沖縄=琉球を考える-沖縄・日本・米国の関係性を問う!
3月25日(土)に東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会が青山学院大学において、共通テーマ「沖縄問題は何か~沖縄(琉球)・日本(本土)・米国の関係性を問う!」で公開シンポジウムをおこなった。木村朗(鹿児島大学)氏の司会で鳩山友紀夫(元首相・東アジア共同体研究所理事長)氏のあいさつの後に基調講演と報告があり、その後会場からの質疑を受け討論をおこなった。以下そのメインを紹介する。
【基調報告】
白井 聡(京都精華大学)氏「〝沖縄問題〟が日本に突きつけるもの」
『永続敗戦論』を出すにあたって、沖縄の問題が理解できるようになりました。他人事ではないと確信するに至りました。
普天間基地移設と辺野古基地新設の問題について、鳩山政権時代に新基地は「最低でも県外」という基軸があった筈ですが、最近の世論調査では、「沖縄でなんとかしてほしい」という意見が半数であります。沖縄の翁長県政成立により「辺野古新基地はいやだ!」という意思がハッキリ示されていますし、その後の選挙でも「基地はいやだ」ということを日本に対して表明されています。それでも本土では理解されていません。
本土では無関心ということなんでしょう。個人的にヤフーニュースに原稿を提供しています。これまで20本くらいアップしてますが、沖縄をとりあげたニュースはそのうち2本あります。それが著しくアクセスが低いんです。おそらく「沖縄」だけの文字でシャットダウンしてしまう。
ざっくり言うと日本人の意識はおよそ半分が無関心、その半分は申し訳ないと思っているのが25パーセントいる。それ以外は露骨な差別感情をもっている。それがネトウヨ言説として溢れている。無関心・同情・差別というふうに別れていると思います。同情はまだましですが他人事です。しかしそうではなく、それが本土の日本人として我が事になるのか?
MXテレビ問題が発生しました。まともな取材をせずに、基地反対の運動している人たちを過激派であるとデマを飛ばしている。BPOでも問題になりましたが、まともな放送人としてプライドがなく規範の底が抜けている状態です。
沖縄問題を我が事として理解できるのかヒントを与えたいと思います。
『永続敗戦論』についてキー概念として「敗戦の否認」の論理がある。重要なことを否認するのは心の病気です。負けたことは知っているけど、何を意味するのか知ろうとしない。指摘されると逆ギレする。敗戦の日を「終戦記念日」と呼んで違和感をもたない。そこに否認が現れている。なぜ、そんなことになるのか? そのひとつに沖縄に基地が集中していることにあります。米軍が日本を占領しますが、その米軍基地のあつれきが戦後日本でありました。サンフランシスコ条約と同時に日米安保条約が結ばれ占領軍が置かれます。敗戦の結果として米軍が存在しています。その後日本本土からは目に見えるところには米軍が消えていきます。隠されています。六本木には米軍専用のホテルがあり、横田空域には米軍専用の空の領域がありますが、それが容易に認識できません。日常的に体験・実感できないようになっています。いっぽう沖縄では基地があり続けています。このコントラストはどういうことか。それは暴力と文化の問題があります。
暴力:力による支配では嫌いになりマイナスになる。アメリカを好きになってもらう戦略で大衆文化が流入しました。アメリカなるものには「暴力」性と大衆文化の両義性がありますが、いっぽうだけしか見えない。日本本土では楽しいアメリカを消費していくことが確率しました。それは沖縄に米軍が集中したことで可能となります。沖縄に「暴力」を強いることからそうなりました。
さて、冷戦崩壊後アメリカの衰退があり、生き残り戦略として日本から収奪していくというのも選択肢でしょう。トランプ政権になりTPP終了でも、直接日本の社会構造に手を突っ込んでくる可能性もあります。暴力的なアメリカが出てくるかもしれません。
日米同盟からは日本を守る存在としてのアメリカしか見えないのですが、日本が勝手にそう思っているだけであり、そう考えれば我がこととして思える筈です。
沖縄は日本になにを突きつけているのか。近代国家が社会契約的なあり方で成立しているとすれば沖縄では崩壊している。沖縄は明らかに被差別的存在にされている。そこから沖縄独立論がでてくる。日本の場合はこれだけ対米従属体制が続くと独立意識は理解できないでしょう。
安倍首相自身はどうなのか。反米的なところもあり、媚を売っているところもある。反米と親米どちらに本心があるのか自分でも分からないのではないか。分裂を抱えている。統一した人格を取り戻したときにアジアに対してヘイトを向けるときかもしれない。アジアで唯一の欧米並の国という、親米とアジアへの優位性を誇り、差別の対象として韓国、中国、沖縄も入ってきている。本土では沖縄に対する差別もさらに増えてくる可能性がある。親米右翼からは排外主義が強くなってくるだろう、それをなんとか止めなくてはならないでしょう。
佐藤 優(作家・元外務省主席分析官)氏「沖縄を巡る当事者性の問題」
沖縄は完全な日本人だと思うようにしている、これが沖縄人の自己意識。沖縄の人は沖縄人だということを抑圧されている。沖縄を犠牲にして日本のために尽くすという沖縄人は減っている。日本と同化している人と琉球人だという人はそんなに多くなく、沖縄(琉球人):日本人という混在した人が多くいる。なぜ日本の同化政策が失敗したか。作家の大城立裕さんの考え(「新潮」2017年2月号)が参考になると思います。そのことを議論してみたいです。
松島泰勝(龍谷大学)「アジア型IRと西洋型IRの中の琉球独立」
沖縄ではなく琉球という言葉を使いたい。沖縄は日本所属という意味あいがあるが、国内問題ではなく国際問題なんです。琉球処分ではなく琉球併合です。琉球は民国、清国から干渉を受けず独立国として存在しました。日本は欧米(西洋IR型:帝国主義)国家に倣い、北海道、台湾、朝鮮、中国の一部を支配下に置いて覇権を確立しようとしましたが敗戦により崩れました。その後は米国との同盟のもとアジア盟主を継承しているかっこうなので、大東亜共栄圏の思想は継続していると考えます。
琉球人の自己決定権、独立に対しては李承晩や蒋介石も独立運動を支援、応援していました。琉球独立の研究はアジアの日本の植民地だった国々の人々も関心を持っています。「軍隊は住民を守らない」ということを琉球の人は歴史で学びました。非武装中立の琉球連邦共和国が誕生することによりアジアの軍事力拡大に歯止めをかけて平和なアジアをつくることになるでしょう。また国連アジア本部を持ってくると思います。新しいアジア型IRは平等な立場で平和を構築し経済発展を促進すると思います。イメージとしては安重根の「東洋平和論」に似ていると思います。
アジアのなかの琉球を考えるうえで注目しているのが新垣弓太郎(あらかきゆみたろう)という人で自由民権運動の闘士です。中国革命を支援し孫文を助けて戦後は沖縄独立論を主張しました。また、蒋介石の支援で琉球独立運動をしていた人がいます。それを調べているところです。
琉球独立は日本の分離ではありません。琉球はオランダと修好条約を結んでいた国家でありました。独立ではなく復国・光復かもしれません。
東アジア共同体の阻害要因は米軍基地です。琉球が独立することによりすべての基地が撤去できると思います。アジアの平和構築により日米同盟の地政学的欲望が生み出した軍拡体制を排除できると思います。
高良鉄美(琉球大学)氏「『大』と『帝』-憲法と東アジア・琉球」
本土の人に沖縄の基地をなんとかしてほしい、という話をすると「日本の安全をどうするのか」と応えられる。日本の安全を沖縄が担わないといけないのか? 沖縄の人は守ってもらっていると思っていない。もともと捨石として理解している。沖縄は戦後は天皇のいうとおり米国占領に置かれました。受験のときに日本に行きました。沖縄と日本のを渡航するパスポートのようなモノがありました。複雑な気持ちになったことを記憶しています。
なにか事件があると対米と対日(政府)に決議するという状態。それが復帰前でしたが、日本は何も言えない状況。日本政府にいってもしょうがないという土壌ができた。司法がおかしい。最高裁は安保条約が分からないといっている。大日本帝国憲法が残っている。明治憲法が残っている。
日本国憲法ができても頭を切り替えることができない人もいる。以前の明治憲法の思考が残っている。それが新基地反対運動参加者に対して不当逮捕となっている。民主主義の考え方がわからないのだろう。共謀罪が話題になっていますが、日本軍がシンガポールを占領したときに現地の人々が共謀して独立運動がありました。それを弾圧したときに名簿をつくって虐殺した。それを今でもやっているのではないですか。沖縄の基地に反対している人々の名簿をつくっているでしょう。大日本帝国憲法の思考が残っている人がやっているから。
なぜ沖縄が決戦の場になったのか、日本軍の基地があってそれを攻撃した。その基地を米軍が使用した。ハワイがなぜ攻撃されたのか、州になっていないにもかかわらず基地がつくられたから、そのことがパールハーバーを祈念したメダルに書かれている。沖縄とまったく同じ状況です。
沖縄の基地に反対している人に対して「土人」という言葉が投げかけられるが、他の運動に対してはありえない。これは日本のなかで整理しないと大きな問題になってくるという気がします。
(本田一美)