八重岳・自衛隊演習阻止と名護市長選

3月12日(土)に「大軍拡と基地強化にNO!アクション2021」主催による防衛省へのデモと集会が開かれた。お昼に市ヶ谷駅前の 外濠公園を出発し防衛省前で申し入れをおこない、周辺をデモ行進した。

「大軍拡と改憲策動に抗議し、ウクライナ問題の平和的解決の外交努力を要請する」申し入れ書は、2022年度防衛予算について、軍事予算を6兆円台となり「GDP1%以内」を突破する路線を批判し、「台湾有事」を奇貨として日米軍事一体化、対中国軍事包囲網体制という流れは、平和憲法を無視する暴挙であるとし、「宇宙・サイバー・電磁波領域」という個人監視・統制強化と軍事化を憂慮する。

そして2022年度軍事予算の白紙撤回と抜本的見直し、総額削減、並びに現在のウクライナ危機に対して、平和憲法の理念に基づいた敢然たる外交努力を強く要求した。(要旨)

その後は文京区民センターに場所を移して集会を行った。木元茂夫さん(すべての基地にNO!をファイト神奈川)による「南西諸島軍拡の現状」のDVD上映と解説。原田みき子さん(本部町島ぐるみ会事務局)によるお話があり、その後は各運動団体によるアピールが続いた。ここでは原田さんの話を紹介しよう。


大軍拡と基地強化にNO!防衛省デモ&集会

防衛省前で申し入れをおこなった

防衛省前で申し入れをおこなった

原田みき子さん
「八重岳・電子戦演習阻止、国に翻弄された名護市長選、そしてこれから…」

●沖縄本島 本部・八重岳で自衛隊、電子戦訓練を開始。市民座り込み

沖縄本島の本部町八重岳は、1753名の町民の生命が奪われた沖縄戦の激戦地だった。名護三中の中学生が日本兵に命じられ前線に立たされ死闘を強いられた。名護高女の女生徒は野戦病院で兵隊の看護にあたった。ここを訪ねた時たくさんの木の葉、蝶が舞い上がって、不思議な感にとらわれた。

昨年(2021年)11月11日に琉球新報社から「八重岳で自衛隊が電子戦の訓練をするが…」と電話取材を受けた。すぐ「再び捨て石か」とつぶやいてしまった。連日、議員っや本部島ぐるみのメンバーが役場へ陳情に行ったが既に許可を出してしまった後だった。会議のメンバーは連日安和と塩川で辺野古に運ばれる土砂の搬出を阻止するために、ダンプカーに向かって「牛歩戦術」を続けており、人が足りない。困っているときに「集まれ辺野古」グループが「やろう」と手を差しのべてくれた。

私たちは「少年少女探偵団」を結成。11月19日から中城湾で監視活動を始め自衛隊車両を追跡した。11月24日には八重岳周辺の各ポイントでチェック。私たちの偵察する民間車が登ってきたが、36人の面々と横断幕、プラカードにおそれをなしたのか、25日にはとうとう現れなかった。

26日に自衛隊は機動隊と本部署員に守られて山を登ってきたが、探偵団は座り込んでマイクリレーで抗議した。目取真俊さんが「僕の父はこの八重岳で死闘を命じられた。たくさんの中学生が犠牲になった。君たちの先輩もなくなっている。まず手を合わせたらどうですか」と自衛隊員に語った。

本部町では桜を植えて平和を発信する公園にしている。日本一早く咲く桜は町民の誇りでもあり観光資源でもある。アンテナを積んだトラックは5メートルの高さもあり、かかった枝を折ってしまった。すると私たちを排除にきていた警官が、自衛隊のドライバーに免許証の提示を求め「器物損壊」の罪状で事件にした。何しろこの桜は2千万縁を募り守っている桜である。本部署も見逃せなかった。その日の夜に本部町に自衛隊から明日以降の訓練を中止すると連絡があったという。

見逃してはならないのは自衛隊が民間施設、民間港を使った軍事演習の常態化を図っているということだ。11月22日、陸上自衛隊第15旅団が国頭村の辺土名漁港と安田漁港でレーダーを使った洋上監視訓練を行った事実からも明白である。何の連絡もなくなし崩し的に行われている、私たちは、今後このような自衛隊の動きに敏感かつ迅速に対応していかなくてはならないだろう。

●2022年1月名護市長選の敗因

「またしても国にやられてしまった」これが実感である。前首相の菅氏が2回も名護入りし、企業廻りを徹底した。企業は辺野古の工事に参入しているところが多い。私は2002年の選挙以来、全ての選挙に関わってきたが、常に各企業が集票活動を展開、期日前に投票させる実態がある。今回も4割を越えたが、この高さも恒例となってしまった。

石垣市長選でも同様のことが言える。国の介入で国寄りの首長をはじめ保守系議員企業が恥も外聞もない集票活動を展開する。「飲ませ食わせ」が当たり前だったが、さすがにコロナ禍の今回は表立ってはできないので、その分深くもぐった感がある。辺野古の工事の元請「大成建設」には前首相菅氏の3男が勤めている。菅氏は今回の名護市町選で「沖縄は私のライフワーク」と大見得を切った。私は「沖縄で稼ぐ」と理解した。

稼いているのは安倍晋三氏が多いだろう。私たちが塩川の港で目撃している辺野古埋立用土砂は「琉球セメント」という地元の会社が受注しているが、実はこの会社、山口県の宇部興産がバックにいる。那覇市の琉球セメント本社に宇部興産が同居している。「持ち株8割」「役員も宇部から来る」という実態だったが、さすがに株は分散されたようだ。宇部興産の元会長は岸信介と中学の同級生で、安倍の2回の首相誕生に大きく貢献したと言われる。

つまり辺野古の工事に使われている埋立て土砂の利権は宇部興産を通して安倍に行く。だから辺野古の工事が止まらないのではないかと私はにらんでいる。安倍・菅2代の首相の利権がからんでいて、辺野古は甘い蜜なのではないか。

さて、負けた反省点はおおきく次の2点があると思う。
・コロナ禍と言いながら市民運動が足らなかった。相手側は辺野古の工事をはじめ現職の立場を利用してかなり露骨なアメ作戦を続けていたのに、市民側は集会や学習会を控え出遅れてしまった。その結果「再編交付金がなくても事業ができた稲嶺市政の事実」を伝えきれなかった(2010年1月稲嶺さんが当選、すると政府は2月に再編交付金を切った。しかし、それまでの13事業のうち不必要なものを除いて13事業ができた)。

・国が仕切る選挙なのに、市民側の組織が脆弱だった。市民のエネルギーを引き出し、盛り上げていく努力が足りなかった。事務所が各政党、運動団体に分かれ横の連絡も密ではなかった。

●これから…

毎週日曜日の夕方、名護市の一番大きな交差点でロシアのウクライナ侵攻に抗議する「反戦スタンディング」が始まった。嬉しいのは高校生が関心を持って質問してくれること。通行する車からの「賛同」のクラクションが多い。国に翻弄されない強い民意を作っていきたい。毎日の現場の活動が基本であることは言うまでもない。

(資料などによる再構成・文責:編集部)

自衛隊、電子戦訓練を開始 座り込み市民ら排除も 本部・八重岳  (「琉球新報デジタル」2021年11月26日)

自衛隊、電子戦訓練を開始 座り込み市民ら排除も 本部・八重岳 
(「琉球新報デジタル」2021年11月26日)


自衛隊、電子戦訓練を開始 座り込み市民ら排除も 本部・八重岳 
(「琉球新報デジタル」2021年11月26日)
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