なぜ差別されなければいけないのか!? ―川崎でレイシズムを考える
川崎市の川崎区桜本周辺は在日コリアンが多く住む地域であり、ここでは差別を許さないとりくみが昔から続いていたが、昨今の排外的意識の流れで、2015年から2016年にかけて桜本の地域を狙ったヘイトデモが続いていた。そこで地域では「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民の会」などがカウンターデモで対抗し、話題になっていた。
川崎市平和館では、昨今の差別・排外・レイシズムの高まりを受け、1月29日までミニ企画展「レイシズムにさよならを」を開催し、学生グループによるパネル展示があった。そして桜本でNPO法人を運営している青丘社の方や在日のハルモニ、企画・展示をしている学生たちを迎えて1月15日に「語り場 レイシズムにさよならを」と題しトーク・ディスカッションがおこなわれ30名以上が参加した。
参加者たちはそれぞれ自己紹介をしつつ「Facebookを見て使命感に駆られてやってきた、学校で話し合いをしていて、高校進学できない外国人がいるがそのような方を支援したいと思っている、嫌いな人とどう付き合うかということを考えたい」など多様な意見が表明された。以下に紹介するのは参加者の発言の一部。
レイシズムにさよならを―私の意見
●ヘイトデモへのカウンターをしています。生きづらさを感じています。市民運動や反原発運動をしています。いろんな場面で応急処置的に立ち会ってきました。いろんなことを学習しています。(中原区に住む男性)
●朝鮮学校の2年生です。いろんな事に不安を持っています。ヘイトスピーチの怖いところは全てを萎縮させてしまうことです。(高校生)
●北海道の出身ですが、地域で幼い頃にアイヌ人を差別していることがありました。自分の中にある差別の気持ちもあり、何とかしたいと考えています。今もいろいろあり、息子も不登校で定時制に入ろうかと考えています。(高校教員)
●早稲田大学に通っています。大学でゼミに参加しています。イスラム国について新聞で見て怖いものだと思いましたが、身近なところにも差別があるだろうと感じました。身近なところで興味をもって、人権を守っていくことが大事だと思っています。(女子学生)
●在日韓国人として生きてきました。この世に生きてきてなんとなく差別を受けてきました。この前に孫が来たら「あそこの子供とは遊ばないほうがいい」と言われたそうです。以前は「ハルモニ!」と呼んでくれた孫が、近頃スーパーで会ったらもう呼んでくれない。普通に挨拶してもらいたい。(在日のハルモニ)
●川崎ふれあい館で外国人・子ども、お年寄りの交流支援や民族差別ををなくし、共に生きる地域社会をつくろうと活動してきました。
集団的自衛権:「安全保障関連法案」が問題になっているなかで、在日1世たちの「戦争反対を言いたい」という声が地域でもありました。それに対して、それなら日本から出て行けという声がネットで出ました。70年代からいままで差別の不当性を訴えて、歴史の振り返りの中で向き合うことができたんです。地域の中で差別をなくすという意識が醸成されてきました。町内会の中でも違和感があったり、地域でもそういう意識があったのですが、それを克服してきました。
ところが昔はありえなかった在日コリアンへの公然たるヘイトスピーチが行われ、日本の社会が歪んできた。これは歴史認識の問題があると思います。あるいは生活保護や障害者に対する差別、社会的弱者を否定するような意識がでてきています。インターネットでヘイトスピーチが増加していますが、これに対応していかなければならないでしょう。また行政にはたらきかけてヘイトを許さない意識を普及・定着させていかなければならないと思います。(青丘社・三浦知人さん)
川崎市平和館は武蔵小杉駅から10分くらいの場所にある。1階には体験コーナーや大きな展示もできるスペース、会議室などあり、いろいろ活用できそうだ。2階には常設展があり、展示内容や種類などはやや寂しい印象だ。人権擁護の展示などで疑問に感じる内容がないではないが、それなりに頑張っていると思う。なにより平和交流の場としての利用を目的にしているので、開かれた場所として機能しているのだろう。このような場所で啓蒙活動をすること自体が大切で貴重なことだと思う。(本田一美)
川崎市平和館トップページ
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