自民党の憲法「改正」に関する論点に注意!!

自民党「憲法改正」取りまとめの報道(「朝日新聞」2017年12月21日)

自民党「憲法改正」取りまとめの報道(「朝日新聞」2017年12月21日)

12月20日(水)自民党の憲法改憲推進本部は「憲法改正に関する論点取りまとめ」を公表した。これについては、さほどマスコミで注目されていないようなので、この時点での憲法「改正」の方向をどう考えているのか、確認しておきたい。

まず注意すべきは関係省庁等の出席者として、衆議院の橘幸信法制局長など9名が銘記されていることだ。これは一般配布されている資料には記載されていないが、記録としては残されている。また、ここに記載されていない省庁の役人も出席しているかもしれない? いつから政府は改憲ありきのシステムになったのか。まず擁護すべきは現憲法な筈だが、改憲列車の乗務員として役人が配置されることは許されない。改憲論議は自民党にまかすといった首相の発言はどこへいったのか。

肝心の改憲案だが、4つのテーマとしてとりまとめている。
1.安全保障に関わる「自衛隊」、2.統治機構のあり方に関する「緊急事態」、3.一票の格差と地域の民意反映が問われる「合区解消・地方公共団体」、4.国家百年の計たる「教育充実」、だという。

まず、9条については戦争放棄の1項、戦力を保持しない2項を維持したまま自衛隊を憲法に明記する「加憲」案と、2項を削除する案の両論併記となっている。

共通の問題として「シビリアンコントロール」の意見がでたようだが、これは一般論としては当たり前の話ではある。いわゆる「加憲」は安倍首相の意見で、2項削除は従来の自民党の案だが(石破案とも)、いずれにせよ「自衛隊」というか「国防軍」というのか、軍隊としては名前の違いだけだと言える。

緊急事態については「選挙ができない事態に備える」というものと、「政府への権限集中や私権制限を含めたもの」との案があるが、前者については行政機能があれば、むしろ選挙についてはあまり意味はなさない。後者については基本的人権の否定や軍人による支配・統治につながる危険なものだと指摘しておこう。

合区解消については、一票の格差(人口比例)の対応の問題を整理したいのだろう。最高裁では近年の参院選が「違憲状態」と判断しており、それを解消したいのと、違憲状態を放置しての「改憲」も違憲となることを危惧しているのだろう。

教育の充実については「無償化」が明記されず、努力目標となり教育の格差も放置されてしまう可能性もある。また「国が教育環境の整備を普段に推進すべき」ということは、教育内容の介入や規制がよりいっそう強化される危険性がある。

以上。あまり新聞などではきちんと報道・解説しているところが少ないようなので注意喚起の意味で取り上げた。今後とも注視していきたい。
(本田一美)

自民の9条改憲文案、年内見送り 論点整理、2案併記
https://www.asahi.com/articles/ASKDN5HSJKDNUTFK00X.html

憲法改正に関する論点取りまとめ(自由民主党憲法改正推進本部 )
https://www.jimin.jp/news/policy/136448.html