イラク戦争から20年(1)子どもたちの絵画や写真で振り返る

スペシャルトークの様子(you tubeより)

スペシャルトークの様子
(you tubeより)

2003年3月20日に米国がイラクへの攻撃に踏み切った。今年(2023年)はそれから20年にあたる。そんな折に東京・神保町「文房堂ギャラリー」で写真や絵画などでイラクの過去・現在を辿る『JUSTPEACE! イラク戦争から20年・写真と絵画で辿る過去と現在、そして…。』と題された展覧会が開かれると聞いて出かけてみた。主催はJIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)。

JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)は、戦争や紛争の影響でがんや白血病などにかかったイラクやその周辺国の子どもたちへの医療支援を続けているNGOで、2019年にはイラク北部のクルド自治区に小児がん総合支援施設「JIM-NETハウス」がつくられた。

展覧会の会期は3月16日~21日で、展示は森住卓と鈴木雄介の写真、イラクの子どもたちによる絵画や手描きバッグなどのグッズ、支援者の贈呈品展示、そしてイベントもピアノ演奏やワークショップ、写真家によるギャラリートーク、生配信を含めたトークライブと多彩であった。

神保町の「文房堂」は、御茶ノ水駅から向かった神田すずらん通り商店街入口に店を構えている。1887年創業という老舗の画材・文具店で、1922年の社屋完成当時の外壁が残してある重厚な店舗だ。その雰囲気を味わうためにもぜひ訪れてほしい場所だ。

文房堂ギャラリーは、思ったよりもひろく、イベントを開催しても問題ないスペースだ。エレベーターを出てすぐ右にイラストが描かれたたくさんのバッグが吊り下がっている。入口の向かいにはイラクの子どもたちが描いた絵画と記念写真が展示されている。左にはギタリストSUGIZOのギターと舞台衣装が展示されている。

SUGIZOはイラクの小児がんと戦う子どもたちをサポートし続けている。その子どもたちが描いた絵をパッケージして募金活動を支援している。またそのパッケージをコラージュした衣装も誕生し、それを展開させたギターも製作した。
https://espguitars.co.jp/eden/

「JUSTPEACE!」ギャラリーの会場風景

展覧会「JUSTPEACE!」ギャラリーの会場風景(文房堂のバーチャルギャラリーより)

SUGIZOのギターが展示されている。後方には子どもたちの描いた絵画

SUGIZOのギターが展示。後方には子どもたちの描いた絵画(文房堂のバーチャルギャラリーより)

https://my.matterport.com/show/?m=ynstvGwd6Xf
文房堂のバーチャルギャラリー

会期中の企画でスペシャルトークがあり、斎藤とも子さん(俳優)の司会で、魅力的な顔ぶれの登壇者から多彩な意見が出されて談論風発となった。

酒井啓子さん(千葉大学教授)がイラク戦争の起源とその後の展開と現状を簡潔に報告した。湯川れい子さん(音楽評論家)は戦前の日本で竹槍訓練を例に出して戦争を愚かさを指摘した。鎌田實さん(医師・JIM-NET代表)は国境の境界に住む難民キャンプの支援の活動などを報告した。加藤登紀子さん(歌手)は戦争の惨禍の後に起きた非戦の声やパリコミューンの理想を求める動きを紹介し、非暴力の意義を強調した。

酒井啓子さんの報告(要旨)

大量破壊兵器を開発・保有があり、湾岸戦争の停戦違反であるとして米国が攻め込んだのがイラク戦争である。 9.11テロ事件以降は中東を民主化しない限り、アメリカは安泰ではないというロジックであった。

イラクのフセイン政権を40日間で転覆させてその後は米国中心の有志連合軍の支配が2011年まで続いた。
その間も宗派対立や内戦が続き、治安も悪化し約30万人が亡くなった。また、イスラム国の台頭による戦乱も起きた。

そんななか2019年10月には反政府運動が起きた。学生が中心となりイラクの国民運動であり、女性たちが声を挙げた運動であった。それは貧しい人々たちが参加した自主的な運動であった。この運動が表したものは戦後20年の政治体制の機能不全――それは戦前の米国から来た亡命反体制政治家たちの利権政治――に対してノーを突きつけたものである。

まだ前途は見えないし、かつての1970年のような社会運動のように決着するのかもしれない。しかし、外国の勢力ではなく自分の国を取り戻すんだという意識がでてきた。今後どうなるのか、見ていきたい。
(編集部)

酒井啓子さんが紹介したイラク女性たちの社会運動の写真

酒井啓子さんが紹介したイラク女性たちの社会運動の写真(you tubeより)


文房堂ギャラリー
http://www.bumpodo.co.jp/gallery/bumpodogallery.html

JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)
https://www.jim-net.org/