日米安保の現在と新しい防衛大綱

イージス・アショアの基地

イージス・アショアの基地(fnnプライムより)


12月15日(土)に<改憲を先取りする新しい「防衛大綱」に反対する12.15集会>が文京区民センター・3C会議室で開かれた。主催は大軍拡と基地強化にNO!アクション2018。集会ではジャーナリストの大内要三さんの「日米安保の現在と新しい防衛大綱」講演があった。大内さんは防衛大綱の背後にある日米軍事同盟の説明をつうじて、「新大綱」の狙いを説明した。

日米安保の現在と新しい防衛大綱
大内要三さん(日本ジャーナリスト会議会員)

日本の安全補償対策は国家安全保障会議が決めることになっているが、その国家安全保障会議は内閣に置かれる、その会議では自衛隊制服組トップ(制服着用が義務となっている自衛官)が説明することもある。特に河野統幕長は安倍首相のお気に入りで、3回も定年を延長している。

国家安全保障会議は「日本版NSC」とも称されるが、関係省庁を束ねていて、政府が発表した新たな「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」に大きな影響力を持つ。

しかし、そこにあるのは日米同盟のメカニズムであり、米国の防衛戦略がある。主なポイントとして、1.中国とロシアは「現状変更勢力」 2.彼らとの戦略的競争は「テロとの戦い」に代わる最重要課題 3.米軍の優位性の低下に危機感を持っている 4.北朝鮮とイランは「ならず者国家」である。などがあり、同盟国に対して公平は負担を要望している。

さらにオバマ時代からの核政策の見直しがあり、小型核兵器の開発、先制的核攻撃の容認などの転換に、日本の河野太郎外相は高く評価すると談話を表した(2月3日)

アーミテージ報告では(18年10月3日)トランプの米国第一主義によって日米同盟が危機だと批判している。これは日米で協議して米国で発表するもので、日本の意思も入っている見ていいだろう。

防衛大綱は積極的平和主義に基づく「自由で開かれたインド太平洋戦略」を課題としているが、既に日米軍同士では「インド太平洋戦略」が協議されていた。日米の軍同士の協議が日本の戦略の枠組みを決めていることは「先軍政治」だ。

新しい防衛大綱について、イージス・アショアや無人水中航走体(UUV)などを導入。現有艦艇の空母化構想、F-35Bステルス戦闘機を艦載機にする。今後5年間の防衛費は総額で約27兆4700億円となる、などのメディア報道はリークによる宣伝である。いっぽうで日本経団連は「新大綱」について米国依存だと日本国内の製造・生産システムが育成できない、と要望を発表した(18年6月19日)。

トランプ政権のもとでの「日米同盟のゆらぎ」のなかで、「防衛力の主体的強化」のもと沖縄の島しょ部への新基地建設が進行している。また対中国防衛という日米戦略や米国以外のカナダ、オーストラリアとの共同演習も行なっているが、これも根拠はどこにあるのか?

宇宙・サイバー・電子戦という担当部隊を統括する上級部隊を新設し、新しい分野を開拓しているが、攻撃することはできるのか疑問である。

「いずも」を航空母艦に改修してFB35Bを搭載する、というが防衛というよりも米軍の護衛などではないか。すでに米軍と「共同運行訓練」を17年5月に行なっている。「総合ミサイル防空能力」強化のためイージス・アショアを秋田と山口に設置する計画だが、これは対中・対露の監視・攻撃になりうる。

優先事項としては、人口減少で自衛隊員の適格者も減少することに対応し、即応予備自衛官や女性隊員の増加と登用を目指している。例えば船の一割に女性トイレを設置するなどの動きもある。さらに防衛産業の発展をさせるため、武器(完成品)輸出を実現を狙っている。

重要なテーマとしては統合運用体制で陸海空3自衛隊の運用を常時、一元的に指揮する「統合司令部」創設に向けて調整している。現行の態勢では事態が起きた時、統幕長が部隊運用に専念できない。東日本大震災では統幕長は時間を官邸報告や米軍との調整に割かれ、部隊運用から目を離さざるをえなかった。

アーミテージ・ナイ報告では「統合任務部隊」として、自衛隊は米軍の補助部隊の枠内で戦力強化を目指すことになる。新防衛大綱は「自由で開かれたインド太平洋戦略」「クロスドメイン防衛構想」とのキャッチだが、「専守防衛」から威嚇力をもち敵地攻撃能力をもってゆく。現実には第三次日米安保ガイドラインと戦争法(新安保法制)で侵略軍となっていく。
(文責:編集部)

■参考
必ずしも批判的ではないが…

新防衛大綱を見て思う…やっぱり「空母」の議論を避けるのは不自然だ
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59137

「いずも」

「いずも」

「保釈」一転、ゴーン再々逮捕  国滅ぼす借金漬け新防衛大綱(デモクラシータイムス)

中国念頭に機動力強化 政府、新防衛大綱を決定(「日本経済新聞」2018年12月27日 ウェブ版)https://www.nikkei.com/article/DGXNASFS16049_X11C13A2MM0000/