野党共闘で新しい政治を…学術会議任命拒否を解明する

国会答弁する菅首相(FNNプライムオンラよりhttps://www.youtube.com)  

学術会議任命拒否問題で国会答弁する菅首相(FNNプライムオンランより https://www.youtube.com)  

4月4日午後、足立区生涯学習センターにて第12回憲法カフェが開かれ「壊憲政治を打破して立憲政治を取り戻そう―学術会議任命拒否問題を素材にして―」と題する竹森正孝さんの講演があった。主催は千住九条の会。

竹森さんは、憲法、政治学を専攻。岐阜大学、岐阜市立女子短大、現在は千住介護福祉専門学校校長。

■竹森正孝さんの講演

2020年の9月末に学術会議推薦から会員に推薦された105人のなかで6人が任命拒否された。理由が説明されないために安保法制、辺野古新基地建設、共謀罪などに反対する研究者の排除を狙ったものとの疑念がある。あらためてこの問題を考えてみたい。

学術会議とはどのような「政府機関」なのか

日本学術会議の役割としては「政府に対する政策提言、国際的な研究交流活動、科学者ネットワークの構築、科学の役割についての世論啓発」などがあります。また政策提言として「答申、勧告、声明、報告、要望、提言、会長談話、幹事会声明」などあり、答申は2008年以降は出ていません。これは政府の諮問がないからです。勧告は2010年以降ありません。ただし省庁などからの審議依頼への回答は毎年なされています。

学術会議の組織は会員210名で、それを支える連携会員は約2千人です。総会とその下の幹事会と3つの部と委員会(機能別、分野別、課題別に49の委員会)があります。会長と4人の副会長、そして事務局があります。

3つの部はそれぞれ70人で第一部は人文・社会系(現在6人の欠員)で、第二部は生命科学、第三部は理学・工学です。幹事会は会長、副会長、部長、副部長および幹事(各二名)で構成しています。機能別、分野別、課題別に委員会があり、分科会を設置しています。

会員は、6年任期で3年ごとに半数を選出し再任はありません。学術会議の選考委員会が選考して首相が任命するというものです。

会員選出方法は創成期から1984年は登録している学術団体による会員選挙で行っていました。その後は2005年まで推薦となり、2005年以降は選考委員会による推薦となっています。

日本学術会議の成り立ち

戦前は「学問の自由」への攻撃があり、滝川事件、美濃部・天皇機関説事件、津田左右吉の事件がありました。

学問の自由とは具体的には「研究成果の発表の自由、教授・教育の自由、大学の自治」があります。ヨーロッパでは大学・学問の自律的コミュニティが政治権力・宗教的権威から自治・自由を護る、というで伝統的意識があります。

日本では、大学が官製(国立大学)として始まり、追って私学・公立へと拡大していきました。学問が国策に呼応することが当たり前で、その問題点に無自覚です。そして学問の戦争目的の動員も行われました。知られているものに「原爆開発」や731部隊の人体実験などがあります。人文社会科学分野でも国策追随、総動員態勢推進のイデオロギーを担うものが趨勢だったのです。それが「学術研究会議」(1920年)です。

そして、戦前・戦中の反省にたって日本学術会議が設置されました。これまで科学者の態度を強く反省して(「発足にあたっての決意表明」1949 年)創設されたのです。それから二度にわたって軍事研究を否定しました。それが「戦争目的の研究には従わない決意の表明」(1950 年4月)「軍事目的の研究を行わない声明」(1967年10月)です。また、防衛整備庁の「安全保障技術研究推進制度」(2015年発足)をめぐって「軍事的安全保障研究に関する声明」(2017年3月)を発しました。

学問の自由・大学の自治の変質

大学ではトップマネジメントの名の下に学部自治、教授会の否定が進みました。人事権を学長が掌握しました。学長選挙制を否認して、学部長を学長の任命にしたり、国立大学の運営費交付金を削減して競争的資金として大学と教員が支配されるようになりました。学生は消費者という位置づけで大学の自治は消滅していきました。

学術会議会員の任命拒否とその背景

かつては首相による任命行為は形式であり、拒否は想定されてはいません。安倍政権下で「協議」や「欠員補充人事不承認」という事態が発生したのです。菅政権での任命拒否は説明されず、説明してもその理由は次々と変化しています。また、ネット上や一部マスコミ・保守論壇では誤った情報によるデマの学術会議攻撃(税金の無駄遣い、既得権益等)や否認の言説が流されています。これはいままでの安倍・菅政治における反知性主義に対応しています。

政権・支配層は「改革プラン」を出せという問題のすり替えを行ったり、自民党の検討PTが「日本学術会議の改革に向けた提言」や科学技術・イノベーション基本計画(21年3月)で国際競争力の強化、「大学ファンド」創設(21年3月)などを通じて、学問・大学機関が政財界の「成長戦略」にのまるごと飲み込まるおそれがあります。

市民と野党の共闘の前進で政治の転換を

疑問・批判に応えない・検証させない政治が続いています。日本の遅れてきた新自由主義による矛盾が出現しています。イデオロギー支配の必要から教育、文化、メディアの統制に進み、市民社会の自律制や地方自治を抑制してきました。閉塞状況を打ち破るには市民と野党の共闘で政治と憲法を復権するしかありません。1970年代の革新自治体が成立していく経験では、1+1が2以上になるという連帯の運動がありました。それらを進化させる必要があります。草の根の運動で地域共闘を創出させ、政権交代を実現させましょう。
(文責:編集部)

「日本学術会議新会員任命拒否に抗議・撤回をもとめる集会」が10月12日に行われた。緊急の呼びかけにもかかわらず、100人以上が官邸前に集まり抗議の声をあげた。 (http://www.zenkyo.biz 全教WEBより)

「日本学術会議新会員任命拒否に抗議・撤回をもとめる集会」が10月12日に行われた。緊急の呼びかけにもかかわらず、100人以上が官邸前に集まり抗議の声をあげた。
(http://www.zenkyo.biz 全教WEBより)

集会チラシ

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