「能動的サイバー防御」は国民監視であり他国へのサイバー攻撃である

国会前で横断幕を掲げて抗議する(以下写真はすべて4月4日のもの 吉田晃)
審議中だったサイバー攻撃を可能とする「能動的サイバー防御」の法案は4月8日、衆議院で可決し参議院に送られた。法案に反対している共謀罪No!実行委員会などは、4月2日から国会前で連続行動をよびかけ、抗議行動などをおこなっている。
あらためて指摘すれば、この法案では、ネット総監視の体制づくりが合法的に行われ、社会から自由な情報交換や交流が奪われるおそれがあり、サイバー攻撃は報復の連鎖を招く軍事行動であること、緊張緩和の努力や、国内での個々の防御の努力が求められのであり、なにより修正案では、監視社会化や軍事的な衝突への抑制にならない。
可決された後、実行委員会では「参議院での議論の段階で広く反対の世論を作りたい」と引き続き院内集会や反対の行動がとりくまれている。(秘密保護法廃止!共謀罪No!のサイトを参照 https://www.kyobozaino.com)
ここでは、4月4日(金)に行われた国会前行動の報告を紹介し、さらに「能動的サイバー防御」の問題、そして背景を再説・強調したい。また以前の記事も参照してほしい。
小倉利丸さん「サイバー戦争へ踏み込む日本―安保三文書の意味とは」
能動的サイバー防御法案は先制攻撃であり危険な火遊びである

国会前でプラカードを表示して抗議する
■先制サイバー攻撃反対!国会前行動
4月4日(金)、衆議院内閣委員会で「能動的サイバー防御」導入関連法の採決があるとのことで、連日の国会前行動が行われた。午前11時半~、衆議院第二議員会館前での《インターネット監視・先制サイバー攻撃法案反対!徹底審議を求める緊急国会行動》だ。呼びかけは、「秘密保護法」廃止へ!実行委員会、共謀罪No!実行委員会、許すな!憲法改悪・市民連絡会、破防法・組対法に反対する共同行動、JCA-NET、経済安保法に異議ありキャンペーン。
司会は、共謀罪No!実行委員会の林さん。始めに実行委員会を代表して角田さん(共謀罪No!実行委員会)が衆議院内閣委員会の状況を説明した。
安藤さん(組対法・破防法に反対する連絡会)は、現在国会で審議されている刑訴法のIT化法案にも反対の声を挙げてほしい。 高田さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)は、韓国ではユン大統領の罷免が決定された。私たちも韓国の民衆に連帯し闘い続けたい。 杉原さん(NAJAT)は、4/4の「赤旗」に掲載された小笠原みどりさんのインタビュー記事が優れているので読んでほしい。 海渡弁護士は、久しぶりに朝日新聞が「サイバー攻撃法」の解説でがんばっている。現在の状況は、日本でCIAができる過程ではないか。
午後2時から、国会前行動は再開。主催者から午前の衆院内閣委員会の様子が報告された。(1時間質疑のあと、石破首相が出席しての審議)
小倉さん(JCA NET)は、韓国のユン大統領が戒厳令を出したとき、野党などのネット通信を遮断するように指示した。ミャンマーの軍事政権も都合の悪いネットを遮断している。日本の通信事業社でこのサイバー攻撃法に反対している会社はない。私たち一人一人の情報を「敵」に渡さない行動を取ろう!!と語った。
衆院内閣委員会は、「能動的サイバー防御」導入関連法案を令和新撰組と共産党以外の賛成で採決してしまった(14:50)。国会前行動は、《インターネット監視・先制サイバー攻撃法案反対!》とシュプレヒコールを挙げ抗議した。参加者はのべ40名。(吉田晃)

国会前で海渡弁護士が訴える



国会へ向け抗議のシュプレヒコール
(能動的サイバー防御)課題なお 情報収集も国会関与強化も、議論平行線 通信の秘密は小幅修正(朝日新聞デジタル 2025年4月9日)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S16190148.html?unlock=1
「能動的サイバー防御」がネットによる個人監視や他国へのコンピュータへの攻撃・破壊とつながるのは明白である。
小笠原みどりさん(ジャーナリスト)によれば、今回の法案の背景に米国がいることを指摘する。また米国の米大手通信会社AT&TにはNSAの秘密の部屋があり、通信会社が「軍産複合体」の中に入ってしまっている実態があるという。当然ながら日本のNTTやNECなども政府の有識者会議に参加し、主導しているという。また、通信傍受を「サイバー通信情報監理委員会」で審査するというが歯止めにはならない。(以下「しんぶん赤旗」2025年4月4日)
米国にも、諜報(ちょうほう)活動を監督する「外国情報監視裁判所」がありますが、基本的に非公開です。NSAによる盗聴やサイバー攻撃の申請に「承認」のスタンプを押すだけの追認機関だと指摘されています。08年には米国諜報活動監視法(FISA)が改定され、合法か違法かを問わず、大統領が承認した監視活動なら裁判そのものを棄却できるようになりました。カナダも同様の仕組みをとっています。
そもそも日本の「監理委員会」は総理大臣が任命するため「独立機関」とは呼べません。政府機関です。委員も裁判官ですらなく、サーバーへの侵入にあたって裁判所の令状も不要です。米国やカナダ以上に監督能力は乏しいでしょう。
(略)
またカナダでは「反中国」感情が非常に高まっています。要因の一つに、諜報機関が大手メディアに「反中」世論を形成する情報を「リーク」していることがあります。安全保障を名目に疑心暗鬼の世界を生み出しています。
米国の国家情報戦略は、中国の急速な技術の進歩が米国にとって最重要課題の一つだとして、国際秩序の弱体化と軍事・経済面での中国の台頭により状況が変化したこと、サイバー空間における脅威が高まったことなどを指摘している。(AFPnews 2019年1月23日)
具体的にはバイデン政権の米国による対中包囲網の形成により、日本は米国、オーストラリアにインドを加えた4カ国で「Quad(クアッド)」という軍事同盟を結んだ。さらに日本はあくなき日米同盟の深化・強化のために2022年に安保三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)を確定した。
そこでは軍事費を27年までに2倍化=GDP比2%・年11兆の軍事費を増大させる方針があり、個別には「宇宙・サイバー・電磁波の領域および陸・海・空の領域における能力を有機的に融合し、その相乗効果により、自衛隊の全体の能力を増幅させる領域横断作戦能力に加え、侵攻部隊に対し、その脅威圏の外から対処するスタンド・オフ防衛能力等に重層的に対処する」と謳われている。
情勢の変化により、日本の国民が軍事費や防衛力増強を容認しているのは明白だが、それは結果として日本の財政や住民の生活が破滅的になる影響がでるだろうし不満も出てくる。その危機的状況に対応するものとして秘密保護法、共謀罪があり、そして盗聴法や「能動的サイバー防御法案」を整備し、戦争準備を拡大するだろう。通信の自由を犯す憲法違反の法案に反対しよう!
(編集部)