強制労働(徴用工)被害者を踏みにじる日韓政府

三一節記念演説を行っている尹大統領

三一節記念演説を行っている尹大統領
(ハンギョレ新聞より)

2023年3月6日、韓国政府は韓国で強制労働(元徴用工)をめぐる訴訟について、日本企業が命じられた賠償金を韓国の財団が肩代わりするという「解決策」を発表した。

この強制労働(徴用工)裁判については1990年代に日本の大阪で裁判が開始された。残念ながら2003年に最高裁で上告が棄却されて敗訴となった。しかし、韓国に移って訴訟を起こし、ようやく2018年11月30日に韓国大法院(最高裁)は三菱重工業と日本製鉄(旧新日鉄住金)に、強制労働(徴用工)被害者への賠償を命じる判決がだされた。

当時の日本の安倍政権は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、訴訟については「韓国国内の問題」と位置付け、被告の2社も判決の履行に応じなかった。2019年には韓国政府が、両国企業の自発的出資で財源を造成し、確定判決を受けた強制徴用被害者たちに賠償する案を提出したが、これも日本政府は拒否した。

そして韓国では2022年5月に尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が成立、かねてより想定された「解決案」として「財団」(既存の「日帝強制動員被害者支援財団」を想定)などの第三者が被告企業に代わって賠償金に相当する金額を被害者原告に支払うという方式が現実味を帯びてきた。

東アジアの安全保障の環境の変化にも対応すべく、日韓関係を良好なものとするためにも決着をつけようというものだ。しかし、最高裁判決を政府が否定するもので、法治国家を壊すことになる。さらに、被害者への謝罪や反省の表明もない、責任を負うべき当事者はまったく関わらないという最悪の解決策だ!

一番の問題は、朝鮮の植民地支配は「合法」だとする日本と「違法」だとする韓国の関係は前者の立場が強化されて、継続していくことだ。

日本と韓国の民衆・労働者の連帯で過去の植民地支配被害者の救済・強制動員問題・差別抑圧の支配意識を粉砕し解決していこう。以下「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」(結成2018年)の声明を紹介する。

(編集部)

声明「歴史に目を閉ざし、被害者を置き去りにしたままでは解決にならない!」

2023年3月6日

本日、韓国政府・朴振外交部長官が「強制徴用大法院判決関連 解決法」を発表しました。

 「解決法」として示したのは、①「日帝強制動員被害者支援財団」(以下、財団)が2018年大法院判決の原告に判決金・遅延利子を支給する、②後続措置として、被害者の苦痛を記憶し、継承していくために追慕、教育・調査・研究事業等を推進する、③判決金・遅延利子支払いの財源は民間の自発的寄与などを通じて用意する、の3点。「今後の計画」として、被害者・遺族に「解決法」への理解・同意を求めること、財団への財源用意が確実に進むようにすることなどを打ち出しています。

 これを受けて、日本政府・林芳正外相は記者会見で、韓国政府の「解決法」を「日韓関係を健全な関係に戻すためのものとして評価」すると言い、「この機会に、日本政府は、1998年10月に発表された『日韓共同宣言』を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいることを確認」する旨を表明しました。

被告企業は、この韓国政府の発表について「特にコメントする立場にない」とコメントしました。そして、改めて「請求権協定で解決済み」との見解を明らかにしました。

韓国政府が日本政府に求めた「誠意ある呼応」は何ひとつ反映していません。これで強制動員問題が解決したとは言えません。

第1に、被告日本企業は謝罪もしていなければ、賠償支払いの表明もしていません。被告企業は日本と韓国の裁判で、強制動員し、強制労働を強いた事実、その不法行為責任を認定されています。にもかかわらず被害者に謝罪の言葉さえなく「コメントする立場にない」と他人事のように振る舞っています。

第2に、林外相の「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」との言葉は、「韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えた」という1998年宣言の核心的部分を欠落させています。日本政府は戦時中の朝鮮人強制動員について第一に責任を負うべき立場にあるにもかかわらず「多大の損害と苦痛」を受けた強制動員被害者に謝罪しなかったのです。

このように韓国の財団に賠償支払いを肩代わりさせておきながら加害当事者は謝罪もせず、1円の金も出さない、これで強制動員問題が解決するはずがありません。

日韓両政府は、今回の「解決法」発表により、日韓関係が改善され、発展していくと言っています。しかし、強制動員問題等を解決し、植民地主義を清算するプロセスを進めていかない限り日韓の真の友好は深まらず、関係が発展していくはずがありません。

今回の「解決法」について、生存被害者原告は受け入れられないとの立場を明らかにしています。

私たちは、被害者ととともに、

(1)日本政府・被告企業が強制動員の事実を認めて真摯に謝罪し、その証として償いのために資金を拠出し、同じことを繰り返さないための措置を具体的に講ずること、

(2)そのために被害者原告及び遺族との協議の場を設けること、

を求めて運動を続けていきます。

強制動員問題解決と過去清算のための共同行動

https://181030.jimdofree.com/

徴用工問題、韓国が「解決策」を発表 日本は「おわび」継承を表明へ(朝日新聞デジタル)
https://www.asahi.com/articles/ASR363H5JR2XUHBI016.html
最高裁判決・被害者の苦痛は無視…「日本完勝」もたらした尹政権(ハンギョレ新聞)
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/46093.html