小澤隆一さん講演…憲法を拠り所にコロナ禍を克服
7月18日(日)に北千住・シアター1010において、小澤隆一さんが「憲法を壊す政治と 生かす政治 そして私たち」という題で講演し、市民約50名が参加した。主催は千住九条の会。小澤さんは東京慈恵会医科大学教授で、日本学術会議の任命を拒否された当事者でもある。専攻は憲法学で九条の会事務局、著書に『市民に選挙を取り戻せ!』(大月書店)、『安保関連法総批判』(日本評論社)などがある。
小澤隆一さんの講演
この間、学術会議の連携会員という立場で、活動に関わっていた。印象に残っているのは、「核ゴミ」、高レベル放射性廃棄物の処分問題について、学術会議の検討委員会に入って、原子力委員会への回答や提言の活動だった。核廃棄物をどうするのか議論しないといけない。そのような学術の立場から国民にも問題提起していく、貴重な役割が学術会議にはある。
学術会議は学問研究の成果をもちよって、政府や社会に対して提言や勧告をおこなう機関であり、自律的で独立的な活動は民主主義にとって不可欠である。学術会議は6名の任命を菅首相に強く求めている。
安倍政権から菅政権へと移ったが、やはり憲法破壊の姿勢だ。基地周辺の住民を監視しその私権制限を狙う「土地利用規制法案」など危険性は変わらない。
■安保法制(戦争法)による日米軍事同盟の強化
米国のバイデン政権発足後に日米首脳会談があり、日米同盟をインド太平洋地域、そして世界全体の平和と安全に礎として、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調している。馬毛島や琉球弧の軍事化により緊張も高まっている。中国の海洋進出に対して日米軍事同盟の強化で対抗するのではなく。国際法に基づく平和的外交交渉で解決すべき。
■コロナ禍の克服を阻害する軍事
今のコロナに苦しんでいる世界で、軍事力には出番はない。軍事力は圧力であり阻害するものだ。米国からの武器の「爆買い」をやめて、対米従属をやめて国際社会と強調してコロナを克服しよう。
■敵基地攻撃能力論について
2015年の日米ガイドラインと安保法制(戦争法)による日米軍事同盟強化に基づき進んできた。「敵基地攻撃能力」とは相手のミサイル発射基地など、敵の基地を直接攻撃できる能力だが、先制攻撃とどう違うのかあいまいである。
北東アジアの軍事的緊張によって、終わりなき軍備の拡張という負の連鎖を断ち切るためにも、軍事同盟体制の解消こそ求められている。
■憲法を拠り所に(25条.13条)
政府に憲法を守らせる、立憲主義の課題はコロナ禍により新たな状況を迎えている。人々の命と暮らし、仕事を守るために今こそ人権尊重の政治が切実に求められている。そのための制作を迅速に実行すべき責務が国会と内閣、自治体にはある。
憲法25条は「すべて国民は。健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に務めなければならない」と規定している。
さらに25条の理念は日本も批准している国際人権規約の12条で具体化されている。
また憲法13条の「すべて国民は個人として尊重される。声明、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しないかぎり立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」について、コロナから人々のくらしと命を守ることを政治の責務として引き受けるとうこと。「個人の尊重」は多様な生活をそのまま保障していくことで貴重だ。感染予防策や生活支援策についても様々なとりくみが必要だ。
さらに男女平等の24条、教育を受ける権利を保障する26条、27条の勤労権や28条の労働基本権など社会権の規定も生活のなかでこれらの権利を活用し、国家に要求していく運動の根拠として重要な役割を発揮している。
■大惨事に便乗する改憲
自民党の新藤議員は「コロナに感染した議員がいた場合、定足数を欠いても国会の機能を確保する方策」「コロナ感染による衆議院議員不在への対処」という問題提起をした。
これらについては「総議員3分の1以上の出席」を要する(憲法56条)のはそれほどハードルは高くない。国会議員にだけ感染者、濃厚接触者が出て「定足数」の規定を細工すればなんとかなるという想定自体ナンセンスだ。
また安倍前首相はコロナウイルス感染拡大にかこつけて「緊急事態条項」導入の改憲論を持ち出した(2020年5月3日 メッセージ)。これについては感染症の対応であり、それに即した具体的な対策が求められる。いろいろな理由をつけて緊急事態導入論を持ち出す動きに警戒をしよう。
緊急事態条項については「いわゆる戦時、武力攻撃の事態は想定していない」としているが、自民党のQ&Aでは「大規模災害やこれに関する大規模事故等」という表現となっているので「等」のなかにいろんなものが入ってくる。武力攻撃に起因しても「災害」である。
菅政権と自民党は、6月11日の改憲手続法の「改正」を足がかりとして、改憲案の国会での審議画策、「敵基地攻撃能力」の保有、日米共同声明などにより憲法破壊を押しすすめるだろう。こうした憲法破壊と明文改憲の策動に対して、声をあげるとき。改憲ノーの声を地域、職場の草の根からあげていこう。7月4日の東京都議会議員選挙が示すように野党共闘が着実に成果をあげている。総選挙では改憲反対の勢力を大きくして改憲を断念に追い込み、改憲を破壊する政治から憲法を活かす政治への転換を実現しよう。
(文責:編集部)