純化すれば近隣諸国との付き合い方を間違ってきた150年だと言える。それに対する反省がないと対等・平等の関係をつくれないだろう。

内海愛子さん

内海愛子さん


内海愛子さん

日本は植民地支配の問題をネグレクトしている。韓国元徴用工の判決について日本の政府・メディアのリアクションをみると、日本とアジアを150年の歴史のなかで捉え直してゆく必要がある。

日本に動員された外国人労働者は連合国捕虜も含め3万人とも言われていますが、中国人は捕虜と認めていません。日本政府は中国と戦争していない、という立場でした。朝鮮人については言及もありません。

日本の朝鮮植民地支配の問題が残ります。サンフランシスコ条約以後は在日の旧植民地の人々(朝鮮・台湾)は国籍がなくなります。

横浜やシンガポールなどでおこなわれたBC級戦犯裁判で、連合国捕虜を強制労働させた責任者や企業は裁かれましたが、朝鮮人の強制連行は裁かれません。

有罪となった4403人のうち朝鮮人は148人、台湾人は173人です。

1951年のサンフランシスコ講話条約には中華人民共和国、中華民国、朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国は招請されていない、アジアを排除した講話です。

サンフランシスコ講和条約で戦争裁判の判決を承認し、「日本国民」のなかに朝鮮人・台湾人も含まれていると政府は解釈していました。その後は政府解釈が変わり、犯罪人ではない、との見解です。

そして戦傷病者戦没者遺族等援護法・恩給法ができますが、かつての日本国民である朝鮮人・台湾人には(日本国籍がない人々)には適用されません。

植民地支配の清算がないのです。アジアの声、証言を聞く運動が続けられてきました。加害者としての日本の問題が見えてきました。被害者たちとの対話を通してこれらの問題をどう清算してゆくのか、みなさんと考えてみたいです。

田中宏さん

田中宏さん


田中宏さん

若かりし頃の話です。アジア文化会館でアジアからの留学生と触れ合う機会があり、華人の留学生に「日本はなんでハルビンで殺された伊藤博文を千円札の顔に使ったたのか? 朝鮮人にとっては屈辱的だろう」と問われた。
その事について、日本の知識人は問わなかった。

戦争が終わったのはポツダム宣言を受諾してからだが、戦争が始まったのはいつからか、15年戦争という言葉もあるが1894年(日清戦争)から半世紀は日本の侵略がすすんでいた。50年戦争が終わったと考えないと歴史は理解できない。

カイロ宣言70周年のときに中国の通信社から原稿を頼まれたが、日本では意識されていない。カイロ宣言により朝鮮が独立し、台湾が日本から分離された、それだけアジアの人々に意識されているということです。

日本国憲法をつくるときも日本には朝鮮人差別があり、排外主義があるので、マッカーサー草案では外国人も平等に扱うという項目があった。

日本の独立回復と同時に、旧植民地の人々に対しては日本国籍を喪失させました。その根拠として「原状回復主義」ということを持ち出した。その意味では朝鮮人に対して元の言語である朝鮮語の教育を施す義務があると思う。

日韓条約(1965年)の文部次官通達では朝鮮学校を認めなかった。まさに植民地主義です。このことが高校無償化で朝鮮学校だけはずすということにつながっているのです。

日本は国際社会とズレたままです。ベトナム難民が発生して以後、国際人権の諸条約が批准されました。しかし日本は朝鮮人差別があり、難民の受け入れが進みません。制度的差別が社会生活のなかに組み込まれているのです。

植民地主義の克服が課題です。外国人の参政権は日本では廃案ですが、韓国では実現しています。韓国社会のアイデンティティの問題で「単一民族論と純血主義は克服されるべき(中略)新しく再編される韓国社会または韓国人が民族と文化の多様性を通して新しい歴史を創って」(「歴史的背景から見た韓国の多文化社会」『korena』Vol.15 2008年)という声に耳を傾けましょう。

(以上、要旨・文責編集部)

韓国からの訴えに聞き入る参加者

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