DHCヘイト発言とメディアの社会的責任と 

DHCテレビジョンへの賠償命令を伝える朝日新聞デジタル

DHCテレビジョンへの賠償命令を伝える朝日新聞デジタル

化粧品会社であるDHCの吉田嘉明会長が、自社サイトに在日朝鮮人に対する差別的な文章を掲載し、ツイッターなどで批判が相次いだ。2020年末からDHCのサイトで「ヘイト・スピーチ」というべき文章が約半年にわたって続いた。これについては不買運動や抗議があったが、新聞などの取材に答えないという創業者経営のワンマン会社ゆえの確信犯・馬耳東風状態だった。

さらにCMや折込広告などでも自説を主張しようとしていたようで、さすがに差別広告や差別の折込広告はできなかった。
<DHC会長「差別的表現だとテレビCMを拒否された」在日コリアンめぐる発言で、新聞の折込広告も>(BuzzFeed News 2021年5月14日)
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/dhc-cm

DHC会長は広告でも掲載する媒体各社の基準や決まりがあるのを知らなかったのだろうか。あるいはお金を出せばマスメディアは自由になるのかと考えていたのか。そう考えるのは無理もない、現実問題としてテレビではこの問題をまったくニュースで取り上げない状態だった。DHCはテレビでも広告を大量に打っており、いわば広告主への忖度であり、金によって封印させたかっこうだが、新聞では度々取り上げられていて、それをなんとかしたかったのだろう。

DHC またも「ヘイト声明」(毎日新聞WEB 2021年5月19日)
https://mainichi.jp/articles/20210519/k00/00m/040/095000c

https://i1.wp.com/sengonet.jp/wp-content/uploads/2021/10/heito10-30-1.jpg?resize=640%2C420&ssl=1

化粧品会社DHCの吉田嘉明会長のHPの文書
https://www.tokyo-np.co.jp/article/97800


このような明確な差別表現に対して、社会はどのように対抗すべきなのだろうか。いわゆるヘイトスピーチ解消法(2016年)が制定されて5年たつが、上記のような行為が野放しになっている状態をどう考えるのか、そんなことを考えながら2021年7月21日の「ビジネスにおけるヘイトスピーチと企業の責任」のZOOMウェビナーに参加した。主催は認定NPO法人 ヒューマンライツ・ナウ(ビジネスと人権プロジェクト)である。

登壇者 は籏智広太氏(BuzzFeed Japan 記者)、宮下萌氏 (反差別国際運動 特別研究員)、梁英聖氏(特定非営利活動法人反レイシズム情報センター代表)で、投資家からのコメントもあった。ここでは気になった方の報告を一部紹介する。

■籏智広太氏
メディアはヘイトとどう向き合ったのかと、DHCの事案をどう報じたのかと問いかけて事例を紹介。NHKが「おはよう日本」で報道し、それについてBuzzFeed で取り上げた例も報告した。
(BuzzFeed News 2021年4月9日付)
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/dhc-nhk
(東京新聞WEB 2021年4月13日付)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/97800

そしてDHCはCMや折込広告を入れようとして拒否されたが、差別表現のないものはそのまま出ている。メディアは社会的にアジェンダセッティングをする力がある。問題を掘り下げてしっかりと報じるべきである。

在日朝鮮人が、サイト「保守速報」の差別的記事で名誉を毀損されたとする裁判では、サイトの側が敗訴しそれによりエプソンが広告の出稿を停止した。またYahooのガイドラインの改定され、ポータルサイトやSNSの責任も問題となった。
https://www.asahi.com/articles/ASLDD65DWLDDUTIL05P.html

差別的表現がメディアによって再生産している。ヘイトの拡散にもなるコメント欄の問題もある。メディアは考えなくてはならない。

■梁英聖氏(反レイシズムARIC代表)

東京五輪の関係で東急系のホテルで日本人専用と外国人専用を分けたことがあり批判された。

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60ea8a4ce4b0cb62748343c2

トランスジェンダーの杉山文野さんをJOCは「女性理事」と発表した。またDHCの「サントリーは朝鮮系」という差別文書が物議をかもした。サントリーはキチンと反論すべきだがウヤムヤとなっている。

また企業の姿勢についても差別を許さないという明確な意思を表明するところは少ない。たとえばテニスプレイヤーの大阪なおみが黒人への人種差別や警察による暴力に立ち向かう姿勢・発言などで、スポンサーやパートナー企業の反応をみると、踏み込んで言及しているのはヨネックスくらいだ。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f6da227c5b64deddeebe031

日本型企業だと、表現が社会的に問題視されても差別かどうかの判断はしないので再発防止はとられないのが問題だ。オリンピックの森喜朗会長の発言のように騒がれて謝罪・解任などで責任をとる、という形で主体の責任の所在や問題が明確化しない。

米国のスターバックスでは差別を防ぐ従業員研修がなされている。結果として企業のイメージアップにつながるので効果もある。日本はヘイトスピーチや差別防止のとりくみに国連の「人種差別撤廃条約」を活用すべきだ。
(文責:編集部)

このウェビナーを聞いた後に、DHCの「ニュース女子」による名誉毀損裁判の判決があった。結果はDHCの敗訴で判決は、東京メトロポリタンテレビジョン(MX)で2017年に放送された2番組について、「暴力や犯罪行為もいとわない者らによる反対運動を、辛さんが経済的に支援をし、あおっている」という内容だったと認定した。

「ニュース女子」制作会社に賠償命令 基地反対めぐり名誉毀損認定(朝日デジタル 2021年9月1日)
https://www.asahi.com/articles/ASP9161ZKP91UTIL02K.html

沖縄の米軍基地反対運動を取り上げたテレビ番組「ニュース女子」で名誉を傷つけられたとして、人権団体「のりこえねっと」共同代表・辛淑玉(シンスゴ)さんが、番組を制作したDHCテレビジョン(東京)などに1100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が1日、東京地裁(大嶋洋志裁判長)であった。判決はDHC側による名誉毀損(きそん)を認め、550万円の支払いとウェブサイトへの謝罪文の掲載を命じた。

上記のように明確にニュース報道を騙った「ニュース女子」が明確に、沖縄の辺野古反基地運動や在日朝鮮人を悪者として描く「差別・偏見」の放送であったことを証明したのだ。

DHCテレビジョンは裁かれたが、親会社のDHCの社会的責任が問われなければならない。なにしろ批判に晒されても悪びれず核心犯としてやっていて、裁判中でも平気でヘイト文書をアップすることをおこなっているのだから。冒頭でも記したようにDHCの吉田嘉明会長(DHCテレビジョンの代表でもある)は会社のホームページで堂々とヘイトスピーチをタレ流し、大量に広告を出稿していることからマスコミ、特にテレビからの批判報道はなかったことをいいことに核心犯として差別・誹謗中傷の発言を続けてきた。それを放置することによりマスコミや日本社会はまさにヘイトの流れに棹さすことになった。

「私が本当に許せないのは(在特会ではなく)このような事態が許されているこの社会の規律と良識です」と語るのは京都朝鮮第一初級学校でヘイト攻撃(2009年)を受けた保護者の言葉だ(師岡康子『ヘイト・スピーチとは何か』岩波新書 2013年)。どうすればいいのだろうか…。

おりしも有名人DaiGoのユーチューブでの発言が問題になっていた。彼は「ホームレスの命はどうでもいい」や生活保護よりも猫を救え等の「優生思想」、差別・選別の発言をしていた。これについてネットでも批判がひろがり、生活困窮者支援をおこなっている4団体は、この問題で「緊急声明」(8月14日)を出したが、それは「私たちは、私たちの社会を守るため、DaiGo氏の一連の差別扇動を許さないという姿勢を、より明確に社会全体で示す必要がある」と認識したからだ。

これは在日コリアンへのヘイト発言にも当てはまる。社会を壊してしまう「差別・排外主義」を見逃さず、メディアに対しても、DHCにも批判を集中しよう。

(本田一美)

メンタリストDaiGo氏のYouTubeにおけるヘイト発言を受けた緊急声明
https://tsukuroi.tokyo/2021/08/14/1600/

メンタリストDaiGo“差別”発言「命は平等っていうけど優劣はある」
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202108130000008.html

DaiGo氏の差別発言を批判する人々にも感じる、歪んだ生存権の理解とは
https://diamond.jp/articles/-/280582