安保関連3文書は、憲法の「平和的生存権」を壊す

報告する伊波洋一議員

あいさつする伊波洋一議員

敵基地攻撃能力保有の閣議決定に反対する市民集会

1月31日、衆院第1議員会館において敵基地攻撃能力保有を含めた「安保3文書」の閣議決定に反対する集会がひらかれた。改憲問題対策法律家6団体連絡会と「9条改憲NO!全国市民アクション」の共催。

はじめに、改憲問題法律家6団体連絡会・自由法曹団団長の岩田研二郎さんが「テレビ・新聞では防衛増税是非の方向で報道されている。問題は敵基地攻撃に使用されるトマホークを大量購入の軍備拡大が問われるべきです。私たちが運動を強めて、報道や世論を変えていこう。」とあいさつ。

さらに立憲民主党:近藤昭一、立憲民主党:杉尾秀哉、日本共産党:山添拓、社会民主党:福島みずほ、沖縄の風:伊波洋一、れいわ新選組:くしぶち万里の野党各党の議員あいさつがあった。

伊波洋一議員は「閣議決定は台湾防衛を越えた日中有事である。文書は戦争を始めるという意志である。日本国中を戦場にするつもりだ。米国は2015年の新ガイドラインで日本を守らない、米軍は全日本列島がミサイルの標的になっているのでグァムなどに避難して闘う。米国は中日の経済関係を断てという、そして戦争を仕向ける」と訴えた。

基調講演として以下の3氏が報告した。

ジャーナリストの布施祐仁さんは安保3文書は公然と「対米追随」を宣言したもので、米国との完全一体化したものである。米国は中国との覇権争いに勝利することを最優先課題にし、同盟国を活用する。台湾有事を想定して沖縄の諸島のミサイル基地化を計画している。米国との連携の下での日本の反撃能力の運用むけて米軍の指揮統制下になる、と指摘。南西諸島では、住民の不安が増加している、という。「日本は米国と中国の緊張を和らげ、気候変動やコロナ対策など協力できる地球的課題への協力関係を促す仲介外交をすべきだ」と強調した。

シンクタンク「新外交イニシアティブ」(ND)代表・弁護士の猿田佐世さんは、戦争抑止は軍事力では防げない、なにかのきっかけで紛争が起きる。具体的には台湾独立を指示しなければ問題は起きない。事前協議なしに在日米軍基地を使わせない世論をつくらないといけない。「東南アジア諸国連合(ASEAN)はバランス外交をしている。米中対立の緩和を」と呼びかけた。

ここでは永山茂樹さんの報告を紹介する。

■東海大学教授(憲法学)の永山茂樹さん

「安保3文書」の危険性はなかなかわかってもらえない。切り口としては、どういった生活の影響があるのか伝えたい。

(1)国民の経済的負担の問題、(2)戦争する国での自由や権利の問題、(3)平和的生存権の問題などを考えたい。

(1)経済的負担について
税金か国債かということではなく、いずれにせよ経済生活が破壊されるということを多くの人伝えたい。軍拡は憲法9条2項からの乖離で、理由のないGDP2%であり。NATOに合わせただけなら、今後も合理性がないだろう。税金は必要だと思ったものについて集めるので、合理性のない歳入・再出は国家設立の目的違反であろう。

赤字国債を禁止している財政法4条はどのような意味があるのか、財政面から憲法9条を保障するもので、軍事目的の国債は発行できない。また、復興税の転用は必然的に福島などの復興は後回しにされる。消費税を上げる案は、逆進税であり、所得の少ない人から多く取るということは私たちの生活破壊と同じである。

(2)戦争する国での自由や権利の問題は、
一人ひとりの自由や権利を制限することが書いてあります。飛行場・港湾などの施設を軍事利用するために、地方自治権などを制限するということ、沖縄に当てはめてみれば恐ろしいことだ。有事の際の対応も見据えた平素からの空港・港湾の利活用するルールづくりである。

民間企業の経済活動に対する国家の介入を強めてゆく。経済安保法にもあったが、非軍事企業の事業もまた人権のひとつでだと思う。

学術会議にみられるように軍事的に学術を利用活用するため介入してゆくこともある。

子どもたちへ自衛隊・米軍が生活を守ってくれるという教育がおこなわれる。このことは教育の国家からの自由が損なわれる。

(3)国家安全保障戦略で安保は語るが、
「憲法」の語は1つしか登場しない。日本国憲法前文には、「平和的生存権」の言及がある。イラク派遣訴訟名古屋判決の中では人権のベースになっているのが「平和的生存権」であると書かれている。

ミサイル基地を設けるということは、必然的に周辺に暮らす人々の「平和的生存権」を侵すことになる。長沼ミサイル訴訟の札幌地裁判決(1973年)では「相手国の攻撃の第一目標になるものと認められるから、原告らの平和的生存権は侵害される危険がある」と認めた。この論点を顧みることはなかった。また、憲法前文の「平和的生存権」は自国民のみならず全世界の「平和的生存権」を保障するもので、敵基地の攻撃の周辺の人々への「平和的生存権」を侵すことになる。安保3文書では「相手国の領域における反撃能力の行使」ということをいっていて周辺住民への被害は織り込んでいる。

安保3文書は9条を破壊するにとどまらず、私たち、あるいは全世界の人々の生活・自由・権利を破壊するものだ。多くの人にその危険性を伝えたい。

(文責編集部)