オリンピックおことわり!…反五輪のイベント開催

早稲田大学でのシンポジウム「祝賀資本主義とオリンピック」。ジュールズ・ボイコフさんの講演を受けて、五輪の問題点の報告と質疑応答をおこなった

東京オリンピックまであと一年となった7月21日に「祝賀資本主義とオリンピック」というシンポジウムが早稲田大学で開催され100名以上が参加した。主催はFO研究会(代表伊藤守)。最初に総合司会の鵜飼哲さん(一橋大学教員)が「2012年頃から抗議活動をしてきた、オリンピックに反対する相互学習の場としたい」とあいさつした。その後は会場に来ていた韓国・平昌、カナダ、米国、インドネシアからの参加者が紹介されて拍手を受けて、国際的な集会であることが確認された。

次にジュールズ・ボイコフさんの講演があり、その後は山本敦久さん(成城大学)、いちむらみさこさん(反五輪の会)の報告があり、それらを受けて、一般参加者からの質問も含めて、質疑応答をおこなった。

ここではジュールズ・ボイコフさんの講演要旨をお伝えする。ジュールス・ボイコフさんはパシフィック大学教授の政治学者で、元プロサッカー選手のアスリートで、かつて米国のサッカー五輪代表選手としてバルセロナ五輪に立ったこともある。著書に『オリンピック秘史: 120年の覇権と利権』(早川書房 2018年)がある。

■ジュールズ・ボイコフさん講演

昔はオリンピック関係者や招致を望む都市の首長が、オリンピックは開催都市に何の実質的負担もかけずに多くの利益をもたらしてくれるのだと、特に批判を受けることもなく演台にあがって宣言できる時代もありました。今そのようなことはありません。

今日、オリンピックのことは、10年前にくらべても、より複雑なやりかたで議論されるようになりました。経済的負担から治安活動と取り締まりの強化、強制立ち退きと移転、その他の人権問題まで、オリンピックが開催都市に多くの問題をもたらすことが指摘されてきました。これらの問題のために、オリンピックを熱心に招致しようという国はますます少なくなっています。

それでも、オリンピックがスポーツとメディアと商業の巨大イベントであり、大企業と幅広い大衆の人気に支えられた、トップアスリートが集う祭典であることを忘れてはなりません。

保守主義はオリンピックの権力サークルを長らく支配してきました。彼らにとって政治とスポーツは交じりあうものではありませんでした。しかし、オリンピックと政治の分離など、IOCメンバーが夕べに暖炉を囲んで言い聞かせ合うおとぎ話でしかありません。

オリンピックに関するほぼすべてが政治的なのですから。行進、国旗に国歌、企業スポンサーの選定、ひどい労働条件下で生産されるアスレチック・ブランド、オリンピック開催都市の決定。そして人権について議論することも、ただちにオリンピックを政治の領域へと連れ込むのです。

1976年はオリンピックにとって転機でした。冬季オリンピックが反対運動の高まりを受けて計画変更を余儀なくされました。デンヴァーは開催が決定した後にオリンピックを拒否した最初の都市となりました。

さらにオリンピックのコストが急激に上昇しており、IOCに危機をもたらすようになっていたということで、IOCがとった政策とは資本主義とオリンピックをより強く結びつけるというものでした。

1984年のロサンゼルス・オリンピックは民間セクターが巨額を出資をして実施された最初で、初の本格的な法人資本主義オリンピックとなりました。スポンサーの企業は2億2200万ドルの収益を上げたといいますが、この数字に交通インフラや警察、治安などの隠れた公的投資は含まれません。

オリンピック過剰出費だけではなく。競技場の後が問題となっています。使い道に苦慮し負債となってしまう。はたまた公共空間の軍事化という傾向があります。人権抑圧の問題となっています。2012年のロンドンでは間違って武器見本市に来てしまったかのようでした。屋根の上にはミサイルが据え付けられ、路上のあらゆるところに軍隊が展開していました。

世界的な傾向としては、普通の労働者たちの追い出しです。北京では150万人、リオでは7万7千人が立ち退きを迫られました。そして「環境にやさしい戦略」といいながら環境破壊や汚染を引き起こしている、という虚偽宣伝の問題も起こしています。

オリンピックの開催により国家が巨大イベントを利用して悪評判を洗浄して、恐ろしい人権侵害から世間の目をそらしています。権威主義体制だけではなく民主主義を自称する政府も、人権問題からそらすためにおこなうこともあります。

IOCは公式レトリックの中で、しばしば平等、自由、反差別といった言葉を使います。しかし、人権の原則を意味ある形で組み込むことはまだ先が長いと言わざるを得ません。

オリンピックは世界の富を手にする特権的な1%のエリートたちの集団によって動かされている、機械です。しかし「ヘゲモニーは決して永遠に続かない」(スチュアート・ホール)のです。ますます多くの人びとが、オリンピックの複雑な矛盾をはらむ状態に立ち向かっているのです。

(要旨/文責:編集部)

東京オリンピックの開催を一年前に控えて反五輪の国際イベントとして、7月20日~27日まで、福島への視察や新宿アルタ前のデモを含めた多彩な催しが開催された。



五輪反対の学者ら、開催阻止を表明し「復興支援に資金を」と23日都内で記者会見を開き、五輪中止を訴えた(朝日新聞デジタル 2019年7月24日)
https://www.asahi.com/articles/ASM7R5JXNM7RUHBI035.html

2019年7月24日、東京の新宿で行われたオリンピック反対のデモ(youtubeより)

■参考
反五輪の会 https://hangorin.tumblr.com/
おことわりんく http://www.2020okotowa.link/

1