共同で絵を描くことで「原爆の体験」を次世代へと継承する

「戦後80年《明日の神話》 次世代につなぐ 原爆×芸術」展ポスター
川崎市岡本太郎美術館で「戦後80年《明日の神話》 次世代につなぐ 原爆×芸術」展が7月19日(土)から10月19日(日) まで開催された。
見どころとしては島市立基町高等学校・創造表現コースの高校生たちが描いた「次世代と描く原爆の絵」(広島平和記念資料館蔵)と現代の作家による出品。そして岡本太郎の核を主題とした『明日の神話』『死の灰』の展示だろうか。
広島の原爆の絵については何度か鑑賞しているが、かなりの数があるようだ。広島平和資料館では1970年代から、何度か募集して、被爆者自身の描いた「原爆の絵」(「市民が描いた原爆の絵」)が4205点あるという。
今回展示されているのは基町高校の生徒と被爆体験証言者との共同制作による「原爆の絵」で、広島市の立基町高等学校普通科創造表現コースの高校生たちが、被爆体験者に話を聞いて何度も打ち合わせなが制作されたものだ。被爆者が高齢化するなか、被爆の実相を絵画として後世に残すこと、そして、絵の制作を通して、高校生が被爆者の思いを受け継ぎ、平和の尊さについて考えることを目的としている。
被爆者自身の描いた「原爆の絵」についていえば記憶でしかないのだが、絵の上手い下手はあるにしても、なんとかして伝えたいという意志が強く感じる。だから文字、文章が書き込まれている例がいくつかある。その意味では、今回展示されている油絵は絵心のある高校生が描いているぶん絵としてはまとまりがある。また油絵で描くことは記録としての絵画としては重厚で、リアルな情景を再現するのに適っている。
また、被爆者自身が描くよりも、いったん本人の記憶を確認して外部に出すことにより、より具体的になる可能性がある。その意味で「次世代」という高校生に絵筆の手を委ねて想像力を増幅させるほうが、当時の情景が明確になるのかもしれない。展示されている絵は、さまざまなシーンのものだが、いずれも力作ぞろいであり、原爆直後のありさまを伝えている。なお『次世代と描く原爆の絵』プロジェクトについては『平和のバトン: 広島の高校生たちが描いた8月6日の記憶』弓狩匡純 (くもん出版 2019年)がくわしい。
いっぽう、現代の美術家の作品は、10名の作家が直接的な原爆や核というよりも、それも含めた戦争や原発など現代の事象を含めて過去と現代を問うものとなっている。
(本田一美)

共同制作による「原爆の絵」の展示コーナー

在日朝鮮人でもある李晶玉のエノラ・ゲイの操縦席を描いた作品

岡本太郎《明日の神話》1968年、川崎市岡本太郎美術館蔵
