安保法制10年! 違憲訴訟の今 許すな際限なき軍事国家化

衆議院第一議員会館大会議室でのシンポジウムの模様(ラサール石井さんのXより)

衆議院第一衆議院第一議員会館大会議室でのシンポジウムの模様(ラサール石井さんのXより)

10月7日(火)16時30分より衆議院第一議員会館大会議室で「安保3文書が実相化した安保法制の違憲性と権利侵害」というシンポジウムがおこなわれた。会場には130名、YouTube視聴は約200名が参加した。主催は安保法制違憲訴訟全国ネットワーク。

主催者として伊藤真弁護士のあいさつがあり、戦後80年、安保法制成立10年となり、集団的自衛権の行使を可能にしてしまったことが許せないと2016年4月26日、福島いわきでの提訴を皮切りに、違憲判断を求めて全国22の裁判所で25の訴訟を提起した。違憲判断は出ていないが、合憲ともされていない。立憲主義を追及しそれで結集できた。しかし、戦争をできる国として進行してしまった。今こそ軍事化に歯止めを、と訴えた。以下、ごく簡単に報告とシンポジウムの紹介をおこなう。

伊藤真さんのあいさつ(youtubeより)

伊藤真さんのあいさつ(youtubeより)


控訴審報告

愛知訴訟(中谷雄二弁護士)は「具体的危険・権利侵害性なし」で原審敗訴。現在控訴審で幅広い専門家意見・証拠の積み上げによる違憲性立証計画。戦争準備の実態、個々人の権利侵害明確化、憲法判断の必要性(最高裁判例に即して)を学者証人で補強し違憲立法審査権を正面から迫り、憲法判断入りを強く要求する。

女の会訴訟・東京高裁(山本志都弁護士)は原告全員女性で、2016年8月15日に提訴。2022年3月25日の地裁判決(権利・法的利益侵害を否認、違法性判断回避)で、東京高裁へ控訴後、準備書面12まで提出済(2025年9月末)。

そこでは安保3文書による安保法制の「実装化」の事実立証(限定的説明の虚偽化、武力行使のフルスペック化)する。具体的には教育・社会保障・福祉の切り捨てと防衛費の聖域化、力による支配を前提化した外交(基地攻撃能力・抑止志向)、社会の軍事化(日常生活への自衛隊の浸透、住民への協力強制、秘密保持)、住民自治の破壊(自治体権限の空洞化、地方自治法改悪)が起きている。

11月12日13時30分、東京高等裁判所大法廷101号室で証拠調べが行われる証人4名で厳しく迫っていきたい。

シンポジウム・安保3文書が実相化した安保法制の違憲性と権利侵害

高良さち(衆議院議員・沖縄大学元教授)
沖縄・南西諸島(与那国・宮古・石垣)が軍事化されている。全島避難計画では武力攻撃予測事態で集落単位説明済、リュック1つで島外避難、生活・財産・生業の喪失を強要される。宮古では集落内駐屯地に迎撃ミサイル配備、弾薬庫整備され、農道沿いで銃を携帯した自衛官が常時警備を行っており、農業に継続的な影響を与えている。農道沿いで銃を携帯した自衛官が常時警備を行っており、農業に継続的な影響を与えている。石垣でも住宅や民間施設に大型弾薬庫設置され、軍事が生活よりも優先される。

岡田尚(弁護士・神奈川訴訟)
安保法制の実相だが、国の安全は軍事力とし、敵基地攻撃能力だとか先制攻撃を認め、米軍の指揮下に自衛隊を置く、日米軍事一体化となる。

自衛隊内の構造的暴力・人権侵害がある。海自護衛艦「立風」など閉鎖空間での継続的暴力(肉体・精神・経済的搾取)。そして、防衛大学校いじめ事件、メンタルヘルスの継続的影響、判決に見られる「弱者排除」論理があり、個人の資質でなく軍隊構造に起因する暴力性があるため内部対策のみでは限界、外部からの連絡・支援の不可欠だ。

平和主義とジェンダーの交差を考える。9条と24条(男女平等)を架橋する視点が必要。自衛官の現職による訴訟提起(空自情報本部セクハラ)など新たな動きの支援が求められる。

池田幸代(駒ヶ根市会議員)
福島みずほ秘書として活動。現在市議会議員2期目。地域の戦争の記憶や調査をしている。子どもや女性たちの社会的な学業、生活・労働支援、そして社会・生活の保障を求めていく。「日本人ファースト」という言葉がナショナリズム・選民思想を刺激して、今だけ金だけ自分だけの気分にとてもフィットする思考―これは差別が金になるということ。社会構造が理解できていないせいでは…。そして排外主義への対抗、反差別などの自治体議員ネットワークを拡げたい。

飯島滋明(名古屋学院大学教授)
自衛隊は憲法違反だが日本防衛のため専守防衛組織だと。しかし、安保法制で世界へ行けるようになる。日本と関係がある国が存立危機事態だと言えば武力行使する。ロシアもイスラエルも自衛権行使となる。で自衛権というのは、実は侵略戦争の隠れ蓑になる。

日本の軍事費急増(43兆円計画)は米国の戦争のためのもの。多くの人々が生活困窮の貧困・孤立化が進行している、特に子どもや若者を支援すべき。人間の安全保障は日本国憲法前文であり、「恐怖と欠乏からの自由」こそ平和の権利の中核。世界はそれを求めている。

10.7「軍事化に歯止めを」緊急シンポジウム 宣言

私たちは安保3文書によって実相化された安保法制の本質を改めて問い、新たなステージに立った軍事化の実態を明らかにし、改めてこの法制の違憲性・権利侵害性を問うためにこのシンポジウムに参加しました。

10年前には限定的にしか集団的自衛権行使しないとされたこの法制は、立法事実自体が問われながら強行採決されると、実際には日本が米国の盾になって、米軍の指揮のもとにフルスペックで自衛隊が配備出動する実相化が進められました。本日のシンポジウムでは、情報開示も憲法論議もシビリアンコントロールもなく、沖縄から全国に戦場化のリスクを背負わされていること、敵基地攻撃能力配備や総力戦による全面的軍事化、軍事優先の財政や「力を背景とした外交」とともに、貧困と暴力、交差する差別の強化が、私たちの日常の安心安全人権を危機に立たせていることが明らかになりました。究極の人権侵害である戦争を検証することもなく、安全のための住民自治も「専権事項」の名のもとに蹂躙されてきた事実を共有しました。

「安全保障」とは誰のためのものか、改めて問われています。日本国憲法は、悲惨極まりない戦争の教訓の中から、「全世界の国民が等しく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利」を確認しましたが、安全保障とは人間のためのものであって、貧困と差別、暴力を根絶するソーシャルセキュリティを最優先事項とするよう定めています。
そして、人間の安全保障とジェンダー主流化は、国際社会の普遍的原理、不可欠の原則となっています。

戦争は暴力と差別の究極の形、政治の延長にあるものです。憲法は、私たちに戦争に動員され、加害に加担させられた痛みを教訓として人権と正義を培う努力と責任を求めています。

このシンポジウムに参加して、私たちはそのような使命と責任を負う者として、経済、社会、政治のあらゆる場面に構造化された暴力と差別を根絶する努力なくして戦争は止められないこと、このことを現実の問題として痛感させられる段階にあることを共有することができました。

私たちは、これらの普遍的原理を否定する流れを断じて許しません。社会のあらゆる場面に軍事化を進めて「強い日本を取り戻す」(ジャパンイズバック)とする政治、ワークライフバランスを捨てて「強い日本」にするために「働く」よう求め、あらゆる差別と排除を増長させる言論は、平和とジェンダー平等を否定するものです。私たちは断固として「ノー」を表明します。そして、本日明らかになった現実の人権侵害を「単なる主観的懸念」であって、国の責任を追及するに値しないなどとする国の開き直りは決して許されないものであることを確認し、「戦争体制の構築」に対する国の責任追求を続けることをここに宣言します。

2025年10月7日緊急シンポジウム
「違憲訴訟最前線から軍事化に歯止めを、明らかになった安保法制の実相」参加者一同。

以上、拍手で確認された。

(文責編集部)