兵士たちの心的障害・戦争被害の責任を問う―日本軍、そして自衛隊

参議院会館での集会

参議院会館での集会

5月10日(火)午後、参議院会館でアジア・太平洋戦争でPTSD(心的外傷後ストレス障害)を負った旧日本兵の家族らが主催するシンポジウムが開催された。主催者である「PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会」の黒井秋夫さん、ジャーナリストの三宅勝久さんが講演・報告した。

「PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会」は黒井秋夫さん(武蔵村山市)が父・慶次郎さんの死後に先の戦争による心の傷を負っていたと気付いて、復員兵たちの戦争被害としてPTSD(心的外傷後ストレス障害)の問題を考えるようになり。そして同じ問題を共有・啓蒙するために2021年5月、自宅の敷地に「PTSDの日本兵と家族の交流館」建てた。

黒井秋夫さんの話

2018年に会を発足させた。父が何も言わずに亡くなった。親父たちのことを話すときが来た。国府台病院の映像がある。クローズアップ現代の動画だが、そのなかでもダントツに再生回数が多い。それらの動画で苦しむ兵士の姿がここ数年で、注目されようになった。私の父は77歳で亡くなった。中国戦線で指揮していた。帰国後は廃人のようになっていた。

ある時ネルソンさんのビデオを見て気づいた。戦争の影響なんだと。無念の想いがよぎった。そして会を結成し、庭に交流館をつくり、3年で2100人が訪れた。また宮本徹氏が国会で質問した。戦争による精神被害のことは初めてではないのだろうか。

精神を患ってしまう兵士がいること日本軍と日本国家は知っていたのだ。専門の研究もあることを知った。私は問いかけたい日本国家は責任をとったのだろうか。そして、戦後の日本は二度と銃を持たないということを強調したい。それが戦後の日本の精神なのだ。

三宅勝久さんの話

私は自衛隊の取材と、学生の奨学金の問題もやっている。米国の奨学金でも破産しても借金が残ることになっている。それは悲惨だ。戦争で精神に傷を負ってしまう話は、自衛隊でもある。そして増加し、特に2000年代に増えてきた。戦場以外でもあって、それは戦前の帝国陸海軍と似ている。自衛隊に戦前の軍隊を知っている人がいた場合には、そのような状況は抑えられていた。

戦前の体験がない世代に代わっていくと、増えていった。セクハラ・パワハラ・いじめは珍しくない。日本社会では9割が自衛隊に好意を持っている。しかし自衛隊を中途でやめる人が5千人、30%の人がやめていく。現場は悲鳴を上げている。長時間労働。いじめ、セクハラ、現場ではストレスがたまる。

2003年に佐世保の護衛艦の事件(護衛艦たちかぜ事件)。首謀者は船を私物化していた。エアガンを持ち込み、サバイバルゲームに参加させたり、借金を部下に肩代わりさせたりした。海上自衛隊横須賀地方総監部は出世ルートなので報告書を変えさせたりした。内部告発もあり、証拠を隠している、アンケート調査の回答書が存在するという話だった。裁判で自殺の責任はなかったというストーリーにした。

2022年のセクハラの告発は前からあったことだが、名前を出して闘ったことは驚いた。戦前の日本軍と似ている。自殺について予防対策は重要だ。1930年代から新兵の自殺が多発してきた。それが今でも解決できないのだ。

(文責編集部)

シリーズ 終わらない戦争②
封印された心の傷 “戦争神経症”兵士の追跡調査
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4577/index.html

[目撃!にっぽん] “ずっと父が嫌いだった” 家族が向き合う戦争の傷痕 | NHK
https://youtu.be/Iel8ubHb_d0