元号いらないし使いません…改元をめぐる状況を探る

新元号を予想する記事(「産経新聞)web版より)

新元号を予想する記事(「産経新聞」2018年6月25日 web版より)

今さかんに「平成最後」というフレーズがマスコミで飛び交っている。2019年に予定されている天皇代替わりのイベント(!)に向けて、盛んに煽っているとしか思えないのだが、時代区分を強調したり、特別視して意味を付与するのは御免こうむりたい。ビジネスチャンスかもしれないが、「平成」に特に意味があるとは思えない。ナルシズムに浸れるかもしれないが、それはあくまで日本という社会での意味でしかないからだ。時代に意味を込めて、そこに閉じ込めることは危険ではないだろう。外からみるとそれは「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が崩れていった軌跡としか見れないのではないだろうか。

7月21日(土)に文京区民センターで「なぜ元号はいらないのか? 7.21集会」が「元号はいらない署名運動」の主催で開かれ、約100名が参加した。

集会は坂元ひろ子さん(中国思想史・一橋大名誉教授)の「中国の革命経験から考えるアジアの共和国」講演。中川信明さん(靖国・天皇制問題情報センター/練馬教育問題交流会)から具体的な元号反対運動のこれまでとこれから、大沢ゆたかさん(元立川市議)から東京23区内外の自治体における元号・西暦の使用調査報告が報告があった。

集会当日に元号関連資料が配布された。ここでは、それも利用しつつ、現在改元についてどのような事が起きているか紹介したい。

まず朝日では行政システムの一部で、新しい元号となる2019年5月1日以降も「平成」の元号を使用を一定期間使い続ける検討に入ったことを伝えている。「国民生活に影響が出ることは避けなければならない」と政府関係者の声を伝えている。

・改元後も「平成」一部利用 政府検討、税・年金システムで 銀行など混乱避ける狙い(「朝日新聞」2018年5月13日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13491490.html?iref=pc_ss_date

新元号の発表については、改元一カ月前との報道だが、政府が元号の公表時期の想定を明かしたのは初めてらしい。新聞では、当初は夏ごろ公表を検討したが、新元号の発表によって<天皇陛下と新たに即位する皇太子さまという「二重権威」が生じるとの懸念が強まり>即位日に近づけたという。元号を公表しておけば、前記にある報道のような混乱をしないように、システム変更への移行はスムーズになるのではと思えるが(もちろん元号使用は反対ではある)、何をもって公表を引っ張るのか理解できない。

二重権威というが、権威は実力の裏打ちがあって初めて成立するもので、象徴にはそれがない。

朝日社説では<権力者による時の支配を表す元号は中国から広まった。日本でだけ続いていることを、最近はやりの「すごい日本」の例に引く言説もあるが、裏を返せば国際化時代にそぐわない、使い勝手の悪い制度>とズバリ本質をついた当然の議論。また<ところが1カ月前の公表ではシステム改修は全て終わらず、5月以降も様々な書類に平成の表記が残るという。先の理屈ではこれは「失礼」「二重権威」に当たらないのだろうか>と皮肉も漏らす。当然ながらどうとりつくろっても不自然で、無理が生じるのである。

・新元号の公表、改元1カ月前の来年4月想定 政府明かす(「朝日新聞」2018年5月17日)
https://www.asahi.com/articles/ASL5K5GMBL5KUTFK00L.html?iref=pc_ss_date

・(社説)新元号の公表 「1カ月前」のおかしさ(「朝日新聞」2018年5月27日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13513100.html

結局、運転免許などは有効期限を西暦にするようだ。よりわかりやすくするものとのことで、日本だけにしか通用しない元号の無用性があきらかになった形だ。

・運転免許、有効期限は西暦に 警察庁方針「改元関係ない」(「朝日新聞」2018年8月3日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13619050.html?iref=pc_ss_date

これもどうでもいい話なので、いちいち記載したくないのだが、2017年9月に秋篠宮家の婚約内定記者会見で西暦で応答したとの件が、保守派といわれる人々に衝撃を与えている、という話…だから何ってことなんだが。

・出会いは「2012年…」 眞子さま会見に保守派が衝撃(「朝日新聞」2018年7月29日)
https://www.asahi.com/articles/ASL7T6VTSL7TUTFK01J.html?iref=pc_ss_date

政府は、各省庁がコンピューターシステム間でやりとりする日付データについて、西暦に一本化する、という。システム更新に合わせて順次改修を進め、いっぽう行政手続きで使用する書類や証明書などは元号での表記を継続する、ということらしいけど、なんとも姑息で、結局は西暦に変換されるので、意味があるのか大いに疑問。

なお鉄道について西暦でなかったことにむしろ驚きだが、日常であまり気にせず使用していることなのだろう。

・省庁データを西暦に統一へ 証明書は元号継続(「東京新聞」2018年5月22日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018052202000123.html

・首都圏鉄道も西暦化加速 外国人対応、コスト削減狙う(「東京新聞」2018年5月22日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201805/CK2018052202000260.html

東京都内での講演での発言らしいが、まさか公表時に出典の説明がない場合もあるのだろうか。「なんとなくいいでしょ…」で落ち着くものなのだろうか? いっそキラキラネームや夜露死苦などのドキュンなものも候補になる?! これを見ると日本の伝統やら権威やらが確実にキッチュ化しているのがよく分かる。

一方保守派の議論では<歴史的・伝統的には元号の制定権があり、(中略)天皇のご即位後に「ご聴許」を得た上で内閣が新元号を正式に決定、それを新天皇が「公布」(政令へのご署名・押印)し、その上で国民に発表するのが最も自然であろう>(「産経新聞」2018年7月2日)と手続きにこだわる意見があるが、同じ新聞の別な号で「私はこう予想」(「産経新聞」2018年6月25日)と4人に予想させるという、ヘンな盛り上げをしている以上は芸能ネタに近づく他ないだろう。

・小泉元首相、元号選定過程を証言 3案中、出典説明は「平成」だけ(「琉球新報」2018年6月25日)
https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-746055.html

・(平成と天皇)第6部・元号はいま:下 退位改元、消えたタブー 新元号「予想ブーム」(「朝日新聞」2018年7月29日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13614042.html?iref=pc_ss_date

・2019年に新天皇が即位か 新元号の予想が大盛り上がり!元号の決め方とみんなの予想まとめ(エキサイトまとめ)
https://www.excite.co.jp/News/matome/society/M1484535745530/#ixzz5OtBC60S0

・元号の存在感薄れる? 改元まで1年「西暦の方が便利」(「京都新聞」2018年5月1日)
https://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20180501000038

・新元号と祝日いつ確定? 「間に合わない」カレンダー業界焦り(「京都新聞」2017年12月2日)
https://www.kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20171202000042

そもそも元号とは紀元前の中国で皇帝が空間だけでなく時間も支配するもの、として特定の時代に名前をつけた。日本もそれに習って取り入れ、「一世一元」と定められたの明治以降で、これにより天皇の存在と歴史が密接につながるようになった。元号を制定するのは自由だが、それは皇室・宮内庁でのみ流通させればいい話。そもそも元号は世界からみれば身内の時間なのである。私邸内などで通用させることは結構だが、国民に押し付けて混乱させたり、不便なことを強制させるのはやめてもらいたい。
(本田一美)

・「平成」最後の夏で戦後は終わるのか/鈴木洋仁
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2018081100006.html?iref=pc_ss_date

(「京都新聞」「京都新聞」2018年5月1日Web版 )

元号の存在感薄れる(「京都新聞」「京都新聞」2018年5月1日Web版 )



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