憲法違反の「敵基地攻撃能力」は平和の破壊

敵基地攻撃能力の保有を議論する前に

敵基地攻撃能力の保有を議論する前に…必要なのは憲法との整合性(tokyoMXニュースより)https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/202007210650/detail/

4月17日にオンラインで飯島 滋明さん(名古屋学院大学 憲法学・平和学)の「『敵基地攻撃能力』で平和は実現するのか 」という講演会が開かれた。主催は名大九条の会。

■飯島 滋明さん(名古屋学院大学 憲法学・平和学)

愛知の特性を紹介すると。ミサイルの性能を伸ばす菅首相の案は愛知で作られています。愛知は結構自衛隊の武器を作っていて、アジア太平洋戦争の時に軍事工場が攻撃目標になりました。

●イージス・アショアの秋田・萩への配備断念と敵基地攻撃論

今度の日米首脳会談で「台湾」という名称が共同文書に表記されるようです。それは台湾有事で自衛隊出動が要請される、ということです。

米国からの要望に応じて武器購入を勧めていく構図です。トランプ大統領(当時)の要求でイージス・アショアが導入されるのですが、アショア(海・浜辺)という意味で、飛んでいるものを把握できる(イージス)という意味です。

これは日本の防衛のためなのか? 政府の言い分だと日本を護るといいますが、米国の軍事戦略・防衛の目的として日本の予算が使われるのです。軍事基地が攻撃対象となります。

イージス・アショアから迎撃ミサイルを発射する際に使う「ブースター」と呼ばれる推進補助装置がある。それが落ちてきて危険なのだが、それも制御できないので、2020年6月に河野大臣が配備を断念します。その後は「敵基地攻撃論」が出てきて防衛論議が進んでいきます。

●敵基地攻撃論は実現可能か

「索敵」(ミサイルの策源地を探ること)は可能でしょうか。 偵察衛星、静止衛星、偵察機を出ですでしょうが、物理的にもどこに敵を見つけるのは困難です。

今ミサイルはTEL(発射台付き車両)という、車から撃つ発射台つき車両。それが主流です。

2018年に公表された米国報告によれば、発射位置のタイミングなど、その詳細に関して個別具体的な兆候を把握することは困難だという。共和国は山が多く、隠れるところも多いです。また、おとり等があると困難で、そしてミサイルは共和国からは10分で届く。

弾道ミサイルは10分、しかしその間に移動されたら終わり。トマホークは1、2時間かかる。F15 、F35の迎撃でも困難です。

島しょ防衛用高速空弾という大気圏に入らないミサイルの宮古島で基地がつくられています。もしかしたら南西諸島で相互にミサイルを発射の可能性も検討されているのか不明です。

島しょ防衛用高速空弾の説明図

島しょ防衛用高速空弾の説明図
(防衛省HPより)

敵基地攻撃論は進んでいて、「スタンド・オフ・ミサイル」導入。相手から届かない所から攻撃しようとしています。具体的には地対艦誘導弾の導入を閣議決定し、射程距離を延長します。JSM、JASSM、LRASMなどミサイルを搭載導入する予定です。

さらに「いずも」「かが」の空母化が進行します。自衛のための最小限の軍事力という観点から歴代政府は空母は持てない、と語ってきたことからの転換です。F35攻撃機を船の上に乗せて、戦闘攻撃機をのせて体外攻撃をできるようにします。

愛知との結びつきでは、小牧基地は空中給油可能であり、米国海軍や海兵隊への供給ができます。守山駐屯地はイラク・スーダンに派遣された自衛隊の司令部があります。

また、軍事工場のメッカでもあり、三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所があり、航空自衛隊F15の製造や米国のF35の整備拠点です。これには核弾頭搭載が可能なために核戦略の一端を担うことになります。

敵基地攻撃能力の実態ですが、日本の防衛よりも米国と一緒に世界中で武力行使できるということです。名目は対共和国としていますが、自民党議員は中国を北京を攻撃想定しています。

今後は軍事訓練が拡大して、沖縄負担軽減を名目に日本各地で軍事訓練を進め、沖縄基地の機能が強化されるでしょう。しかし、沖縄のレーダー基地が攻撃対象となるのは明白です。

「敵基地攻撃論」の今後は政府・与党内で「敵基地攻撃能力の保有の是非に関する判断を衆議院選挙後に先送りすべき」という戦略です。これは選挙前には市民に反感を買う政策は提示しないのは安倍の常套手段であり、選挙後に「消費税引き上げ」や「派兵恒久法」をおこないました。また高江のオスプレイパッドの建設を強行しました。

●憲法の理念はなし崩しにされる
戦前の国連は「1933年の危機」として日本の満州占領を危惧しました。かつては自衛権の名目で侵略しました。「日支交渉が決裂して、自衛権発動を決意」という見出しが新聞に出ました(「名古屋新聞」)。

「自衛権発動を決意」名古屋新聞1面

「自衛権発動を決意」名古屋新聞1面(講演レジュメより)

シンガポールの旧フォード工場の博物館には「日本占領時代には恐怖・暴力が支配した」という展示資料があります。チャンギの博物館にはさらし首の写真などがあります。そして満州では敗北すると、国民には死を強要しながら軍隊は真っ先に逃げました。沖縄でも民衆を巻き込んだ戦闘になり20万人が犠牲者となります。県民の4人に一人が犠牲となったのです。

こういう悲惨で無責任な戦争を二度とさせないため、侵略を権力者や軍部に起こさせない、そのための憲法です。憲法の前文には戦争させない「平和主義」というものがあります。戦争させないことは国民の義務なのです。

軍事的脅威を考えてみましょう。かつてはソ連のほうが脅威でした。米国のU2が厚木基地から飛んでいましたが、攻撃をほのめかされて米国はやめました。大都市に人口が集中する日本に戦争は可能でしょうか? 日本の政府は原発再稼働をしようとしているのですから支離滅裂です。たとえば現代ではサイバー攻撃で原子力発電所の停止させられたり、銀行を攻撃されたら終わりです。

敵基地攻撃はできるのでしょうか。第二次世界大戦時には連合国がドイツのロケットを攻撃しようとしたができませんでした。湾岸戦争やイラク戦争でもできなかった。費用が膨大にかかるのです。

敵基地攻撃は軍事的に不可能であり、それを実現可能にしようとすれば近隣諸国との軍拡競争に進みます。9条を擁護する人たちが「平和ボケ」と批判されますが、敵基地攻撃を主張する人たちこそ、戦争の悲惨さを知らない「平和ボケ」といえましょう。

敵基地攻撃論は「武力の行使」「国権の発動たる戦争」を禁止した憲法9条1項に違反します。その保有は「陸海空軍その他の戦力」の保有であり、9条1項の違反です。外交は一丁一旦で解決するものではないので、粘り強く進めていくしかありません。平和的外交手段によって緊張緩和すべきです。具体的には核兵器禁止条約は米国に痛手でした。市民として平和の主張と情報を発信していくことが重要です。

(文責:編集部)