「新しい資本主義」という錯誤―その限界を見据えて

2022年1月8日に市川教育会館にて的場昭弘さん(神奈川大学)の講演会が、「徹底批判!!『新しい資本主義』と題して開かれた。主催は「戦争はいやだ! 市川市民の会」。

はじめに主催者よりあいさつがあり、岸田首相が主張する「新しい資本主義」は安倍・菅政権の違いは見えない、ただ資本主義って何だ、と考えさせる機会となったことはいい、資本論などを読み返すことになるだろうか、と2002年の幕開けとしての意義を語った。

「新しい資本主義?――資本主義とは何か。」的場昭弘

日本の経済はよくない、どこに問題があるのかそれを知るのが重要だ。重要がない、雇用がない、失業者が増える、どう解決するのでしょうか。

海外に目を向けると米国など物価が高い、マックのハンバーグが日本の倍の価格だ。日本は30年間所得が上がっていない。アベノミクスは財政支出、金融緩和、構造改革などでマネー供給を増大させて成長させる戦略でした。

企業は投資を控えて内部留保を進めた。投資先がないからだ。結局は海外へ投資することになりました。岸田首相の「新しい資本主義」は科学立国を目指して利益を確保するという。だが現在は後進資本主義国に追い上げられて、先進国の優位性が保てません。

◎資本主義の定義

資本主義は資本が主役となるとなることで、利潤追求が優先となり資本を増やすための投資を進めます。

資本は商品でもある貨幣から資本に転化します。そして労働力が商品となります。農村から追放されて労働力を売るしかない労働者が生まれます。マルクスは資本が「頭からつま先まで、あらゆる毛穴という毛穴から血と脂をたらしながらうまれるといえよう」(『超訳資本論』祥伝社)といいいます。

ゾンバルトは高度な資本主義の条件として企業家による意思決定を重視しています。経済的合理性、進歩という信仰、楽観主義、義務感、超過利潤への願望という資本家の精神が重要だと。

◎資本主義の現在

グローバリゼーションにより先進資本主義国は後進国に過剰生産・過剰投資を吸収させます。他国に対しては購買力をつかなければなりません。自国の産業が空洞化して工場もなくなります。後進国は賃金が上がり中間層が増えます。中国などでは中間層が増えて、他方で先進国では中間層が減少します。先進国と逆になります。後進地域が発展すると競争相手となり、利潤率・利子率も下がります。

再度、資本主義は停滞に向かいます。今や金融やサービス、ソフトウェアにより利益を出すようになります。日本はその分野が遅れていました。岸田首相の「新しい資本主義」はそれを科学技術で克服しようとしている。原丈人の『新しい資本主義・日本の可能性』(PHP新書 2009年)では公益資本主義を提唱していて、楽観的で、それに相似しています。市場が無限にあり、低賃金労働者がいるという前提です。今は収奪するものが限界にきています。国家とのつながりがより強くなる可能性や権威主義的になりどういう経済体制を選ぶのかが問われています。
(文責;編集部)