非暴力直接行動を創造する。活動家アンジー・ゼルターを紹介します

アンジー・ゼルタ―さん

アンジー・ゼルタ―さん(クラウド・ファンディングサイトより)

非暴力に徹する活動家アンジー・ゼルター(写真中央)。インドネシアに輸出される戦闘機を「非武器化」、 原子力潜水艦の実験施設を「非武装化」、この直接行動は共に無罪となる。ライト・ライブリフッド賞他、数々の賞に輝く女性が、自らの半生を描いた記録『Activism for Life』。 2021年に出版したこの翻訳出版の計画が進行している。この本についての集会も企画されている(末尾とカレンダー参照)。

英語版『Activism for Life』表紙 (ペーパーバック 2021/3/9)

英語版『Activism for Life』表紙 (ペーパーバック 2021/3/9)

著者アンジー・ゼルターの紹介

法律は基本的道義が基礎にあり、それによって正当性を獲得する。だからこそ、 どの政府や国家の指導者も法律を使う。それはよりよい世界を目指す私たちの 闘争にも、とても役に立つように見えた。(本書より)

1972年にレディング大学を卒業したアンジーは、 夫と共にカメルーンに移住。そこで 植民地主義を地でいくような現地在住欧州人の地元民蔑視の態度を目にして衝撃を受けます。

「アフリカの人々を助けるため」に現地に向かったアンジーでしたが、「...貧窮国を 本当に『援助したい』ならば、諸悪の根源である祖国英国に帰れ」と言われ、「低開発とい う現実の根底にある構造的・世界的な不平等と企業腐敗を無視して、それらを『彼ら』の課題や問題だと見做すのは安易過ぎる」と考え、「私のライフワークの大方は、他者の土地に於ける祖国英国の資源搾取をやめさせることでなければならない」と気付くに至ります。彼女の原点です。

俄かには信じられないような方法でアンジーとその仲間は戦闘機や原子力潜水艦を非武器化し、法廷では国際法と国際人道法を駆使した本人弁護を展開して無罪判決を勝ち取ってい きます。

1996年。インドネシアが購入したブリティッシュ・エアロスペース社の戦闘機は、東 チモール人虐殺目的の爆撃に使用されていました。それを止めようとアンジーは仲間の女性 三人と共に戦闘機の非武器化に踏み切ります。具体的には、エアロスペース社の格納庫に侵 入、インドネシア向けに出荷を待つばかりだった戦闘機を金づちで破壊したのです。

裁判では調査報道記者ジョン・ピルジャー、ノーベル平和賞受賞者で第四代東チモール大統領とな ったジョゼ・ラモス=ホルタなど、そうそうたる証人を得て、人道に対する犯罪を防止した という弁護が認められ、無罪判決を勝ち取りました。

1999年。核兵器による「大規模破壊で世界を威嚇する国際犯罪の中断を目指し」、ア ンジーは仲間の女性二人と、スコットランドの湖に浮かぶ原潜研究所に侵入してコンピュー タなど、研究所内の機器を全て湖に投げ入れます。

「被告三人が仲間と共に、英国のトライデント使用が脅威であると解釈され得る、と信じ るに至ったことは正当化されると結論せざるを得ない。...故に、(核兵器による威嚇は) 国際法及び慣習法に違反する。被告人が犯罪を意図して行動したと示唆する証言は一つもな かった」(訴訟を指揮したギンブレット判事)として再び無罪判決。 どちらも長期収監を覚悟した、最後の手段としての非暴力直接行動でした。

日本という環境の中で彼女のやり方がそのまま通用するとは限りません。それでもより平 等で公平な、全ての生き物にとって住みやすい世界を目指して行動している人にはもう一歩 踏み込もうと 、行動をためらっている人には一歩踏み出そうと思ってもらえれば幸いです。 アンジーの生き方の中から、創造的な抵抗を続けるためのヒントや発想がきっと見つかると 思います。 (川島めぐみ)


■クラウドファンディングサイト
みなさま
初回のCFは12月8日に終了しました。
約38万ものCF基金のご協力ありがとうございます。
引き続き2回目のCFを展開中です。
よろしくお願いします。

https://camp-fire.jp/projects/view/726223?utm_campaign=cp_po_share_c_msg_mypage_projects_show
12月9日更新
■集会
イギリスの平和運動家アンジー・ゼルターさんの “Activism for Life”(仮題「活動家という生き方―非暴力が世界を変える」)という本の翻訳出版計画を進めてまいりましたが、ようやく来年初めに発刊の予定となりました。出版社からの「400部買取り」の資金捻出のため、クラウド・ファンディング(CF)第2回目を開始します。発刊に先立ち、翻訳者3人から刊行の意義や、和訳の困難さなど、肩の凝らぬ座談会を以下のように開きます。
どうぞご参集ください。

アンジーゼルター著 『非暴力で社会を変える変える』
翻訳の意義についての座談会

日時 12月17日 午後1時半~4時半
会場 北沢タウンホール 集会室1
東京都世田谷区北沢2-8-18
03-5478-8006
最寄り駅:下北沢駅[東口 徒歩3分

座談会メンバーの紹介

大津留公彦:「ファスレーン365」日本実行委員会メンバー、ブロガー、歌人俳人、新日本歌人協会常任幹事、文 化団体連絡会議事務局長、
「私が東京を変える」事務局長。

川島めぐみ: 翻訳家。書籍「山谷ブルース」「くたばれ、ジャップ野郎!」「電話カウンセリング」、映画字幕「でくの空」「馬毛島クロス」など、
社会問題や人権問題に関する書籍などの翻訳を多数手がけてきた。

豊島 耕一: 長年、平和活動に関わり、ブログなどで活発にメッセージを発信。アンジー・ゼルター氏が原潜研究所 非武器化行動で無罪を勝ち取った後、日本に招待して全国公演ツアーを敢行。
「ファスレーン365」日本チームを結成、参加。佐賀大学理工学部元教授。

お問い合わせ先:atoztransproject@gmail.com(川島)