日本には階級闘争が必要だ!…資本の論理と対抗するために
3月17日に立教大学で<「階級闘争」の復権に向けて>というシンポジウムが開かれた。案内には「市場の飽和と利潤率の低迷をうけ、資本蓄積が停滞している現在。リフレ政策によっても設備投資は引き出されなかった。もはや利潤の増大は労働分配率の減少にかかってきている。再び鮮明になりつつある資本と労働者の階級対立にどう向き合うか、ともに考えたい」とある。 主催はマルクス研究会。
講師は 吉原直毅(よしはら・なおき/1967年生まれ。マサチューセッツ大学アマースト校経済学部教授。著書に『労働搾取の厚生理論序説』(岩波書店、2008年)、共著に『マルクスの使い道』(太田出版、2006年)など)氏と 藤田孝典(ふじた・たかのり/1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学客員准教授(公的扶助論など)。著書に『貧困世代』(講談社新書、2016年)『下流老人』(朝日新書、2015年)、共著に『未来の再建』(ちくま新書、2018年)など)氏で、吉原氏はアベノミクスについての評価と経済成長主義の批判を話された。経済政策については当初のデフレ脱却の目標に失敗しているところを指摘し、併せて「薔薇マークキャンペーン」についても批判的に言及した。その後は藤田さんが講演し、その後は相互にディスカッションと会場からの質疑に応答した。ここでは藤田さんの話を紹介する。
■階級闘争の復権に向けて 藤田孝典さん
ソーシャルワーカーです。NPO法人ほっとプラスの活動をしています。活動していくうえでマルクスの考えなど参考になります。市場の外にいる人々、女性や老人や子ども、障がい者などの弱者と言われる人たちが権利要求の主体になっていくこと、それが大切だと思います。当事者が主体になること、生存権保障のために、政治を動かす、政策をつくることがことが重要です。
社会運動が弱体化しているように感じます。弱者や貧困に苦しむ人たちが主体となり、彼らの声が挙がっていくように、社会運動を立て直すことが必要です。それらをソーシャルアクションと呼んでいます。
直近20年で貧困は社会に浸透しました。相対的貧困率を決める可処分所得の中央値は、ここ数年245万円程度で推移しています。20年前の1997年には297万円だったが、これを見ても中央値は52万円も下落しています。52万といえば月額約4万3千円です。中央値は下がっても貧困率自体は上昇しています。これは年金受給者の増加や世帯員の減少を差し引いても深刻な自体です。
具体的に見てきましょう。日本の相対的貧困率は世界第6位です。母子家庭(含む父子)の貧困率は54.6%で半数が生活が厳しい状況です。
それから男性の年齢別貧困率で20歳~24歳で1985年は10%くらいだったのが2012年には20%を越えています。
また、子どもの貧困という言葉も話題に登るようになりました。働く親の貧困が子どもの貧困に直結します。子どもの相対的貧困率は13.9%で高水準です。17歳以下の子どもの7人に1人、250万人あまりが貧困状態にあると言われています。
https://npojcsa.com/jp_children/poverty.html
福祉が機能していません。最低生活費以下の貧困については、生活保護基準以下で計測した場合は23.3%です。約2973万円の人々が生活保護基準以下で生活しているのです(2016年朝日新聞)。これでは社会権保障が形骸化していると言わざるを得ません。暮らしが成り立たない問題を「個人的なこと」としてしまったことは罪が重いでしょう。マスコミなどの影響もありますが、政治的・社会的政策としては失格です。
また、資本の論理に抵抗できない福祉の現状があります。市場が開放されて、結果は資本により変容されてきました。利潤追求と株主へ優遇・分配をおこなうために社会福祉をツールとして使うようになりました。福祉労働者も利用者も搾取の対象となり、利潤が得られないと早々と撤退していきます。そもそも福祉事業は厚生労働省による公定価格があり、そのなかで資本蓄積、役員報酬に回せば現場に負荷がかかるのは当然です。
その福祉の現場では、たとえば相模原の障害者無差別殺人があり、高齢者施設での殺傷事件も起きています。児童養護施設でも性的虐待や不適切な対応が報道されています。これらの要因には職員の人手不足と過重労働によるところも少なくありません。福祉労働の現状は疲弊し惨憺たるものです。
日本の悲惨な現状は「貧困は自己責任」という社会風潮にあります。それは経済成長を前提・背景とした市場に依存して、世帯単位で貯蓄と資産でリクスに備える自己完結型社会です。生活必需品などは市場で稼得する前提になっており、社会保障は残余的なものです。自民党の研修書には「日本型福祉社会」(1979年)として、そのような方針が記されています。
これからの社会運動としては、ソーシャルアクションを行うために、当事者と社会・環境とのつながりや、徹底した人権養護と協働作業、社会構造の理解、議論・研究にとどまらない実践と組織化、共用する仲間との連帯行動、社会へのアプローチ、発言権の確保、発信の強化と行使など多々、挙げられます。究極的には政治や政策を変えるというよりも、生活や働き方を変える方向を目指したいと思います。
(文責:編集部)
■参考
マルクス研究会
http://marxresearchsociety.com//aboutUs/index.html
特定非営利活動法人ほっとプラス(フェイスブック)
https://ja-jp.facebook.com/hotplus2011/