ガザとヨコスカ/軍事基地とPFAS汚染― VFPジャパンツアー横須賀集会

報告するパット・エルダーさん

報告するパット・エルダーさん

8月11日(日)にベテランズ・フォー・ピース横須賀集会が開かれた。ベテランズ・フォー・ピースは1985年に米国で従軍経験のある元軍人(ベテランズ)とその家族、およびその賛同者により結成された国際的平和団体。 当日は残念ながらアン・ライトさん、マットフォーさんがビデオによる参加となった。全体で約80名が参加した。集会よびかけは非核市民運動・ヨコスカとヨコスカ平和船団。

ビデオによる講演でマット・ホーさん(「アイゼンハワー・メディア・ネットワーク」アソシエイト・ディレクター)がアメリカのメディアの偏向・問題を報告した。ビデオのインタビューでアン・ライトさん(退役軍人大佐、元外交官)がパレスチナ・ガザ地区での活動を報告した。

次に松本真里さん(非核市民運動・ヨコスカ)が横須賀のPFAS汚染の現時点での課題を報告した。

そして「軍事基地によるPFAS汚染」をパット・エルダーさん(「ミリタリー・ポイズンズ」ディレクター)が報告。最後は形川健一さん(元自衛官・VFPジャパン共同代表)から現在の自衛隊についての話があった。ここではパット・エルダーさんの話を紹介する。

●パット・エルダーさん
米国におけるPFAS汚染と規制の動向

●日本全国で水質検査
今年の5、6月に日本の環境活動家の皆さんのご協力で、私たちが提供した水質検査キットを使って全国の地表水と井戸水が採取された。全部で39の結果をご紹介する。

サイクロピュア社の検査キットで検出可能な55種類の化合物のうち27種類ものPFASが検出された。日本政府は水道水と河川中のたった2種類のPFOSとPFOAのPFAS化合物の合計について、1リットルあたり50ナノグラム(ng/L,ppt)という暫定値を設定している。PFOSとPFOAはすでに使用されてはおらず、他の多くの化合物に取って代わられている。

米国政府は飲料水中のPFASを規制し始めており、他の分野でも規制は初期段階だ。汚染事業者や政府に対する訴訟は後をたたない。いくつかの州では率先してPFASの規制を進めている。

米国政府はPFASを規制する暫定的な措置をとっている。たとえば全米の飲料水を対象としたPFAS規制の上限だが、PFOA,PFOSは4ppt、PFNA,PFHxTとHFPO-DA(Gen-x) は10pptなど…。

EPA(米国環境保護庁)は、ほどんどのPFAS化合物を飲料水基準から除外した。不十分な規制だとして裁判で訴えられている。PFAS化合物のなかで飲料水で規制されているものは6種類だが、規制されていないものは15,000種類以上もある。規制が水道料金に与える影響を懸念している、規制について人体への影響、データ、科学的根拠がないと指摘した。

EPAはわずかながらの成果をあげているが、まだ十分ではない。2024年4月にEPAは。PFOSとPFOAを「包括的環境対策補償責任法」に基づく有害物質に指定した。さらに9種類のPFAS化合物を追加する省資源・資源回収法の改正を提案している。

これらのPFASは、排水処理施設のような有害廃棄物処理貯蔵・処分施設での取り扱い対象リストに追加される。

EPAは、有害物質規制法に基づき、製造工程におけるPFASの追跡調査を開始した。PFASに関する新たな報告と記録保存要件を定め、2011年以降にPFASを使用した製品を輸入、または製造したすべての企業に適用される。汚染源の86%は食品からだという。だが、米国の裁判所は大企業に支配されている。

ミシガン州では地表に流出するPFASの量の上限を規制している。そのミシガン州環境局に対して空軍が連邦主権免責によりそれを拒否できると主張している。軍は中国・ロシアの脅威を語るが国内のPFASの脅威には無頓着だ。

米軍はPFASを含む様々な製品に対して使用を継続するしかないとしている。いっぽう欧州化学物質(ECHA)は近く1万種のPFAS化合物を禁止する見込みだ。提案はPFASの製造と使用の全面禁止を推奨している。これが正式に採用されれば2026年ごろに発効するだろう。

それでも連邦最高裁判所は、政府機関の法令解釈を支持することを義務ずけられている。2024年6月28日にシェブロンvs天然資源防護協議会事件の判決を覆した。この判決は、規制当局から裁判所への権力を移行させるものである。この判決により、バイデン政権が最近策定した飲料水宙のPFASに制限を設ける環境規制を連邦最高裁判所が破棄することが容易となった。

現在VA(退役軍人省)医療センターでPFASの血液検査は実施されていない。「血中濃度を調べても、PFASにさらされたのが最近なのか過去なのかわからない」「検査はPFAS暴露の原因を特定するものではない」「血中濃度を知っても、PFASが病気の原因になったのか、なるかはわからない」

3M、ケマーズ、デュポン、コルテバなど裁判でPFAS汚染についての和解が成立したがいずれもメーカー側に有利であった。

テキサス州では肥料に含まれるPFAS規制を怠ったとして農家・牧場主たちが EPAを提訴した。また、PFASを含んだ製品のメーカーを相手取って、虚偽広告と「警告義務を怠った」として訴えが起こされている。

(文責:編集部)

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