パレスチナ・ガザの現状を知る。虐殺に抗議の声を挙げよう!

「破壊のあとで」YouTube

映画「破壊のあとで」(YouTubeより 以下同じ)


挨拶する土井敏邦さん

挨拶する土井敏邦さん


12月17日(土)13時半より日比谷図書館地下ホールにて、緊急報告会「ガザはどうなるのか?」が開催された。映画監督である土井敏邦さんの司会のもとで、ガザの状況を記録した映像「破壊のあとで」が上映され、その後は鈴木啓之さん、川上泰徳さんの報告があり、休憩後に3人のてい談があった。主催は土井敏邦・パレスチナ記録の会。

はじめに土井敏邦さんが上映する映画の成り立ちを説明した。2年前の「破壊のあとで」の映画は「ガザは語る」という作品の三分の一で、ガザの今後を予期させるものでもある、と語る。

「破壊のあとで―ガザからの証言―」は2014年のイスラエルのガザ攻撃からはじまる。

避難していた家族が自分の家に戻ると瓦礫の町並みが続き、兄弟二人は殺されていた。仕方なく一時国連お学校へと分散して生活する。家族のインタビューを通して、いかにガザでの生活が過酷であり、生きていくうえでの困難さや苦しみがあるということが伝わってくる。若者には仕事や将来がない絶望的な状況だという。若者は語る「ガザで寝るなら、海外の路上で寝たい」と。

また、ハマスへの批判も伝わってくる。ハマスのスポークスマンへのインタビューもおこなっているが、あまり具体的な話はしない…「パレスチナ人に未来と尊厳を与えるために占領と戦うか、戦わないか」と応える。

ガザから脱出しようとしている人たちもいる。「自分の国から出るだけなのに、なぜ賄賂を払わなければならないのか」と憤る。このように暗澹たる話が続く。

映画「破壊のあとで」

映画「破壊のあとで」

■鈴木啓之さん(東京大学特任准教授)  
「ガザ最新事情 戦後への暗い見通し」

ガザは未曾有の人道危機である。当初ガザ地区からパレスチナ戦闘員3千人が流入し1200人を殺害し、240人が連れられ、そのなかで現在は130人くらい残っている。

10月7日からガザ地区の完全封鎖と空爆が始まる。電気・ガス・水道を止めている。10月28日から地上部隊が展開して、戦闘が再開し死者約2万人、負傷者5万1千人以上である。

国際人道法違反という状態であり、民間人や病院・学校・国連施設などが攻撃されている。国際社会の反応としては芳しくない。国際世論は分裂している。米国はイスラエルの自衛権支持している。西欧では当初ハマスの批判があったが、その後は空爆をやめよと要請している。アラブ諸国では世論は沸騰している。政府はイスラエルを非難しているが、実効力のあるはたらきかけはできていない。

日本の外交姿勢は特色が見えない。紛争当事国に過度に肩入れしていないが議論すべき問題だろう。

国連安保理では「ガザ人道的休戦」を求める決議(10月27日)で日本は棄権した。国連グテーレス事務総長は国連憲章99条基づき安保理に停戦求めるよう要請した(12月7日 ) 。翌日に米国は拒否権を行使して葬り去られた。

ヨルダン川西岸でも最悪の状態。2022年よりも死者数を超えて現在は280人が死亡する。イスラエル軍と入植者による暴力であり、市民が武力を持つことが増えて管理できない暴力が増えている。止め方の分からない暴力が波及している。イスラエル北部地帯やレバノン南部、そしてイエメンのフーシ派が武力で関わろうとしている。

SNS上でヘイトクライムの懸念がある。ユダヤ人、パレスチナ人への嫌がらせや、過去の映像の使いまわしやAI画像の生成なので情報が撹乱される。

イスラエルは人質の解放とハマスの殲滅を求めていたが、戦争の落としどころが見えない。またイスラエル軍の統率がとれてないのではないか。間違って民間人が殺されている「道徳」が失われている。

紛争後のガザの統治も問題である。ガザ復興は戻すだけではない。ガザに国際社会がどう関わるのかが問われている。

■川上泰徳さん(中東ジャーナリスト)
「なぜ、これほどの民間人の犠牲がでるのか? イスラエル無差別攻撃の背景」

死者はガザ保健省集計で1878人以上、子供は7000人以上。東京に当てはめると11万7千人で、これは東京大空襲と同じ、リアルタイムで東京大空襲を見ている。墨田区はロシアがウクライナに侵攻したときに非難声明を出した。私たちは東京大空襲を経験したと、なぜガザ攻撃に対して声を挙げないのか?日本の市民社会がどう向き合うのかが問われている。

まともなメディアがなぜ民間人の犠牲者が増えるのかの記事を出した。

米ニューヨーク・タイムズ紙の記事はそれを指摘している。「イスラエル軍の集中攻撃の下で、ガザの民間人の殺害は記録的な増加を示している」
https://www.nytimes.com/2023/11/25/world/middleeast/israel-gaza-death-toll.html

NYTの記事の冒頭にはガザ保健省が発表した死者数をグラフとして示し、11月22日の時点で、死者総数が1万4000人を超え、そのうちの1万人人が女性と子供となっている。

記事ではイスラエルが短期間の戦闘停止までに1万5000人以上の標的を攻撃し、特に超大型爆弾を使用していることを指摘しているという。複数の専門家たちは「イスラエルが密集した都市部に超大型兵器を多用しており、その中には高層マンションを破壊できる米国製の2000ポンド(1トン)爆弾も含まれており、驚くべきことだと指摘する」と書く。(川上泰徳<イスラエル軍のガザ攻撃で「今世紀類をみない」民間人死者数の背景:米・イスラエル・メディアが分析>ヤフーニュース 12.12)

また、調査報道では民間人の犠牲を減らすための攻撃の規制が大幅に緩和されたうえに、人工頭脳(AI)システムの使用で自動的に攻撃目標を設定されていることが甚大な民間人の犠牲につながっていることを指摘している。

人間の目を通さないことで、「質ではなく量に重点が置かれ」てAIが生成した攻撃目標を、ただ攻撃するだけになっており、それが大量の民間人の殺りくにつながっている。

AIが本格的に使われた戦争だ。これを止めるために真剣に考えなくてはならない。

この後、ガザに住むジャーナリストがガザの現状をSNSで報告した映像が流され、1日1食であること、雨水を溜めたり、もらってきた水を沸騰させて飲んでいる、原始的なやり方で調理している等、避難テントでの過酷な生活の状況を伝えた。

(文責編集部)


土井敏邦 監督『ガザに生きる/Life in Gaza』DVD Box – Toshikuni Doi
http://doi-toshikuni.net/j/life_in_gaza/