クルド人への差別・排外を許すな!ヘイトスピーチを止めるために

日弁連の緊急集会でヘイトの現状を報告した登壇者ら=26日、東京都内で

日弁連の緊急集会でヘイトの現状を報告した登壇者ら=26日、東京都内で (東京新聞WEB 2024年8月28日より) 
https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=350109&pid=1577274

8月26日(月)弁護士会館において「クルド人に対するヘイトスピーチ問題を考える緊急集会」が開催された。会場ではクルドについての映像上映、その後はパネルディスカッション・リレートークがおこなわれた。ここに約150名、オンラインでは200名以上が参加した。主催は日本弁護士連合会。

■パネルディスカッション
チカン・ワッカス氏(日本クルド文化協会代表理事)
温井 立央氏(在日クルド人と共に(HEVAL)代表理事)
安田 浩一氏(ジャーナリスト)
大橋 毅弁護士(クルド難民弁護団事務局長・人権擁護委員会特別委嘱委員)

■ヘイトスピーチ問題に関するリレートーク
師岡 康子弁護士(東京弁護士会)
神原 元弁護士(人権擁護委員会特別委嘱委員・神奈川県弁護士会)

集会案内には<ヘイトスピーチは、対象者の尊厳を踏みにじり、対象者の反論・自己表現の力を奪う重大な人権侵害です。加えて、ヘイトクライム等を誘引する側面をもち、社会的法益をも害する行為です。2016年6月、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が施行されましたが、ヘイトスピーチが明確に禁止されていないなど、日本におけるヘイトスピーチ規制はいまだ不十分といわざるを得ません。>とある。当然ながら罰則などを策定すべきなのだが、現在のクルド人へのヘイトスピーチはひどいもので、許されない。 

このクルド人へのヘイトスピーチは改正出入国管理法が2023年6月に成立して以降、激しくなったと見られている。その意味で国の責任は大きい。難民自体を正視できない状態をつくったのではないだろうか。まず政府が実態を把握し、それを是正することが求められている。以下集会でのパネルディスッションやトークのそれぞれの発言部分を抜粋して紹介する(敬称略)。

パネルディスカッション

温井 私たちは医療相談、地域の人々との相互理解を進めるためのさまざまなイベントを、おこなっています。昨年の夏からヘイトスピーチが私たちのグループへも届いている。

安田 埼玉県南部に住んでいるクルド人を取材している。ヘイトスピーチ問題だと認識している。最初に川口に来たクルド人が解体業をしていた。そこから解体業が仕事となった。30年以上住んでいるクルド人はここ一年で差別が起きるようになった。外部の人たちがネット上にヘイトスピーチの動画などをアップするようになった。

大橋 難民申請中の方も含めクルド人の大半に在留資格があります。在留資格がない方は少ない、ただ今後は資格を与えなくするというのが日本政府です。入管の判断でオーバーステイにしてしまう。途中で打ち切られる。危惧される状況です。

チカン なぜ川口かといえば、知り合いが近場にいるところに行く。川口になにかあるというわけではない。

安田 川口は多国籍なんですね。イラン人が、南米、パキスタン人がいた、中小企業があり多くの外国人を雇用していた。

大橋 トルコの状況は同化政策が強くクルド人への抑圧がある。
他の先進諸国では難民認定されているのに、日本は法務省が難民認定をしているのが問題で、トルコとのテロ対策の協力を優先しているからではないか。

当日資料より

当日資料より

温井 川口は圧倒的に日本人が居住していて、クルド人が全体に人口に占める割合は1%に満たないのです。「クルド人は暴力的だ」と手紙が来ました。手紙の消印は埼玉ではないです。メールでもひどい内容が来ました。私たちの団体に対しても攻撃の対象になっています。ヘイトスピーチに開き直る人もいます。川口市の意見書も「一部外国人」と表現しています。マイノリティに対して烙印を押すことが、差別と偏見を助長していると思います。

安田 ヘイトスピーチには既視感があります。差別者は常に差別を繰り返しています。かつては在日コリアン、中国人へのヘイトがありました。川口はクルド人に支配されているというデマが流されています。ネット情報で市外の人々が妄想しているのです。女性がレイプされるなど話は、かつての朝鮮人虐殺デマと似ています。

チカン クルド人についていろいろ書かれている。もちろん悪い人もいるし、喧嘩などもあります。ゼロではないが、ほぼデマです。クルドカーなどを見たことある人がいるのでしょうか。いろんな噂話を聞き、それで自分たちパトロールするようになりました。

温井 勝手に公園を使っているという情報が流されました。ちゃんと許可をとっています。

安田 大手メディアも問題があります。差別・恐怖を煽ろうとしています。食いつき良くして儲けたいとしか思えない。ヘイトスピーチを利用してメディアを批判されることに畏れてはならない。毅然とした対応をとってほしい。怯まないでほしい。発言の回路を持たない人たちのために報道してほしい。

■リレートーク

諸岡 クルド人へのヘイトスピーチは危険な状態にあり、止めなければならないということです。単に知識ではなく、行動をしなければならない。人種差別ですから国と地方公共団体は条例をつくる義務があります。差別を止める義務というのは、(人種差別撤廃条約の各締約国は)「人種差別を禁止し終了させなければならない」という条文があります。

ヘイトスピーチ解消法は「外国人出身者は地域社会から排除する」ことを許さないものです。地方公共団体は「差別的言動の解消に向けて努力しなければならない」ですし、「地域社会において亀裂を生じさせている」件やネットの状況については国と同様に取り組まなければならないのです。

川崎では刑事罰をつけました。ヘイト街宣ができなくなりました。ヘイトデモを止めるには条例をつけることが求められています。

大阪の条例ではネットも対象になっています。実効性のある条例が必要です。さまざまな人が声を挙げて協力して、埼玉でも実現できます。

神原 川崎ではヘイトスピーチ・デモが繰り返されて、市民運動のなかで対抗する活動がおこなわれました。ヘイトスピーチをやる人は同じです。許してはならない。

マーチン・ルーサー・キングは「法律は人の心を変えることはできない。しかし黒人へのリンチを止めることはできる」と言いました。

我々は立法府がなにかすることを持っているわけにはいかない。何ができるのか、日弁連や青法協などに呼びかけたいと思います。

(文責編集部)