「日の丸・君が代」強制は人権侵害である

シンポジウムで語る。左から寺中さん、中田さん、岡田さん

シンポジウムで左から寺中さん、中田さん、岡田さん

コロナウイルス対策で集会やイベントの中止・自粛が拡がり、安倍首相が27日に突然「全国小中高一斉休校」を要請するなか、3月1日(日)日比谷図書文化館千代田コンベンションホールにて、「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議 3・1発足集会が開催された。開催も不安視されたが、マスク・消毒などで予防の徹底を準備して迎え、150名が参加した。

学校現場での「日の丸掲揚、君が代斉唱」に従わない教職員らに対する懲戒処分を巡り、2019年3月に国際労働機関(ILO)が初めて是正を求める勧告を出した。その後は元教員や教員労組が文科省へ交渉したが反応が薄いため、市民運動として力を集中させることになったという。

・「日の丸・君が代」教員らに強制 ILO、政府に是正勧告(「東京新聞」2019年3月30日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201903/CK2019033002000143.html

集会案内を以下に引用する。

「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱せよ!」などの「職務命令」に従わなかった教職員は戒告・減給・停職処分を受けます。
 また「起立斉唱は儀礼的所作であり、思想良心の自由の侵害にはならない」という司法判断が繰り返されています。
 起立斉唱強制は子どもにも及んでいます。
 こうした状況に対して2019年春、ILO(国際労働機関)とユネスコから日本政府に、「日の丸・君が代」の強制を是正するように、という勧告が出されました。
 画期的なことです。
 しかし、文科省は、(起立斉唱は)「適切に行われている」として、勧告を無視し、実施に動こうとしません。
 都教委担当部署は話し合いに出てこようともしません。
 私たちはこうした事態を看過できず、勧告実現のため「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議を立ち上げることにしました。
 教育の未来のために、勧告実現に一緒に取り組みましょう。

集会は、一部のシンポジウムに参加予定だったが事情により不参加となった中原道子さん(VAWWRAC共同代表)、志田陽子さん(武蔵野美術大学・憲法学)のメッセージをはじめに紹介した。

メッセージを受けて寺中誠さん(東京経済大学・国際人権法)の司会で、中田康彦さん(一橋大学・教育学)、岡田正則さん(呼びかけ人・早稲田大学)に話を聞く、鼎談スタイルでシンポジウムは進行した。

中田さん:ILO勧告の文章についてはバランスをとったもの、という印象だ。市民社会から遠ざけようとされているものを、市民の自由として守られなければならない。

岡田さん:ナショナリズムを煽る昨今の状況を見直し、自己の意見表明は社会に対する義務であり、社会をつくる出発点でもある。これまで闘ってきた教員たちに敬意を表して議論したい。

寺中さん:今の日本社会で市民的不服従を権利として認めさせてゆくこと。実態として「日の丸・君が代」の強制をしていること改善できるのか。

まとめ的には、上の世代が若い世代や周囲に向け人権の国際動向も伝えて、どう対話できるのかが問われている、と今後の展望を語った。

その後は会場参加の呼びかけ人を紹介し、二部の発言リレーへ。
布施恵輔さん(全労連・国際局長)がグローバル資本主義を批判してILOで労働者代表として参加してきたことを語った。
前田朗さん(東京造形大学・刑事人権論)は国連人権委員会での活動を説明し、マスコミへのはたらきかけ、メディア対策を訴えた。
朴金優綺さん(在日本人朝鮮人人権協会)は日本政府が戦後から在日朝鮮人に対して差別し続けて来たこと、今も高校無償化制度から朝鮮学校を排除・差別している現状を批判した。
大能清子さん(「君が代」5次訴訟原告予定)は学校休校と式典簡素化のなかで残る「君が代」を指摘し、戒告処分撤回を目指して、ユネスコ勧告を活用したい、と述べた。

最後に渡辺厚子さんから「ILO/ユネスコ勧告を遵守し、国旗・国歌(日の丸・君が代)強制の中止を日本政府に求める声明」が読み上げられ、拍手で確認された。行動提起として、文科省交渉・都教委交渉・国連への人権状況のレポート提出の三点を挙げ、協力を訴えた。

(本田一美)