要塞化する琉球弧のいま~ミサイル基地工事を阻む石垣島


5月9日(日)にZOOMビデオウェビナーによるオンラインシンポジウム「島々シンポジウム2 要塞化する琉球弧のいま~ミサイル基地工事を阻む石垣島」が開催された。石垣島で自衛隊のミサイル基地の工事が進んでいるなか、問題点や反対する人びとの意見や現状報告などが語られた。司会の三上智恵さんは映画監督・ジャーナリストで先島の自衛隊問題に早くから取り組んできた。主催は「島々シンポジウム」実行委員会。

司会・三上智恵さん(映画監督・ジャーナリストミサイル基地問題を伝えてきた沖縄本島在住)

琉球弧が急激に軍事要塞化されている。米国の軍事戦略の一環によるものだが、この軍事の担い手は自衛隊にシフトしている。懸案の辺野古にも自衛隊が配備予定である。今の基地問題は自衛隊の動向に注視しないと沖縄県民だけではなく、日本全体の国民の運命がかわっていく。今年の10、11月に14万規模の陸上自衛隊が琉球弧で演習を行うという。それが近隣諸国へどんなメッセージを送ることになるのか。そんな日米首脳会談で菅首相が台湾有事に対して前のめりこみの発言に加えて、そんな流れのなか。ミサイルはいらないと声を上げている方々から、現状や想いを語っていただき考えていきたい。

小西誠氏 企画・軍事ジャーナリスト
石垣島というのは南西諸島の砦になっていると思います。軍事大国化反対という声は聞くけど、軍事大国化一般があるのではなく日本政府は琉球弧を突破口に軍事大国化するんですね。あるいは戦争体制がつくられる。ミサイル体制建設反対ではないとたたかえません。石垣はいまは三分の一くらいしかつくられていない、ぜひ話を聞いて、どうやってこの戦争体制を止めるのかということを考えてもらいたい。

琉球弧にミサイルが配備計画されている

 米軍・自衛隊の軍事基地化の島々と尖閣・台湾の位置関係。琉球弧にミサイルが配備計画されている

■内原英聡さん 石垣市議会議員
この島に軍事基地はいらない。石垣島では工事が終わっていない。琉球弧でおきていることは日本「復帰」後に最大級の軍事要塞化であり、住民への負担増強である。米軍絡みの事故や事件は報じられても、自衛隊関連の諸問題(政治・環境・司法・自治)などの危機は沖縄県内でもなかなか報じられない。

日米合同の離島奪還作戦は住民の存在をあらかじめ無視している。市民の救助や救難といった保護は自治体の責任で軍隊は事実上関知しないという。

2014年から現在まで石垣島への陸自配備の動きとしては、14年に自民党石破茂議員は明確に配備を否定した。15年には防衛省が中山市長へ配備計画の協力を要請した。17年には防衛省が石垣島の配置図案を掲示し、市民連絡会が反対署名を提出した。18年には中山市長が3選を果たして、陸自配備を受け入れ表明する。19年には石垣市議会が住民投票の求めを否決する。住民投票実施を求めて那覇地裁へ提訴する。20年末終了予定の防衛省の工事が造成中です。

石垣では一定以上の方が自衛隊の配備に反対している。石垣市住民投票求める会は署名1万4263筆を提出した。住民投票をめぐる裁判は最高裁へ向けて進行中です。造成中の基地予定地では大量の花崗閃緑岩が出土して、それを破砕するための騒音被害が深刻です。

■嶺井 善さん 農業 石垣市に軍事基地をつくらせない市民連絡会共同代表
基地をつくると聞いて思ったのは何かあったらどこへ逃げるのか。地続きではないし最大の問題というのは、何かあったとこにどこにも逃げられないと。次に環境アセスメントの問題があります。小さい島で4万人が住んでいます。現在でも水の問題がある。基地からの影響があったらどうなるのか? きちんと向き合っていない。市長は調査は必要ない、防衛省が問題ないといっている、という。不安が何も解決されない。

基地予定地は山裾で赤土なんですよ。地層の微妙なところなので、何かあったら深いところに潜り込んでしまう。基地予定の図面もおかしなところがある。危険物質を米軍が使用しているが、自衛隊も使っている事がわかって土壌汚染が不安です。農業用水を使っているので農産物の安全性も心配です。市長は市民の安心・安全を守るために防衛省に対して要求しないですね。石垣に渡ってきた人たちは米軍に嘉手納基地として取り上げられた人たち、米軍に押さえられた人びとが開拓民として入ってきたんですね。自分たちが軍事基地によっていやな思いをさせられて、また石垣に持ち込まれるということです。

既成事実が出来上がっていくという現状ですが、子どもたちが勉強して外に行っているが、戻ってきたときにどういう環境になるのか、心配になります。

■山里節子さんと「オバーたちの会」の皆さん

山里節子さん 私たちは島の人たちに訴えようと、毎週日曜日にあちこちでスタンディングをおこなっている。国の力は強くて途方にくれることがある。私達の生まれ育った島から力をもらっている。戦争の傷はまで癒えていません。また戦争が起きたら太平洋戦争の比ではない。島の文化と自然に支えられて耐え抜き、次世代に絆ぐためにも自衛隊の基地に反対を貫きます。

ウエチさん 戦争はいちばん怖くて、大変だと思っています。それで若い人たちといっしょにがんばっています。

コノシロさん 石垣島の自然があって成り立っている。この自然が壊されたら、これからさき島がなりたたない。生態系が貴重なのでそれを保護していかなければ、地球はマイナスになる。すべての島しょを守っていくために世界に訴えるのが夢です。戦争が終わって台湾から石垣に戻ってきたときの風景が忘れられません。豊かな草原が姿を消して、岩盤を壊しています。経済のなかで起こってもいる。

ヨナハラさん 宮古島出身で石垣に移り住んで69年になりますが、石垣を国の勝手にはさせない、という気持ちです。市長には納得のいく説明をしてほしい。

シラタマさん 与那国島出身で地元で情報交換しました。自衛隊を入れると経済が良くなるというフレーズがある。みなさん喜んでたんですよ。店も賑わってたんですよ。工事関係の人びとが引いたんですよ。最近はネット社会なのでまとめて購入したり、地元の店を介さないですよ。今がっかりしているところです。聞き取りなので今の気分です。

緑があった場所にコンクリートが続いています。馬が従来の棲家を追い出されて、戸惑っています。どうなるのか、と皆思っています。

与那国島の戦争記憶を遺したい、ということで話を聞いた。かつての砲台が設置されている場所があり、そこに砲弾が落ちた。鉄砲を討ったため攻撃された、人を撃つものなんか、ない方がいいよ、と老人たちは語っていた。台湾海峡で与那国島がいちばん危なくなっている。不安に煽られている状況です。基地はいらないと反対していこうと確認して帰ってきました。

米海兵隊・陸軍の第1列島への各種ミサイル配備・開発プラン(2019年)

米海兵隊・陸軍の第1列島への各種ミサイル配備・開発プラン(2019年)

■琉球弧のミサイル基地を建設について(小西誠)
ミサイル基地 地対空ミサイルをつくりそれを守るために自衛隊の部隊がある。もうひとつは九州が司令部になり、増強して日米共同基地が進んでいる。なにが目的なのか。尖閣諸島問題は関係ないということ。では、台湾有事論はどうなのか、これもデッチ上げに近いです。今はフィリピンと台湾の間のバシー海峡の封鎖ということが狙いなんですね。

米軍の対鑑・対空ミサイル配備計画は琉球弧だけではなく、バシー海峡やシンガポールまで配備される。対馬にも配備されるということなんです。

80年代にシーレーン防衛論というのがあり、石油確保の必要だと。三海峡を防衛すると同時に島の間を防衛するということ。ソ連の原子力潜水艦に対して封鎖する体制をつくるという構造だったんです。資源危機としながら軍拡をしていた。

台湾有事論も「中国の台湾侵攻」という米上院軍事委員会での発言があるが、有事を煽り、台湾にミサイルを配備するという目論見があり、軍事予算として要求する。台湾武器売却もしている。

米国は太平洋線上に地対空・中距離ミサイルを配備するということです。キューバ危機になるような状況が生まれますが、今マスコミでは官邸になびいていますが、それをどう打開するかが課題です。

小西氏の報告の後は質問も受け付け、各人が意見表明した。
マスコミは中国脅威論をたれ流すだけでなく、裏側を取材して伝えてほしい。現実には宇宙の戦争にまで拡大しているが、それが南西諸島が実験台にされようとしているのではないか。米国は全世界の戦争を終わらせる使命や可能性があると思う。石垣市議会では市長支持は半々という構成なので、自民党が支持されているところと共通する部分があるので考えていきたい。土地規利用制法については、報道で知ったが石垣島狙い撃ち法案ではないか。治安維持法のようなものまでカバーするようなところがあり反対です、などの意見が交換された。
(文責:編集部)