千葉県「多様性」条例を読み解く―ジェンダー平等で、安心して暮らせる社会を

集会には43名が参加した

集会には43名が参加した

2月11日に「建国記念の日」反対!2.11東葛集会が開かれ、松戸市民会館の101会議室で14時半より「多様性尊重で性差別はなくなるか―千葉県多様性尊重条例から考える」と題して、船橋邦子さん(元和光大学教授、NPO法人女性と子どものスペース・ニコ代表)が講演した。主催は実行委員会。

はじめに主催者より、日の丸・君が代の押し付けに反対する動き、高校などで教員、親・市民が集まって抵抗するたたかいがあり、それがきっかけで建国記念の日に反対する集会を持っていこうということで続いていると説明があった。

■船橋邦子さん

フェミニズムの運動は性差別をなくすたたかいです。男性の権利を奪うものではありません。「性」による区別、制限、排除をすることが差別であり、例えば地域による線引で被差別部落があり、出自や本人の責任ではないもので区別・排除することが差別です。

フェミニズムは性による差別や抑圧を考えて、性差別が構造的に再生産されてゆく社会を変えるための運動です。それを理解してほしいです。

日本の都道府県で唯一、男女共同参画の理念について定めた条例を持たなかった千葉県で、2023年12月の県議会で「千葉県多様性が尊重され誰もが活躍できる社会の形成の推進に関する条例」が成立し、2024年1月1日から施行されました。

千葉県の方針は「性自認などを理由とする差別を禁じたり、罰則を科したりする規定は盛り込まない(中略)社会を混乱させないよう留意する」(『朝日新聞』千葉版 2023.7.25)というものです。

記者会見する千葉県の熊谷知事

記者会見する千葉県の熊谷知事(首都圏 NEWS WEBより)


https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20231219/1000100203.html

日本は女性差別解消について新自由主義政策のもとに進められてきました。千葉県の条例はその類型だと思います。(条例は千葉県HPに掲載)

https://www.pref.chiba.lg.jp/seisaku/tayouseisoncho/joureinaiyou.html

「千葉県多様性が尊重され誰もが活躍できる社会の形成の推進に関する条例」

条例のまえがきで「多様性がもたらす活力や創造性が重要」と人権や差別の問題に目を向けずに社会の活力を強調しています。逆転した発想なんです。また「誰もが活躍できる社会の形成」を目的としていますが、個人の責任・努力にまかせる新自由主義的な思考です。人が支え合う社会。それが大事なんです。活躍しなくても誰もが人としての尊厳が侵されることなく安心して暮らせる社会がいいんです。

千葉県では男女共同参画課がありましたが、「多様性社会推進課」のなかに組み込まれて男女共同参画室となり、課から室に格下げとなります。実は2001年の千葉県知事となった堂本暁子さんの時に男女共同参画社会基本法の制定が試みられて、進んだ条例の案があったのですが、性教育やジェンダー教育へのバックラッシュがあり、多数派の自民党議員の賛成を得られずに成立しませんでした。

今回の「多様性条例」には、具体的な方策や現実にある性別による差別の文言がありません。山梨県の「多様性を認め合う共生社会づくり条例」のような「差別取り扱い禁止」の明記が必要です。

性差別は戦争とつながっています。家父長制の相手を征服して勝つことがいいこととされてきました。近代の価値は生産性、効率化を優先する社会です。

女は欠陥商品(生む機械)とされてきました。二級市民と位置づけられていました。強い国が弱い国を支配する社会です。第2次世界大戦の反省の元に人権憲章が生まれ、これからの社会は 1人1人の命をまず大事にするっていうところから人権の確立運動が始まっていくわけです。

「お金のために人を殺さない」。私も60年代後半の大学闘争などでたたかいましたが、今も変わっていない。民主党政権の時のスローガンの「コンクリートから人へ」なんていうのはいつか消えてしまって、福島の被災地へ行ったらもう本当に必要ない土手までコンクリートて埋めてます。で、結局は誰が儲けてるか土建屋さんなんですよね。未だにこれは今回の自民党裏金問題にもあるように変わらないです。

やっぱりまずは、誰をもう取り取り残さないていうイタリアのその災害政策はですね。まさに「tkb48」。Tはトイレ、Kはキチン、Bはベッド、こういうものを48時間以内に揃える。誰も犠牲に出さない、関連死を出さない、そういう政策をイタリアような災害対策を内閣府に要望書を書きました。その後に能登半島地震が起きて問題点があきらかになりました。

世界女性会議の後に、日本会議や右派の宗教勢力のバックラッシュがありました。力があれ対抗できたと考えます。

(要旨:文責編集部)