憲法違反の安倍国葬。狙いは戦争に参加すること

国会前は4千人の市民で埋まった(You Tubeより)

国会前は4千人の市民で埋まった(You Tubeより)

2022年7月8日に安倍晋三元首相が奈良県の参議院選挙の応援演説中に銃撃され死亡した。投票直前ゆえに政権党である自民党に有利にはたらいたところもあり、選挙は与党の勝利となった。7月14日に岸田内閣総理大臣は記者会見で「国葬儀(国葬)の形式で、葬儀を行う。安倍元首相を追悼するとともに、我が国は暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」(「朝日新聞」「読売新聞」2022年7月15日付)述べた。

国葬は9月27日に日本武道館で予定されており、経費は全額国費で賄われる。岸田文雄首相は国葬の必要性を強調しているが、立憲、共産両党などは反対しており、市民団体が国葬の差し止めを求めて提訴している。世論調査では反対が上回っているか、拮抗している(「毎日新聞」2022年8月21日)。反対集会やデモが開かれ、とうてい国民が理解・納得しているとはいい難い。なぜそこまで岸田首相は国葬にこだわるのか? 以下は憲法の研究者との対話である。


●岸田内閣は2022年9月27日に「安倍晋三氏の『国葬』」を日本武道館で実施する閣議決定を行いました(7月22日)。費用は国費支出で2億5千万(「読売新聞」2022年8月25日付)とも言われています。これには天皇・皇后も出席するでしょう。
 
 K ―そもそもあまりメディアでは指摘がないようだが、日本国憲法のもとでは、国葬(儀)は行うことができない。国家の儀式として経費で行う葬儀のことだが、葬儀は、死体・遺骨を収める宗教的行為である。

日本国憲法の第二〇条において「信教の自由を保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」(第一項)としている。

●いわゆる「国・教分離」ですね。政治についても特権や政治権力などで「政・教分離」もあります。あと法の下の平等(拳法十四条)にも反します。

 K ―日本国憲法は厳格な信教の自由なので自民党と統一教会の癒着・結合は明確に「第二〇条」違反となる。政党助成金などの公的資金も入っており、そのふたつの違反となるだろう。

さらに「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することは強制されない」(第二項)とあるように弔意や参列は強制されない。

●そこですが、政府は企業や学校に弔旗掲揚や葬儀の時間に黙祷を要請するかどうか検討中であるとして否定していません。また、官公庁、学校、企業などを当日休日扱いにすることや、テレビ局などにいわゆる歌舞音曲などを伴う番組の自粛を要請するかどうかについても判断は先送りしています。閣議了解文書では、各省庁や企業に対して協力を要望しています。(「しんぶん赤旗」2022年8月8日付)政府による協力の要請は実際のところ強制となります。

 K ―繰り返しになるが国葬は、国家に行う葬儀であるから、国家の宗教的活動となり、形式は問わず葬儀が宗教的活動である。国家は国葬を行うことができない。

戦前の「国葬令」が、1947年12月31日に廃止されたのは、この理由であるし、新しい法律をつくることも憲法違反となる。さらに「安倍国葬」が実施されて国民に対して弔意の強制が行われれば憲法「第十九条」の違反となる。

●そうまでして「安倍国葬」をしたがるのはなぜなのか? 吉田茂の国葬(1967年)についても、当時の公文書は国葬を巡り「あらかじめ法律で根拠が定められることが望ましい」と明記されていた(「共同通信」8月26日付)、ということで根拠がないことは認識していた。

 K ―戦後レジームからの脱却を唱えて平和主義の日本国憲法を壊していった安倍氏を「英雄」にして、日本国憲法の体制を転覆させる反革命の出発点にしようとしている。

具体的には2027年に想定されている「米中戦争」に日本が参戦したとき、戦死した自衛隊員を「軍神」にする布石を打つことではないか。米国のバイデン大統領政権は2027年に中国が台湾を侵攻するとの仮説をたてて、「米中戦争」の準備をしている。「日米同盟」のもとで日本も参戦のための整備、構築が必要だろう、「安倍国葬」はその準備の一環だ。

●岸田首相はもともと宏池会で、いわゆる自民党の右派(タカ派)ではない、そのため日本会議など右派・保守反動派からは、さほど支持・信用されていない。これからも支持・信頼を得るには、どうしても国葬を実現させ実行力を見せつける以外になかったのでは、麻生太郎から耳打ちされた、という話も伝わってきた。

もちろん本人も最善の策だと考えているだろうし、政権を延命させるには安倍元首相が敷いたレールに乗っていくのが、一番だと思っているだろう。ただ、統一教会と自民党の癒着の問題が解決しないまま進んでいるので、国葬をすると国民との矛盾が激化して政権運営がままならないのではないか。

 K ―安倍を国葬することは「米中戦争」に日本が参加したときに、自衛隊員を「軍神」にして靖国神社に祀る、それを可能にすること。その布石としてある。

安倍国葬は「解釈改憲」でもあるし、文字どおり改憲の実現化だろう。仮に岸田政権が持たなくても支配層や「日米同盟」のスケジュールとしては外せない問題となっている。

●若年層の間では安倍の国葬に対して抵抗がないと伝え聞きます。政府が教育に介入し続けてものわかりのよい子どもたちを育成してきた結果でしょう。労働組合の政府になびく状況なので危機的ではあります。ここはリベラルや立憲・憲法擁護派の踏ん張りどころではないでしょうか。

(文責編集部)

国会前集会の前にコンサートが開かれた

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久々の国会前の集会だった

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