日米合同委員会の密約が立憲主義を破壊している!

6月4日文京区民センターに於いて「砂川事件裁判再審開始を!伊達判決記念58周年集会」が開かれた。主催は伊達判決を生かす会。伊達判決とは、1955年から米軍立川基地の拡張に反対してたたかわれた砂川闘争のなかで、基地内に数m立ち入ったとして、逮捕起訴された7人の裁判で、東京地裁の伊達裁判長による「駐留米軍は違憲・基地侵入は無罪」の判決(1959年3月30日)を指すものである。

その後、最高裁の田中耕太郎裁判長は「日米安保条約は高度な政治問題で裁判所では違憲かどうかの判断は行わない」と棄却(1959年12月16日)し、被告は刑特法違反で罰金2000円の有罪になった。

しかし、調査によって田中耕太郎裁判長と米国側の接触が明るみになり、「裁判は公平ではなかった」と東京地裁に再審請求(2014年6月17日)。しかし、棄却(2016年3月6日)され、即時抗告し、現在、東京高裁で争われている。

以下集会のメイン講演である。吉田敏浩氏の講演を紹介する。

講演する吉田敏浩さん

講演する吉田敏浩さん

米軍優位の密約システム-日米合同委員会の廃止を!

米軍の基地運営・軍事活動に日本の行政権、司法権も及ばない。そこには「砂川裁判最高裁判決」が影響を及ぼしている。日米安保の体系が主権在民よりも上にある。マッカーサーと岸首相、田中裁判長の共謀で伊達判決を覆した。

駐留米軍には日本の指揮・管理権が及ばないので、憲法9条が禁じる戦力には当たらないとし、さらに日米安保条約のような高度の政治性を有する問題には、裁判所の違憲審査権は事実上及ばないとの見解を示した。それが「憲法体系」を優先させ、米軍の基地運営・軍事活動のフリーハンドの特権を認めることになった。行政・司法が届かない。人権が保障されない。それが「砂川判決」というものだ。

米軍優位の不平等な日米地位協定が、米軍に事実上の治外法権を与えている。地位協定では、米軍基地の場所が限定されない、こういうことは最低でも国会で議論・審議すべきだが、国会では決められない。日米合同委員会が決める。それが「全土基地方式」。

米国の世界戦略。その協力のために米軍基地がある。それを実行司令する日米合同委員会が重要な政治的位置を占めている。

日米合同委員会は日本の高級官僚と北米局長、米国高級軍人などで構成されている。全体に人数は数百人規模で実務は分会・委員会でほとんど承認する。ほぼ軍人の要求が通る。

日米軍事委員会は1952年4月28日の対日講和条約、日米安保条約、日米行政協定(現地位協定)、とともに発足した。

対日占領下の特権構造が安保条約の成立後はそのまま移動させたかっこうだ。外務省の会議室とニューサンノー米軍センター(港区南麻布にある米軍関係者の高級宿泊施設)の会議室で交互に会議を開いている。

正確は回数や内容は非公開で開示要求してもでてこない。合意内容や要旨は一部だが、外務省や防衛省のホームページに公開されたりするが、米軍に有利な内容が削除されていたりする。

密約の実態としては砂川事件の最高裁判決の経緯にあります。2008年4月に国際問題研究家の新原昭治さんが米国国立公文書館で文書を発見し(駐日米国大使マッカーサーから米国務省宛報告電報など伊達判決に関係する十数通の極秘公文書。最高裁で早期に破棄させる米国の圧力・日米密議を示す)、おおきな問題となりました。また「琉球新報」が外務省機密文書である『地位協定の考え方』(1983年)をスクープしましたが、このように機密文書、外部文書を調査して実態を知るしかない。

▼機密文書「地位協定の考え方」 – 環境総合研究所
eritokyo.jp/independent/nagano-pref/kimitsubunsho-l01.html

日米合同委員会の米軍優位の密約は日本の主権を無視してできています。これまでに「裁判権放棄」「身柄引き渡し」「民事裁判権」「基地の秘密」「日本人警備員武装」「航空管制委任」「米軍機優先」「富士演習場優先使用」「嘉手納ラプコン移管」など米軍にとって有利な内容がわかっている。

とくに「身柄引き渡し」の密約は、日本の警察に逮捕された米軍人・軍属が公務中なのか判然としない段階でも、身柄を米軍に引き渡すもので、結果としてすべてが公務とみなされる。

さらに「航空管制委任」は日米地位協定にも、航空法にも規定がないのに日米合同委員会によって米軍に基地周辺上の航空管制を事実上「委任」している。

横田空域と岩国空域で米軍が航空管制している。日本の飛行機は自由に飛べない。日米地位協定(第6条)では軍事と民間で航空管制を協調し整合し、両政府の当局間で取り決めると定めているが、実質的には軍事優先、米軍優先である。

日米合同委員会はそれほど効力を持つものなのか。外務省の機密文書『地位協定の考え方』は、日米両政府を拘束するという。

国会にも公開せず、主権者である国民・市民とその代表である国会議員に対しても秘密にしてたまま、ごく限られた高級官僚と在日米軍高官とが日米合同委員会の密室で結んだ合意が法律を超越して「日米両政府を拘束する」というのだ。

日米合同委員会の米国側委員は、協議内容を上部組織の米太平洋軍司令部に報告する。さらにその上の統合参謀本部が検討をして在日米軍司令部に司令を出す。それにもとづいて米国側委員は要求を出す。おおむね米軍優位の合意が結ばれる。

日米合同委員会は米軍上層部から見れば、占領時代の特権を維持して変化する時代に応じて特権を維持・確保してゆくための装置です。

米軍は日本の高級官僚と密室協議の仕組みを利用して。事実上の治外法権・特権を認めさせている。いわば実施細目の合意を法律をこえて力を持たせる構造である。

憲法の法の支配に服さず、枠外に出てしまっている存在で、立憲主義を侵食する部分の核心である。

国会に「日米地位協定委員会」を設置して、国政調査権により日米合同委員会の合意文書や議事録の全面的な情報公開をさせることが必要。

米軍の特権・密約を破棄して地位協定の解釈と運用を国会の管理下に置いて抜本的改革と(地位協定の改定をしても合同委員会の密室合意のシステムが残ると米軍優位の構造は変わらないので)日米合同委員会の廃止をすべきです。
(文責・編集部)

▼伊達判決を生かす会
http://datehanketsu.com/toha.html